第32話 『不愛魔法譚』
いるなら、ここだと思った。
「——いい加減、あたしの親友を返してもらうよ。永遠を知りたい氷女さん」
シュノレース王国を駆け抜け、大きく弾む胸が煩わしくて殴りつつ走り、テレブール王国に着くと同時に迷わず真っすぐ城に直行。
その根拠はミーゼだ。ミーゼを連れている以上、テレブール王と王妃に会いに行って何かする気だろうと考えたが、案の定エマーゼもミーゼも王と王妃が一番いるであろう玉座の間にいた。
気がかりなのは、あれ程いた動く死体達が一人もいないのと、荒れ果てたテレブール王国内にいるはずのユレスとハルマレア、それと——父の生死だが、今優先すべきは目の前の状況である。
扉を一気に開けるために発現していた緑風魔法を止めながら玉座の間に踏み入って行く。
見えるのは、下半身が氷漬けになっているミーゼと、意外そうな表情を浮かべながら自分の長い青髪を片手で払うエマーゼと、驚愕しているであろうレラフール。そして・・・・・・赤黒く染まった床に倒れ伏している、メシュクハーマ。
状況は理解出来た、とラゥルはこの状況を間違いなく作ったエマーゼを睨む。その視線を受け止めたエマーゼは、
「驚いたわ・・・・・・まさかあなたが来るなんて想像すらしなかったもの。というか、死んでいると思っていたわ。よく切り抜けられたわね?」
「あたしの力じゃない。ユレスのおかげで助かったんだよ」
「(この子は確か・・・・・・ドハドルの娘・・・・・・)」
突然現れたラゥルに目を白黒させながらも、レラフールは自分の記憶を掘り起こしラゥルを特定する。たまに見かける程度だが、いつもミーゼと遊んでいるのだ。忘れる事はない。
そう思い出しているレラフールを横目で見つつ、エマーゼは首を傾げ、
「ユレス? あのもう一人の白髪の坊やの事かしら。シェルストとどこか似てる・・・・・・まぁいいわ。それで? なんでここに来たの?」
「聞こえなかったの? さっき言ったでしょ、いい加減あたしの親友を返してもらうってさ」
「・・・・・・んー、私の記憶違いでなければあなた、私の前で二度も倒れたわよねぇ。二度もよ。力の差がハッキリと理解出来たと思うのだけれど?」
「たったの二度、でしょ。足りないね」
「・・・・・・は?」
「今のあたしには、笑っちゃう程足りないよ。そんな敗北の数は」
確かに二度、ミーゼを守れなかった。力の差も理解はした。
絶望に、苛まれた。
「あんたは強いよ。それになんでも出来そうに見えて実は出来ない我慢強い努力家だってのも分かる。言いたくないけど、我慢強さはミーゼにそっくりだね」
「・・・・・・・・・・」
「ラゥル・・・・・・」
そして、絶望の中で——魔法の在り方を思い出せた。
ミーゼとの絆を再確認出来たのだ。
「氷女、あんたの事は嫌いだけど、感謝もしてるんだ」
「・・・・・・感謝?」
「うん。あんたのおかげであたしの魔法は——はちゃめちゃにっ」
一度言葉を切ったラゥルは、誰もが惚れ惚れするような笑顔を咲かせた直後に、こう続けたのだった。
「成長出来た!!! だからもう・・・・・・負けないよ。これがあたしからの最後の宣戦布告で、あんたとの最後の勝負。どう? この勝負で決めようよ。どっちが魔法を愛しているか、どっちが強いのかを」
「しつこい子ね・・・・・・本当に、しつこい」
相手にする必要などない、とエマーゼはラゥルに背を向きかけるが、
「(魔法を愛する・・・・・・所詮魔法は道具でしょう。使い方次第でいかようにも変化する流動な現象。使えるか使えないかだわ。愛するとか馬鹿らしい事を)」
