↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/40

人間種なら

 

 帝国の中でも国境に近いこの町。

 隣国との街道沿いと言うこともあり、町の入り口には規模の大きな詰め所が存在していた。


 町はお祭り騒ぎで盛り上がっている。

 その喧騒の中、体のあちこちが擦り切れているウォーカーは詰め所に飛び込んだ。


「憲兵さん! 憲兵さん!」

「何だ坊主、どうした!」


 中にいたのは数人の憲兵。すわ何事かとウォーカーを注視している。

 ウォーカーにはそのおじさんたちが何よりの救世主に見えた。


「お願い! 助けて! 皆が襲われているの!」

「何っ! 何処だ!」


 人が襲われていると聞いた憲兵たちは一斉に立ち上がり、場所を尋ねた。

 これで助かると安堵するウォーカー。


「ここから東の村だよ! 森の中!」


 すると突然、顔が険しくなる憲兵たち。


「……するとなんだ? 坊主は人間種か?」


 突然変わった雰囲気に戸惑いを隠せないウォーカー。

 ただただ焦る内心を抑えて質問に答える。


「そうだよ? それよりも早く!」


 無言で再び腰を下ろす憲兵たち。

 そしてその中でも最も年長の憲兵が重々しく口を開いた。


「――残念だが、助けに行くことは出来ねえなぁ」


 “助けに行けない”その言葉がウォーカーの頭の中でこだまする。

 聞き間違いか、ウォーカーはそう思った。


「えっ? 何?」

「助けることは、出来ない」


 一言一句、区切るような言葉。

 今度は正しく認識した。


「何で?! どうして助けてくれないの!?」

「坊主たちが人間だからだ」


 呆然と立ち尽くすウォーカー。

 人間だから?人間だったら助けてくれないの?

 ウォーカーの中で考えがグルグルと逡巡する。


「と、云う事だ坊主。用事が済んだらサッサと帰りな」


 シッシと手を振って帰れと言う憲兵たち。


「ねえ! お願い! 皆が死んじゃうの! 助けて! お願いします!」


 一番近くにいた憲兵の足に縋りつくウォーカー。

 その眼からは涙があふれ出していた。


 このままじゃ、このままじゃ、みんな殺されちゃう!

 10歳のウォーカーでもこのまま帰るわけにはいかないと云う事だけは分かっていた。


「ええい、邪魔だ! 人間風情が口をきくな!」


 次々とウォーカーに浴びせられる罵詈雑言。

 それでもヒッシと掴んで離さないウォーカー。

 お願いします!とただただ泣き叫んでいた。


 突然、宙に浮いたウォーカーは次の瞬間、背中から強い衝撃を感じた。

 しびれを切らした憲兵が詰め所から放り出したのだ。


「これ以上、騒いでみろ! お前をしょっ引くぞ!」

 捨て台詞と共に勢いよく閉じられる扉。


 それでもなお、ウォーカーは詰め所の扉をたたき、縋るのをやめなかった。

 もう、他に頼るすべを知らない。


 ドンドンとなる扉。

 お願いします、お願いします、と。

 消え入りそうなウォーカーの声が暗がりにただただ響いている。






 ―――――


 どのくらい経ったのだろうか。

 突然、憲兵がドアを開いた。


 勢いあまっておでこを地面にぶつけるウォーカー。

 見上げると先ほどウォーカーをつまみ出した憲兵がじっと見つめていた。


「行くぞ、ぐずぐずするな」


 心がファっと明るく感じたウォーカー。


「はい! ありがとうございます!」


 既に彼の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃに成っていた。


 憲兵の乗る馬に後ろから跨り、心からホッとする。

 良かった、これでみんな助かる……


 泣きつかれたのか、安堵からなのか、ウォーカーはそのまま憲兵の背中で眠りに落ちていった。

 なぜ、憲兵は一人だけだったのか? 少しも不信感を抱かずに……




評価、ご感想お待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。