面倒くさい奴ら
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「おっと、今日は定食は無いのか」
「ありゃ、残念だな」
「今日のメニューは俺の好物だったのに」
「また今度だな」
肩を落とすスナ―を軽く慰めつつ、ウォーカーは自分の料理を取って席に着いていた。
スナ―の好物である白身魚のフライは帝国内の物流が完全に復帰していない為、予定通りに届かないことが時折有った。
先の戦争の影響がまだこんな所に出ているのかと何か心の中で沈むものがあるウォーカーだった。
二人が談笑しながら食事を楽しんでいると、食堂の入り口からガヤガヤと集団が入ってきた。
顔を上げてそちらを見ると、貴族然とした長身の男とその取り巻き達だ。
制服の識別章には帝国のシンボルである花が三つ。
どうやら同じ三学年の学生らしい。
そして、黄色の目立つ髪色は明らかに面倒くさい奴だったと二人はため息をついた。
「あいつの顔を見ると飯がまずくなるな」
「全くだよ」
その学生は二人が座っている事に気付くと獲物を見つけたような――少なくともウォーカーとスナ―にはそう見える表情で近づいてくる。
「おやおや、これは愚民と劣等種の二人ではないですか、ごきげんよう」
「……」
「おい、聞こえてないのかこの下民ども」
「この蛆虫ども、ミアナッハ様がわざわざお声がけしているというのに大した度胸だな!」
周囲の取り巻きも追従するように二人へ罵声を浴びせていた。
相手にしないのが一番効果的だと分かっているからか、ウォーカーとスナ―の二人はチラッと観ることもせずもくもくと食事を続ける。
そして残念ながらこのミアナッハと呼ばれる男は余り我慢強いほうでは無かった。
場の空気が張り詰めていくのをその場の誰もがはっきりと肌で感じていた。
「……!」
「ミアナッハ様、このような寄生虫どもと関わるのはお時間の無駄ですわ。私たちはあちらでお食事にしましょう」
「ん。そ、そうだな、そうすることにしよう」
二人に無視されたミアナッハが青筋立ててまさに動きだそうとするのを取り巻きの中にいた令嬢がさらりとフォローする。
肩を怒らせてドスドス去っていくミアナッハ達の後ろ姿が少なくとも貴族と言うより軍人の均整なそれであったのは、仮にも軍学校であるというところだろう。
このまま一戦も有るかと内心構えていた二人は拍子抜けした気分でミアナッハ一同の背中を見送っていた。
「なんだあ、あいつら。珍しいな」
「確かにね。あの令嬢は誰か知ってる?」
「いや、知らないな。少なくとも俺の科にはいないと思うぞ」
「そうか、誰なんだろう」
先程ミアナッハと呼ばれた学生は帝国の中でも爵位が高い貴族の三男坊。
正式にはオフレスト・ミアナッハという。
黄色い髪の毛で声がやけに高いのが特徴だ。
ここの学生は基本的に貴族であるため、選民的な傾向が強い。
平民であるスナ―や劣等種の人間であるウォーカーに対して差別的な態度や発言のバーゲンセールだ。
…のはずなのだが、何故か二人に直接的に悪意をぶつけてくるものはほとんどいないのだった。
「にしても、あいつらも懲りないな。」
とはいえ、このように毎回絡んでくる貴族の坊ちゃん達もいるのだった。
食べ終わったウォーカーが口を開く。
「確かにね、貴族ごっこは宮廷でやれってんだよ」
「でもウォーカー大丈夫か? また劣等種とか言われてさ」
「別に。気にすることでも無いでしょ」
「それもそうだな」
食事を終えた二人が席を立ち動き出す。
すると周りから、敵意やら悪意やら好奇やらが入り混じった視線が不躾に向けられた。
だが、実際に手を出す学生は上級生でもいない。
学科主席と胸から勲章をぶら下げている奴らにちょっかいを掛けて良い事が起こるはずがないのは明白だろうから。
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