第十一話
こんな事、相談できなかった。
だってさっきまであんなに楽しかったのに…
いきなり地獄に落とされたような絶望が支配していた。
楠木には悪いことをしたと思う。
やっぱり一緒に行けばよかった。
こんな事になるなら、キスしたいと言っておけばよかった。
無理矢理唇に触れた感触は思っていたのとは全く違った。
気持ち悪い……
昔はもっと、キスは神聖なもので、愛を交わした者同士がするもの
だと思っていた。
きっと幸せな味がするって幻想を描いていたのだった。
でも、現実は違った。
タバコの味がして、吐き気がしたのだった。
逃れようと顔を引っ掻くと腹に痛みが走った。
痛みに蹲ると怖くて震えが止まらなかった。
何かを話しているのか今なら逃げられると思うとドアの方へとこっそ
りと移動した。
が、すぐに捕まると数人で押さえつけられた。
スマホの画面には男同士にセックスシーンが映し出されている。
現実感のないその画面を見せられると寒気が走ったのだった。
「今からお楽しみの時間だぜ?」
「自分で脱ぐか?それとも脱がせて欲しいか?選べよ」
「……」
「黙ってちゃわかんねーだろ?」
「い……いやっ………」
「嫌じゃねーよ!お前から好きだって言ってたのは嘘か?」
「僕のこと…なんとも思ってないって言ったじゃん……」
「あぁ、だが…気が変わったんだよ。穴ならなんでもいいんだよ。」
怖くて、なんとか逃げようと試みるも全くびくともしなかった。
「こいつ、逃げようとしてんじゃねーよ」
「脱がせばいいんじゃね?」
「ってか、俺、男脱がしても何の得もなくね?」
「色気もねーしな…」
「確かにな……」
一条が前に出るといきなりシャツを無理矢理掴むと、力一杯破いた。
腕も足もしっかり掴まれていて、何も出来ずにされるがままになって
いると廊下が騒がしくなって来ていた。
「なんだ?」
「騒がしくないか?ここには誰も来ねーんだよな?」
「あぁ、そのはずだが……」
するといきなりドアがバンッと大きな音と共に開いたのだった。
「月島先輩!先生〜こっちです!!」
大声で叫ぶと、一条達は一目散に窓から飛び出していた。
一階なので即座に出ていけたのだろう。
その場に残された月島は震える身体を抱きしめ、泣き続けたのだった。
そっと寄り添うように楠木がきたが、駄々をこねる子供のように泣き
じゃくってしまい、その場を離れることはできそうになかった。




