消えた枷は火の海へ
ウォーカーは恐怖に慄く叫び声、そして助けを懇願する涙を目の当たりにしても躊躇なく全員を殺したこと。そしてその事に何の罪悪感も感じていないことに自分でも驚いていた。
少なくとも、現代日本で普通に生きてきた歩にとって殺人なんてすることは無かったし、Gを殺すのすら嫌がる人だったのだから。
どうやら、あの時崩壊していく精神の中でその様なストッパーが無くなってしまったのだろう。
そうウォーカーは結論づけた。
しばらく歩いた三人、正確には少女をおぶっているキリクとウォーカーは遂に五つ目の村。
彼らの家がある村へとたどり着いた。
とは言っても大分火の手は強くなっていて、ゆっくり生存者を探す時間など微塵も無かったが。
キリクとウォーカーは比較的道が広く安全な街道上に召喚したBT-7を止めて置き、砲塔内部に先ほどの女の子を寝かせていた。
流石に女の子を抱えて燃え盛る炎の中を走れるほどの体力がキリクにある訳でも無く、わざわざ危険にさらす必要も無かったからだ。
既に村への入り口は燃えた木々の倒木によって狭められており、隙間を縫って走る二人。
何とか村の内部までたどり着くことに成功した。
「よし、手分けして探すぞ!」
「うん!」
息つく暇も無く、二人はすぐさま他に生き残っている人がいないか探し回った。
村の内部事態は火も落ち着いてきていて、むしろほとんどが黒焦げになった後だった。
「「……」」
二人は丁度もともと自分たちの家が有った目の前で立ち止まっていた。
「――焼けちまったなあ」
「――何も残ってないね」
火災の強さを物語っているように家の骨組みはグニャリと曲がり、壁は落ちてスカスカの状態になっていた。
他の村と同じように村人は全員殺されていた。
そしてその顔には村長さんや村で仲良くしていたみんなが含まれていた。
人間種とエルフ種の混血児として本来ならば蔑まれる存在であったウォーカー。
そんな彼を、暖かく受け入れていたみんなが。
隣の家のおちびちゃんも。
三軒先の今度三人目が生まれると言っていたおばさんも。
ちょっと寡黙だったけど、花の世話が大好きで時々皆に配っていたおじさんも。
この前結婚して幸せそうだったお姉さんも。
森での遊び方を教えてくれたお兄さんも。
生存者は誰一人として残っていなかった。
そして余りにもむごい殺され方だった。
自分たちが生まれ育ってきた場所。
家族やたくさんの思い出を何故こんな形で奪われねばならないのか。
いくらなんでも理不尽すぎる。
「……とにかく戻ろう。話はそれからだ」
「……うん」
涙も枯れ果て、ボロボロのキリクとウォーカー。
炎に照らされた二人の形相、それは正に鬼だった。
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