名前の由来
「ケガは?! 大丈夫!?」
直ぐに女の子の上体を起こすキリク。
血が出ているわけでもなく、特に外傷はない。
しっかりとした反応もある。
そう二人は判断し、ひとまず安心した。
「くうっ、うっ、ううう」
二人を見るなり、堪えようと口を横一杯に開き、目からは大粒の涙を流し始める女の子。
「わぁぁ、うわぁぁぁぁぁん!」
キリクにしがみ付き、泣きじゃくる女の子。
怖かったよう、寂しかったようと、ボロボロと泣いている。
「よしよし、もう大丈夫。 大丈夫だよ~」
小さい子をあやすようにぎゅっと抱きしめ頭を撫でるキリク。
落ち着かせている間、他に生存者がいないか遺体の山を突き崩すウォーカー。
だが残念なことに、結果としてこの村の生存者はこの小さな女の子だけだった。
他に人が来て安心したのか、はたまた泣きつかれたのか。
ウォーカーは静かになったなと振り返ると、その女の子はキリクの胸にしがみ付いたままスヤスヤと眠っていた
「どーする?キリクお兄ちゃん」
「まあ、取りあえず連れていくしかないだろうな」
よっ、と背中におぶり直すキリク。
これじゃ、振動と音の激しい戦車に乗るわけにはいかないなと、ウォーカーはC.V.33を消滅させた。
少しずつ炎が燃え広がり木々が糸が切れたように倒れていく森を進む三人。
キリクとウォーカーは先ほどの話の続きをしていた。
「実はな、ウォーカー」
そう話すキリクはどこか緊張していて、前をじっと見ていた。
「なに?」
「お前はな、捨て子だったんだ」
15歳とは言えまだまだ子供のキリク。
何かオブラートに包んだような言い方は見つからず、素直に真実をウォーカーに告げた。
「うん、知ってたよ?」
「ああ、そうか……え?」
思っていた答えと違い、驚き横を見るキリク。
てっきり衝撃を受けたウォーカーをどう慰めればいいかを考えていたキリクにとって、余りにも驚きの反応だった。
ウォーカーは何を今さら、とでも言う様な顔をしていた。
「そりゃ、皆と違う目の色をしていれば少しは考えるよ。それに顔立ちもどう見たって違うし」
「そ、そうか。そりゃ良かった」
「うん」
二人を包む沈黙。
実際の所、以前のウォーカーは気づいていなかった。
しかし十年ぶりに記憶が解放された為、知るようになっただけの事であった。
ただ、あえて言うまでも無いと、それなりの話にしたのである。
「今日ウォーカーの誕生日だろ? その時に母さんが話すつもりだったんだ」
「そうだったんだ」
「心配してたぞ? あの子、ショックでまた内気になるんじゃないかしらって」
「うふ、心配性の母さんらしいや」
ウォーカーの記憶の限り、母さんは確かにいつも何かと心配ばかりしていた。
まあ、それは確かな愛情に基づくものだというのは疑いようのない事実だったが。
静かになった二人は慌てて記憶に蓋をして会話を続けた。
このままじゃ泣いてしまう、と。
「で、どうやら母さんの云う事にはどこかの貴族の隠し子らしいと」
「ほお」
「丁度、十年前の流星祭の翌朝、玄関先で籠に入っているウォーカーを見つけたってさ」
「へえー、そうだったんだ」
気になっていたから聞けて良かったとウォーカーは感じていた。
「その籠の中に、綺麗な文字でウォーカーって書かれていたって。それで名前はウォーカーになったんだ」
なるほどね。だからウォーカーってなったのか……
それって歩って言う名前だったからだよね!
神のちょっと粋な所にクスリと笑うウォーカー。
「ん、何か面白かったか?」
「いや、名前の由来がそうだったんだね。ってことが分かったから」
「なるほどな」
「そういや、どうして魔法が使えるようになったんだ?」
「んーわかんない。ただ12時を告げる時計の音が鳴った時に何か感じたんだ」
「そうか、でもよかったな。魔法が使えて」
「うん、そうだね」
特にそれ以上突っ込んだ質問をしないキリクのやさしさに甘えたウォーカー。
記憶は少し前に遡っていた。
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