愛してるか愛してないかなど心底どうでもいいが、しかし。
あれほど絶望しきった小娘がこんな自信満々に、しかも自分に負けないと嘯いたのだ。
この短い期間でどれ程のモノになったのか、気にならないと言えば——それは嘘になる。
「(・・・・・・らしくないわね、私。メシュクハーマ様との戦いやミーゼを痛めつけた事で血が騒いでいるのかしら)」
それも、沸騰する程に。
「——いいわよ」
「ん。受けてくれる気になった?」
「ええ。もう一度だけ機会をあげるわ。ただし、あなたにとって本当に最後の機会って事を理解しなさい。なぜなら、この勝負で私は——あなたを必ず殺すから」
「殺す、ね。つまり全力で来てくれるってワケだ。嬉しいね」
「ラゥルッ!!」
空気が張りつめていくのを感じながらミーゼはラゥルの名を叫び、
「お願い・・・・・・死なないで・・・・・・!!」
「・・・・・・ねぇミーゼ」
たおやかに笑うままラゥルは口を開く。
不安げな顔だ。ここまでずっと、ミーゼの笑顔を見ていないままだ。
だからだろうか。こんな状況なのに、口にしてしまった。
「あたしと初めて会った時の事覚えてる? あたしさ、木の枝ごっこって言って木にへばりついてたよね。その時どう思った?」
「え・・・・・・?」
「どう、思った?」
「それは、変な子だなぁって・・・・・・」
「だよねー」
「でも」
「ん・・・・・・」
「すごく、可笑しかったな・・・・・・」
ミーゼの口元が緩むのをラゥルは、しっかりと見つめる。あの時は魔法出すだけでは暇だから意味なく木にへばりついていたのだが、やって良かったと今は心底思える。
まだぎこちないとはいえ、彼女の笑顔が見れたのだから——。
「見ててねミーゼ・・・・・・ミーゼとあたしを繋いでくれた魔法をこの氷女に全力で叩きこむから!!」
「——では、始めても?」
バサッ、と自分の長い青髪を片手で払いつつ言うエマーゼに、ラゥルは頷き、
「うん。やろっか」
瞬間、だった。
ブォッ!!!!!!!
パキキッ!!!!!!
と、氷柱が出現するのと風が荒れ狂ったのは完璧に、息を合わせたかのように——同時だった。
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「まずはお手並み拝見ね・・・・・・!」
ラゥルを穿とうと飛んでくる三つの氷柱。三つとも正確だ。このままでは串刺しの未来を待つことになるだろう。まさに有言実行。エマーゼは本気で、ラゥルを殺しに来ている。
無論、この程度で殺られるはずがない。
ブワッ!!! とラゥルを中心に風が荒れ狂い、正確に狙って来た氷柱三本はラゥルの横を通り過ぎ、後ろへと飛んでいった。
「この程度で今のあたしは測れないよー?」
「ふむ、そうみたいね。ならせっかくだし・・・・・・あの時の再現をしてあげましょうか!」
そう言った直後、エマーゼは集中するように顔をしかめ、両手を前に突き出したと同時——ピキピキピキピキピキピキピキピキピキ!!! と空気が凍り付く音が響き始める。
「————」
「覚えているかしら? 最初にあなたとミーゼに会った時のヤツよ」
エマーゼの頭上、そこには——空間を占める程の数の、手の平程の大きさの氷塊が空間に固定するように浮いているのだ。
当然覚えている。忘れろと言う方が無理な話だ。あれから自分とミーゼは離れ離れになってしまったのだから。
「さあ、どう出る?」
そう言うと同時、エマーゼは両手をさらに前へと突き出す。
直後。
ゴゥ!!!!!! と無数の氷の礫がラゥルに襲いかかり始めた・・・・・・!
