第十五話
帰りにファミレスに来てみるとすでに奥の席に楠木が待っていた
のだった。
「ごめん、待たせたよね……」
「話ってなんですか?」
「あぁ……それなんだけど……この前の事なんだけど…」
「なるほど…それで?」
「えっと……これまで楠木くんと一緒にいて楽しかったんだ。僕
みたいな人間でも恋愛できるんだって思えてすっごく嬉しかっ
た……だから………」
「自分の気持ちだけ言うんですね…先輩って俺の事名前覚えてく
れてます?一応お試しでも彼氏なんですけど?」
「覚えてるよ!だって……」
「なら、呼んでみてください」
ぶっきらぼうに言うと視線が痛い。
なぜかすごく機嫌が悪い気がする。
「祐介くんでしょ?」
「なんで呼んでくれないんですか?俺の事捨てるんですか?」
「そんな事は………でも……」
「もういいです。」
立ち上がるとスタスタと歩いて会計の方へと向かった。
後を追うようについていくと会計を済ませた楠木はそのまま出て
行ってしまった。
「ちょっと待って……話だけでも聞いて……」
「それって別れ話ですか?」
「えっ……それは………」
「やっぱり…本当に貴方と言う人は……話がしたいんですよね?
だったらもってこいの場所がありますよ。」
「それって……」
そう言って向かった先はラブホテルの前だった。
流石に制服では入れない場所だった。
「ちょっと待ってよ……それは……」
「一条先輩にはよくて俺には無理ですか?それとも、あの水戸先輩
とは当たり前にできる仲なんですか?」
「たかちゃんはそんな事しないよっ!そんな関係じゃなし…一条先
輩とは……してない……」
そんな事を言われるなんて思ってもいなかったからこそ、悲しくな
ってきた。
そんな風に見られたくなかった。
「そうだよね……楠木くんがどう思おうが仕方ないよね………」
「だったら証明してくださいよ。」
「……」
証明といっても何も思いつかない。
ただ、そう思われていた事が悲しかった。
「すぐに泣くそうになるんですね?俺が行こうって言ったら?拒み
ますか?」
「………」
「やっぱりそうですよね……やめましょ。」
呆れたような、諦めたようなため息を漏らすと、踵を返して帰ろうと
した。
ここで引き下がったら完全に嫌われる。
そう思ったら身体が動いていた。
楠木の腕を掴むとそのまま中に入ったのだった。
入った事などないからどうしていいかわからなかったが、パネルに部
屋と時間を選択するボタンがあった。
適当に押すと鍵が出て来た。
それを持ってエレベーターに乗り込む。
終始無言のまま部屋に着くとドアの鍵を閉めたのだった。




