第十八話
月島は自分が倒れたのだという認識がなかった。
額がひんやりして気持ちがいいと思いながら目を覚ますと、目の
前には楠木の顔が近くにあったのだった。
「ンッ………」
「目が覚めましたか?」
「あれ………楠木くん?」
「先輩、やっと気づきましたか…自分が倒れていたのわかります
か?」
「倒れて?」
「そうです、ここがどこかわかります?」
「ここって………えっ……あっ……!」
ガバっと起き上がるとガウンを着た中は全裸のままだった。
さっきシャワーを浴びて少し視界がフラフラしていた気がしたが、
気のせいではなかったらしい。
そのまま床に倒れ込んでいたらしい。
「ごめん……あのっ……えーっと…」
「今日はこのまま休んでいきましょう」
「でもっ……」
「今の先輩に何ができるんですか?」
「それは……いいよ、何をしても……大丈夫だから……」
「病人に手を出す訳ないでしょ?俺の事どんな風に思ってたんで
すか?まぁ〜これくらいはいいですかね…」
そういうと唇にキスを落とした。
長い長い口付け。
名残惜しむように何度も角度を変えては唇を合わせた。
そして最後に額にちゅっと音を立てて触れた。
「今日はこれで、一眠りしたら帰りますよ」
「ごめん……」
「謝ってほしくなんかないですよ。まったく…ちゃんと自己管理
くらいちゃんとしてください」
「はい……」
「今度は途中でやめたりしないので、しっかり抱かれる覚悟をし
ておいてくださいね」
布団の中でぎゅっと抱きしめられると胸が痛くなった。
もっとキスしたかった。
もっと強く抱きしめられたい。
楠木くんだったら何をされても平気なのに…と。
起きてから家まで送って貰うとなんだか情けなくなってきた。
自分から誘っておいて、結局何もできなかった。
最近しっかり眠れていなかったせいで熱を出したなんて知られた
くなかったのに…。
こんな自分をまだ見離さないでいてくれるのだろうか?
「あのさっ……えっと……」
「今日は早く寝ててください。また倒れたら許しませんよ?」
「…はい」
結局何も聞けなかった。
まだ何も話せていない。
だから……。
「元気になったら話聞いてあげますから」
「うん…」
「大人しくしててください。明日も熱があるなら休んでくださいね」
こんなに世話を焼かれるなんて。
これではどっちが年上か分からないではないか!
ちょっと気落ちすると家に入って行った。
外で手を振って見送ってくれるのが久しぶりで懐かしく感じたのだ
った。