「ラゥル!!!」
「・・・・・・確かにあの時は為す術がなかったけど、今のあたしは違うよ。・・・・・・ん!!!」
瞬間——ブォアッ!! とさらに強まる荒れ狂う風。その風の強さはラゥルの橙色の髪を激しく躍らせるだけではなく、エマーゼの長い青髪やミーゼの青髪、さらに距離があるレラフールの黒髪、死体と化したメシュクハーマの赤茶色の髪までも踊り狂わせている。
そして、ラゥルに降りかかる氷の礫は——、
「!!?」
「ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅあああああああああああああ!!!!!」
ラゥルの叫びに呼応するように、ヒュンヒュン!! と風切り音が重なり始め——スパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!!!!!! とラゥルに当たる前に氷塊の全てが切り刻まれ、煌びやかな霜がキラキラと光りながらラゥルに降りかかっていく・・・・・・。
「——綺麗」
呆然と、自分の今置かれている状況すら一瞬忘れて呟いたミーゼの言葉を聞いたエマーゼは、意識が戻ったようにハッとしつつ、
「(いけないわね・・・・・・見惚れてたわ・・・・・・)」
「どうかな? 期待には応えられたとあたしは思ってるんだけど」
「・・・・・・そうね。けれどまだまだ、期待通りとは言えないわねぇ。いえ、期待以上と思わせて欲しいところね」
「安心しなよ。あんたが思う以上の期待をすぐにあげるからさ」
「口だけでない事を祈るわ。さて次は・・・・・・」
チラリとエマーゼは、メシュクハーマの死体に視線を配る。
そして、
「そうねぇ。面白い事しましょうか」
「?」
口元を綻ばせつつエマーゼは両手をゆるりと上げていき、手の平を天井向きにする。
眉をひそめるラゥルの目の前で、それは起こった。
ピキィ!! と何度も聞いた空気の凍る音と共に、エマーゼの両手に——二振りの氷の剣が現れた。
発現した二振りの氷の剣を持ったエマーゼは一度剣を重ねるようにした後、ブンッ! と空気を切り裂くように振るう。その姿、行動はまさにメシュクハーマそのものだ。
「あんた・・・・・・」
「んふ。メシュクハーマ様に似てるでしょう? 私、彼女に憧れていたから一時期練習した時があったの。メシュクハーマ様とやり合った時はさすがに使わなかったけどね。剣の勝負では勝てる気しなかったもの」
「分かっていた事だけど、やっぱりあんたが殺したんだね。メシュクハーマ様を・・・・・・」
「勿論♪ 私の復讐相手の一人だったし。あとはレラフール様で終わりなのよ。あなたを殺して・・・・・・レラフール様で終わりなのよォ!!」
言うや否や、一気にラゥルへと肉薄してくるエマーゼ。遠距離の魔法戦は止めて近接戦に切り替えて来たか。
受けて立つ、とラゥルは魔力を高めていく。ここからが本番だ。
「ッ」
近づいてきたと同時に左の剣が袈裟切りにラゥルに迫っていく。しかし、遅い。あの死体達の方がまだ速かった。
後ろに下がり、かわしつつ緑風魔法を叩きこもうと右手を動かしていく。
そんな時だった。
「クス・・・・・・」
振り下ろした左の剣の刀身。その上側から、グンッ!! と切っ先が鋭い細い氷の棒が現れ、伸びて来たのだ。
「ッ!?」
ビクリ、と体を強張らせてしまう。急ぎ両腕を交差し自分の正面にかざすも、その一瞬の硬直が戦闘では致命的だ。
かわす余裕もなく、氷の棒はズブリとラゥルの左腕に刺さった——。
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——魔法は基本、魔力を使い〝無〟から〝有〟へと至り、発現する現象だ。
誰でも知っている、基本的な事である。
しかしもう一つ、基本すぎて誰も気づかない魔法の使い方があるのだ。
それは——〝有〟から〝有〟。発現した魔法からさらに魔法を発現させるやり方。
何もエマーゼは特別な事などしていない。基本すぎて誰も彼も知らないもう一つの魔法の使い方を実践しているだけ。
この基本がメシュクハーマの命を奪い、そして今度は——自分とは何の関係も無かった小娘の命も奪うのだ。
「痛・・・・・・!?」
ラゥルの左腕に突き刺さった氷の棒。これで準備完了だ。
体内に入れた青氷水魔法で作った氷から、さらに青氷水魔法を発現させる事で魔力が左の一振りからラゥルの体内へと流れ込み、メシュクハーマのようにあらゆる場所から氷柱を発現させる事が出来る。
王妃と同じく、二の舞を演じるがいい——!
