楠木side
楠木side
楠木は知っている。
月島が何もされて居ない事に。
一条をけしかけたのも、その仲間に色々と吹き込んだもの全部
楠木の仕業だったからだ。
別れたと言っても、こっぴどく振られた程度でまた寄りを戻す
危険性を孕んでいた。
だからこそ、完全に嫌わせる必要があったのだ。
だから、一人にさせて襲わせたし、楠木との楽しい思い出を作
らせて、上書きできないように悪い思い出を一条に作らせたの
だった。
上手くいって一条を恐怖の対象にする事に成功した。
立ち去る一条を見たらつい笑みが溢れてしまった。
多分見られただろうが、それでももう構わなかった。
予想外のだったのは泣いて縋った相手が自分ではなく、水戸だ
った事だ。
危機的状況で助けたのも、楠木だったし抱きしめてあげて、それ
に応えてくれるはずだった。
が、実際は違っていた。
泣いて縋ったのは水戸先輩で、幼馴染みと言う立場を使ってその
日はそばにいたのだ。
そこにはいくらお試し彼氏でも、入る余地がなかった。
その為、あえて距離を置いたのだ。
毎日のように通っていた先輩の教室にも行かなくなった。
たまに見かけると話しかけたそうな顔をしていたが、こっちから
無視を通した。
そのおかげか、自分から会いに来てくれた。
でも、まだ焦らす。
「話なら今ここでもいいですか?」
「ここでは……ちょっと………」
わかっている。
先輩がここまで来ると言う事は結構勇気がいったと思う。
きっと、人のせいにして別れ話をするつもりだろうけど、そうは
させない。
放課後ファミレスにと約束をしたが、来た途端に出ていく。
そしてラブホテルの前に足を向けたのだった。
ここで覚悟を問う。
中途半端な覚悟なら、ここで壊してしまおう。
もし手に入らないようなら、完全に心を壊してしまっても構わない。
別れを告げられるくらいなら、犯して何もわからないくらいに大きな
傷を残してしまおう。
これから誰とも付き合えないように。
抱かれる事に恐怖を抱いてしまうくらいに乱暴にしてもいい。
いっそ痛い思いをさせて消えない傷を残してしまうものいい。
そう思っていたのに…月島は覚悟したように楠木を受け入れたのだった。
呆気ないほど、抵抗もしないし、拒みもしない。
「貴方と言う人は………、シャワー浴びて来てください。俺の言っている
意味わかりますよね?」
「う…うん」
素直に風呂場へと向かっていった。
そのうちにゴムを買いに部屋の外へ出たのだった。
初めて触れた月島は女性のように柔らかい訳でもないし、ふくよかな胸が
ある訳でもない。
可愛くはあるけど、結局は男だった。
自分と同じものがついているわけだし、あえてそれを取って欲しいとも思
わない。
人を顔でしか判断しない連中とが違う。
誰にでも優しくできる人だからこそ好きになって探していたのだ。
こんなところで逃したりはしない。
唇は男女変わらなかった。
柔らかくて触れていてもっと舐めて吸いたくなるほどに愛おしい。
「本当に初めてを貰うんだ………先輩に痛くないようにしないとな」
部屋に戻るとご機嫌であったはずが一瞬で騒然となった。
「先輩!」
床に倒れたまま動かないのをすぐに駆け寄り抱き起こしたのだった。




