小さなセンシャ
――――――
「つまり、ウォーカーは魔法が使えるのか?」
「そう、だけど召喚魔法だけ。それもかなり限定されたモノだけどね」
生まれ育った村へと向かう森の途中、ウォーカーはキリクとそれぞれの知っている事のすり合わせをしていた。
既にここに至るまでの事情はお互いに話し、領主だったヴェルカンとヴェルカンの息がかかった憲兵の一部が起こした出来事だと云う事は二人の中で共通の認識となっていた。
この森には5つの村が有ったが今まで通ってきた3つの村は全て破壊しつくされ、火を掛けられており、生存者は誰一人として残っていなかった。
余りのむごさから目を背け、心の平静を保つためにも二人は無意識の内に熱心に話し込んでいた。
「自分が呼び出せるのはさっきも見せたけど戦車って呼ばれるものだけなんだ」
「センシャ?」
「そう、こんな感じ」
そう言って右手をかざし召喚したのはC.V.33。
通称、カルロ・ヴェローチェと呼ばれるイタリアの軽戦車だ。
既にエンジンが掛かっていて、いつでも発進できる状態になっている。
道脇にちょこんと鎮座するこの戦車は先ほどのBT-7やティーガーⅠとは比べ物に成らないほど小さい。
全高1.30メートルと成人男性の胸の高さ程しかなく、キリクやウォーカーの身長よりも小さい程だ。
本来、偵察や警備用の車両として作られた為、武装は8ミリ重機関銃2挺、正面装甲13.5ミリと戦車とは言えない程の貧弱さだが、価格の低さもあって当時のイタリアでは数多く生産された。
又、サスペンションは地形追従性が悪かったが歩き疲れた二人の移動用としては何ら問題は無かった。
「歩くのも疲れたから乗ろっか」
「それもそうか」
履帯に足をかけ、天板のハッチを開き、乗り込む二人。
微速前進と指示するウォーカー。
キュラキュラと進むC.V.33。
唸る戦車の上で二人ともハッチを開け放ち、上半身を出した状態で次の村へと向かった。
「……すごいな、これは!」
キリクにとって質問したいことは山ほどあったが取りあえずはウォーカーとの話に専念するため意識を向けた。
というより、そうでもしないと音が煩すぎて何を話しているか分からなくなるからだ。
軽戦車とは言えども車体から出てくる騒音は十分な大きさだった。
「でしょ! それに自分が操作しなくても大雑把に指示するだけで思った通りにちゃんと動いてくれるんだから凄いんだよ!」
ははーと目をまん丸くするキリク。
細かな指示を与えなくてもまるでウォーカーの考えを読んでいるかのように自然と動くセンシャ。
これを魔法と言わずして何というか! キリクは心の中で驚嘆していた。
「さっき、屋敷が壊れたのもこれを使ったのか?」
そうすれば納得できる。
先程のセンシャも、もっと大きかったしきっと屋敷に体当たりでもしたんだろう。
キリクはそう考えていた。
ウォーカーもキリクの勘違いを察してはいたが、あえて否定することはしなかった。
「そんなかんじ!」
そっかそっかと頷くキリク。
いつの間にか街道は次の村へと差し掛かっていた。
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