祭りの始まり
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「あっ、ごめんなさい……」
気を付けろ、ガキ!と、罵声と唾を浴びたウォーカーは落ちた荷物を拾い、再び市場の中を歩き出す。
人間種は他の種族と違って劣等種だから道を譲らなくちゃいけないのをすっかり忘れていたよ。
この前ママに教えてもらったんだけど、世界には五種族いるらしいの。
竜族と、エルフ族と、獣人族、そして最後にぼく達人間族。
魔法が使えないぼく達は一番ダメで、どんな時も逆らっちゃいけないんだ。
獣人族もあんまり魔法は使えないんだけど、すっごく運動が出来るからぼく達も偉いんだ。ってママが言ってた。
それにエルフ族はみんなキレイで魔法も一番上手だから偉いんだって。
竜族の人たちはいつも山の奥深くに住んでいてあんまり姿を見たことないや。
会っても絶対に逆らっちゃダメよってママは言ってた。
逆らったら痛い目に合うんだって。
良かった、ちゃんと覚えてる。と、頭を掻くウォーカー。
町の空気もいよいよ始まる流星祭に向けて浮ついているのが子供心にも感じられる。
いつもじゃ絶対いい顔しない野菜売りのおじちゃんも今日はおまけまでしてくれたしね。
町の入り口にはいつもは無い大きな飾り付けがしてあったし、見ているだけで楽しそう。
彼は市場での買い物を終え、村への帰路についていた。
日は既に傾いており、ウォーカーの影は道沿いに真っ直ぐ伸びている。
早く、帰ろう。ママが心配するよね。それに生まれて初めての流星祭だから楽しみだな!
ウォーカーは去年の誕生日に貰ったカレンお手製の眼帯を着け、お祭りが待ちきれないよと言わんばかりにルンルン気分で駆けだしていった。
―――
草原を抜け、森に入ったウォーカー。
何やら馬の蹄の音が聞こえる。
ふと前を見ると村の方から、キリクが馬に乗って走って来るのが見えた。
あっちゃ、帰ってくるのが遅すぎたかな。キリク兄ちゃんが迎えに来るなんて。
と、のんきに考えていたウォーカー。
すると、キリクから今まで聞いたことの無い様な厳しい声が飛んできた。
「ウォーカー! 逃げろ!」
声の厳しさに身がすくむ。
「え、なに~! なんで!」
「いいから、町に逃げるんだ!」
切羽詰まったように全力で走って来るキリクの後ろから何やら他の集団が走って来るのが見える。
その集団の決して穏やかではない声と何やらきらめくの物を見て、状況がつかめたウォーカー。
逃げなきゃ、と。
でも固まった体は容易に動かない。
「行くぞ!」
走ってきたキリクに腕を掴まれ、引き上げられる。
すると金縛りが溶けたかのように足が動き出した。
その拍子に手から滑って袋から散らばる荷物。
「あっ! 買ってきたもの!」
「そんなのはどうでもいい! さっさと跨れ、早く!」
ハイヤッと再び馬を全力で走らせるキリク。
振り落とされないようしっかと掴まるウォーカー。
祭りの始まりを告げる鐘が町から響いていた。
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しばらく重い話が続きます。今しばらくお待ちくださいませ。