「(ここまでね。さような、)」
その時だった。
最後にラゥルの死に顔を拝もうと、彼女の顔を見た時だ。
彼女は後ろを振り返って、次に自分の左腕に刺さっている氷の棒を凝視していたのだ。
振り返って何を見たのか、まずレラフールはないだろう。ではミーゼか? 否、今見る必要は無いはずだ。
だとしたら、見るのは後一人しかいない。
「(まさか気づ——)」
瞬間。
ラゥルの目が見開いた直後に、スパッ! と一迅の風が吹きつつ氷の棒が半分に切れる。そして慌てたラゥルが右手で一気に刺さったままの残りの氷の棒を引き抜いた——。
「(間違いない! この小娘、どうして!!?)」
そう思案する暇もなく。
スパァ!! とエマーゼの左頬に赤い線が走った。
「うっ!?」
緑風魔法だ。持っていた二振りの氷の剣を手放しながら左手で自分の左頬を抑えつつエマーゼは、たたらを踏みながら後退していく。ラゥルはそんなエマーゼに追い打ちを掛ける事なく佇んだままである。
「(なぜ気付けた・・・・・・? メシュクハーマ様でさえ気づかなかったのに・・・・・・)」
「〝有〟から〝有〟」
大きく動揺しながら思索に耽る中、ラゥルの声がエマーゼの耳朶を打った。
顔を上げるエマーゼに視線を張り付かせたまま、ラゥルは口を開いていく。
「あたし、目が良いんだよね。だからメシュクハーマ様の体の惨状が良く見えたよ。体中にある赤黒い穴。どう見たって何かが内側から突き破ったとしか思えない。そして魔法の性質。〝無〟から〝有〟ともう一つ、基本的なヤツがある」
「・・・・・・・・・・」
「基本的過ぎて誰も気づいていない性質・・・・・・〝有〟から〝有〟。あんな細い氷刺した所で大した事はない。でもあんたの顔は勝ち誇ったように見えた。そしてメシュクハーマ様の惨状。恐らく、メシュクハーマ様もさっきのあたしのようにあんたの青氷水魔法を体内に入れられて、内側から氷柱を発現させられた、てところじゃないの?」
「・・・・・・救いがない、馬鹿な小娘かと思っていたけれど」
認識を、改める。
左頬から左手を下ろしながら、エマーゼは見据える。
自分に害を為す〝敵〟を。
「どうやら洞察力はあるみたいね。それに魔法の強さ。認めてあげるわ、あなたは確かな成長を遂げている、てね」
「あたしも認めてあげるよ。あんたの魔法に対しての愛をね。ま、あたしの方が上だけど」
「は? 愛? 私が???」
何を言っているのだこの小娘は。
愛などあるはずがない。くだらない、と口の中でエマーゼは吐き捨てつつ、
「馬鹿言わないで頂戴。何が愛よ。魔法は所詮魔法。それ以上でもそれ以下でもない。感情なんて無いわよ」
「そうかな~? だってあたし、自分以外で〝有〟から〝有〟の性質に気付いた人初めて見たし。この性質に気付けるのは——魔法に対して本気で向き合ったから、愛してるから気付けるんだってあたしは思うよ」
「クスクス・・・・・・やっぱり馬鹿ね、あなたは」
嘲笑するように含み笑いしつつも、エマーゼの脳裏には——ここ数十年の記憶が掘り起こされていた。
どのように使えば効率的に魔法を使えるか。
どのように使えばもっと魔法が強くなるか。
どのように使えば魔法で相手の命を奪えるか。
「・・・・・・・・・・」
そっと、エマーゼは天井に顔を向ける。
愛など決してないが、この復讐の為にずっと——魔法と本気で向き合った数十年だった。
それだけは、確かな事だ。
「・・・・・・ふー・・・・・・」
長いため息をつく。ここ数十年の復讐の準備に鍛錬を思い出していたら自然と出てしまった。まるで年老いた老婆のようだ。
・・・・・・今更のように気付いたが。
思案した事も無かったが。
——この復讐が終わった後、自分はこれから何をしたいのだろうか。
復讐するとだけ考えて、終わった後の事はまったく考えていなかった。
「どうしたの? やる気なくなっちゃった?」
からかうようなラゥルの言葉でエマーゼは天井からラゥルの顔に視線を戻す。両手を腰に当てているラゥルは首を傾け、
「それとも負けを認める? あたしの方が魔法を愛していて、強いって事をさ。だとしたらあたしは、あんたに飲み込んで欲しい事がある」
「・・・・・・ん? まだ認めるつもりはさらさら無いけれど、気になるわねそれ。言ってみなさいよ、その飲み込んで欲しい事」
「それは——」
ラゥルは一度、後方にいるレラフール、ミーゼに視線を配ってから——。
