第十四話
楠木の電話番号を水戸に教えてから数日。
学校で楠木を見なくなった。
正確には2年の教室に来なくなったのだった。
あの日の後にLINEに大事な話があると書いて、明日一緒に帰る時に
ちょっと時間あるかなと軽い気持ちでメッセージを入れた。
その日から全く顔を見なくなったのだった。
「……うーん」
「どうしたんだ?」
「なんかさ〜、僕避けられてる気がするんだよね…」
「楠木からか?」
「うん……何か話聞いてる?」
「いや?何も聞いてないけど…何かやったのか?」
「何も…してないと思う……」
心配なのか、あれだけべったり来ていただけにこれほど全く会いに
来ないと言うのも不思議だった。
「学校来てないのか?」
「いや…来てはいるみたいだけど…」
「会いに来ないと?」
「うん…」
「だったら行けばいいじゃん。」
「え……」
「えっじゃねーよ、気になるんだろ?だったら蛍が行けばいいんじ
ゃねーの?」
確かに名案ではある。
が、女子に囲まれている楠木に会いに行くのは結構勇気がいる事だ
ったのだった。
でも、このままでは埒があかない。
勇気を出して昼放課に1年の教室へと行ってみる事にしたのだった。
こっそり覗くと女子と話す楠木を見つけた。
どうやって話かけようか…ここにいたら完全に不審者ではないのか?
迷っているとち丁度横を通りかかった女子が話かけてくれたのだっ
た。
「誰か探してます?」
「えっ……あ、えーっと、楠木くんにちょっと……」
「楠木くん?ちょっと待ってて呼んできてあげるわ」
そう言うと大きな声で楠木を呼んでくれた。
その声にこちらを向くとあっと言葉が聞こえた気がした。
多分避けていたのは事実だろうから、きっと会いたくないのだろう
けどこっちはあの日以来心配していた。
きっと嫌われてしまったであろうから…
「楠木くーん、呼んでるよ〜!」
「誰?…あっ………先輩」
気まずそうな顔でこちらに来ると何か言いたげな顔だった。
「ごめん…、ちょっと話したいんだけどいいかな?」
「ここでもいいですか?」
「あ…いや、ここではちょっと……」
「そうですか…なら、帰りでもいいですか?」
「う…うん、いい……」
「なら、学校近くのファミレスで待ち合わせで」
「うん…ごめんね……」
ただそれしか言えなかった。
なぜか申し訳ない気がしてそれ以上何も言えなかったのだった。
教室に帰ってからも何も言えなかった事が悔やまれた。
「聞けたのか?」
「う…うんん、帰りにって……」
「そっか…俺行った方がいいか?」
「大丈夫。一人で平気…」
「そっか。何かあったら連絡しろよ」
「うん、ありがと」
いつものように笑えなかった。
やっぱり後悔しているのだろうか、自分でも自分の気持ちに素直に
なれないのだった。




