第八話
廊下に出ると、日誌を片手に職員室へと向かった。
後から水戸がついて来ていた。
「別に来なくても大丈夫なのに…」
「うん、分かってる。でも、俺も近くの図書室行きたし、一緒に
行こうと思って」
「そっか…面白いのあったらまた、教えてね」
「うん、蛍でも読めそうなのを探しておくよ」
「えぇ〜ひどーい!」
笑いながら歩いていくと、急に声が後ろからした。
その声は聞き慣れたもので、水戸は咄嗟に月島を後ろに隠した。
「ふ〜ん、新しい男か?」
いきなりの声に月島が固まったいるうちに前に出た水戸によって
隠されたのだった。
声の主は一条響。
月島が初めて好きになった男だった。今は、もうなんとも思わな
かったのに、どうして今頃…。
「俺が好きなんだろ?なんで昼来なかったんだ?」
「……」
「いく必要ないだろ?蛍の事振っといて今更何を言ってるんです
か?先輩」
「え〜別に振ってないよ〜。今暇だから〜相手してやるって言っ
てんの〜。ほら、こいよ」
「蛍、聞かなくていい」
「…」
なんでだろう。あんなに好きだったのに、今はただ怖かった。
「おい、だんまりか?」
「先輩、下級生を脅すのやめてもらえますか?」
「お前もうざいんだけど?黙れよ」
「蛍、行こう!」
水戸に連れられその場を離れたのだった。
後ろから大きな音が聞こえて来たが振り返れなかった。
「大丈夫か?」
「え…あぁ……ごめん……」
「いいよ。落ち着くまで図書室にいるか?」
「うん…そうしよっかな…」
肩を抱き寄せると静かな図書室へと入っていく。まさかあんな強引
に来るとは思わなかった。
あの男は悪い噂しかないような男なのだ。
それを知っているだけに、月島が惚れたと言った時、心配になった。
今は後輩と上手くやっているよyだが、こっちも少し心配ではある
のだった。
月島へと粘着度がおかしいくらいだったからだ。
まるで会う前から知っていて、機会を伺っていたような気がするの
だ。
ちょうど振られて落ち込んでいる時に漬け込むようにするりと心の
隙間に入り込んできた。
どう見ても、こっちもやばい気がする。
だが、今の月島には必要な相手でもあっただけに、あまり邪険にも
できないのだった。
「これからは一人で行くなよ?」
「でも…」
「いいから、昼間も俺の側にいろ。帰りは楠木から離れるな!」
「う…うん…」
水戸の気迫に押されるように返事をしてしまったのだった。
帰りに楠木が来ると水戸と何か話しているのを見かけた。
月島が来るとすぐに別れて、水戸は部活に言ってしまった。
「何か話してたの?」
「いえ、先輩のことを色々と。行きましょ蛍先輩♪」
なんだか嬉しそうな楠木に月島は小首を傾げたのだった。
家まで送ってもらうと楠木はなかなか帰らなかった。
「もう、大丈夫だよ?」
「はい、家に入るまで見張っておきます。」
「もう、そんな心配いらないってば〜」
「ふふっ、やっぱり先輩は可愛いですね〜、今度家に招待してくだ
さいね!その時はもっと色々しましょ!」
「意地悪〜」
そう言いながらも家に入ると玄関の覗き窓を覗き込んだ。
すると、笑顔で手を振っていたが、すぐに真顔になると帰って行っ
たのだった。