この場にいる全員が信じられないと驚愕する言葉を、言ってのけたのだ。
「しっかりとこの王国で罪を償って、清算して、あたしと——友達になろうよ」
「「「————」」」
・・・・・・否。
驚愕どころではない。
ありえない、だ。
絶対にありえないだろう未来を、ラゥルはハッキリと口にした・・・・・・。
「な・・・・・・何を言っているのだラゥル・キャミニシ―!! 仮にエマーゼを捕えられても償う方法など死刑しかありえない!! もうそいつは生きていては生けない存在なんだぞ!!!!!」
当然噛みついたのはレラフールだ。彼の言はまさに正論中の正論。エマーゼはこのテレブール王国を崩壊させた主犯格の一人で、何人も殺し、王妃であるメシュクハーマも殺したのだ。
死刑以外彼女に償える方法は、ない。
「ラゥル・・・・・・なんでそんな事を・・・・・・」
「確かにさ!!」
大声でラゥルを糾弾するレラフールを遮るように、ラゥルも大声で前置きしてから、
「確かにさ、この人は最低最悪な人だよ。王様の立場としても人間としても許せないってのは分かる。あたしも嫌いだよ。ミーゼを連れてかれるし、酷い目に合わされたし」
「言うじゃない・・・・・・」
「ではなぜだ!? 嫌いなんだろう!? それでなぜ友達になりたいなどと!!?」
「——これはあたしの完全な妄想なんだけど、この人とは出会い方がほんの少し違ってれば、もっと早く出会っていれば」
そう言いつつ、ラゥルは能面のエマーゼと視線を合わせる。
そして、こう言った。
「ミーゼと同じぐらい親友になれたんじゃないか、て思うんだ。この人の魔法を見て、受けて恐ろしいとも震えたけど、感動もしたの。ここまで魔法を磨いた努力に。きっと長いだろうその魔法と向き合った時間に」
「分かったような事を言ってくれるわね? そういうの凄く不愉快なんだけれど。あなた、友達いないでしょ」
「うん。ミーゼと出会うまではずっと一人だったよ」
「ふん・・・・・・私と友達になりたいねぇ・・・・・・当然だけど、お断りよ。私もあなたの事嫌い、いえ、大嫌いだもの」
「嫌い合う仲、それでも成立する仲があると思わない?」
「はぁ!? 思うわけないでしょッ!? 頭おかしいわよあなた!!?」
「そっかなぁ? だっていい事よりも悪い事の方が記憶に強く残るものでしょ?」
「ホント、馬鹿ねあなた・・・・・・。それと嫌い合う仲が成立するという話に何の関係があるのよ・・・・・・」
「うーん・・・・・・確かにないかも?」
「あなたと話してると頭が痛くなるわね・・・・・・これ程阿呆な小娘だとは・・・・・・」
「ま、理屈なんて結局必要ないよね。要するにあたしはあんたの事嫌いだけど、気に入ったの。だから友達になりたい。それだけの話だよ」
「————」
——大嫌いと言いつつも話を続けるエマーゼ。嫌いと言いつつも楽し気に話すラゥル。
エマーゼは気付いていないのだろうか。二人の埒外にいるミーゼから見たら二人は・・・・・・友達にしか見えない事を。
「(重なる・・・・・・)」
重なって仕方がない。話している会話はまったく違うが、なぜか重なるのだ。
今のエマーゼは、孤独に木の枝ごっこなどと意味不明な遊びをしていたラゥルと。そして、今のラゥルは友達になって欲しいと言った自分と。
とても、重なる・・・・・・。
「——くだらない話はもう終わりよ。続けましょうか、最後の勝負を」
もう試す真似は止めだ、とエマーゼは殺意で迸る魔力を練りつつ、ラゥルを視線で刺す。
「——分かった。あんたを負かしてから、またくだらない話を再開する事にするよ」
絶対に勝って友達になる、とラゥルも溢れ出る魔力を練り、エマーゼの視線を真向から受け止める。
・・・・・・ありえない事を言っていると、勿論ラゥルは自覚している。
エマーゼは死ぬべき存在だとも分かっている。
だが、それでもだ。
それでも、エマーゼは死なせずに友達にしてやるのだ。
死に先はない。しかし生きていれば先はある。
ありえない未来だろうとあるはずだ。
そして自分にはそれを現実にするチカラがある、とラゥルは緑風魔法を発現させ、ゴゥッ!!! と周囲を暴風で吹き荒れさせる。
その根拠は勿論——、
「(だってあたしは、父さんもユレスも誰も彼も呆れさせるはちゃめちゃにワガママな女なんだからッ!!!)」
——必ず実現して見せる。
このワガママを・・・・・・!!




