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助けを呼びに

 

 状況が何やら大変だと云う事しかわからないウォーカー。

 風切り音と馬の駆ける音にかき消されないよう、大きな声でキリクに尋ねる。


「何があったの?! キリク兄ちゃん!」

「わからない! よくわからない集団が村に押し入ってきて村の皆を襲って来たんだ!」


 その答えにツーッと冷たいものを背中に感じる。


「ママは?! お姉ちゃんは無事なの?!」


 一番に考えたのは二人の安否だ。


「ああ! 鍵をかけて隠れているから大丈夫さ!」


 その声はどちらかと言うと事実と言うより、そうあって欲しいと言う願望にウォーカーは聞こえた。




 後ろをちらちらと気にするキリク。

 既に森を抜け、草原を通る街道を走っていた。


「っち! このままじゃ、追いつかれる!」


 更に、馬を駆けさせる。

 どうやら追手の乗っている馬の方が速く、追いつかれるのも時間の問題だった。


 思いつめたかのような表情のキリク。

 後ろにしがみ付いている小さな弟に自分の使命を託すことにした。


「よし! ウォーカー! よく聞け!」

「なに!?」

「いいか、今からお前は飛び降りて、町の詰め所の憲兵隊に助けを呼んでくるんだ!」


 言っていることが大分無茶をしていると云う事はウォーカーにも理解することが出来た。

 そして、今はそれしか方法が無いと云う事も。


「わかった! 憲兵さんの所に行けばいいんだね! 兄ちゃんは!?」

「俺は囮になって逃げる! なあに心配するな! 勝手知ったる我が森だ!すぐに撒いて見せるさ!」


 そう言うとキリクは手を後ろに回し、ポンポンとウォーカーの背中をたたいた。


「じゃ、行くぞ! 3、2、1!」


 キリクは馬の進路を素早く変え、街道から草原へと走る。

 その急激な動きは馬上の二人を大きく揺さぶった。


「行け! 出来るだけ早く帰って来いよ!」

「うん!」


 手を放したウォーカーは慣性の法則に従い、草原へと頭から突っ込み転がっていく。

 元々、体格が小さいウォーカーは器用に転がり、町に向けて走り出した。


 後ろではキリクの来いよ!お前らの相手はこっちだ!と煽っている声が聞こえてきた。

 こちらに向かってくる音がしないと云う事は無事、集団を引き付けることが出来たのだろう。



 ウォーカーは黄昏の道中を、疾走した。


 次々と沸き起こる不安を押しつぶして。


 転んでも転んでも、ただ、懸命に走った。



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