第一章 第2話 隣の席の女の子
最後まで読んでいただいけると幸いです!
まだ推敲前なので引っかかる部分は多々あるかと思いますが、暖かい目で見てください。
隣を見てみると、今朝見た女子がこちらを見ていた。私と目が合うと、彼女はすぐに目を逸らした。名札を見ると、「早乙女花撫」と書いてあった。
早乙女って名字珍しいなぁと見ていると、ふと彼女の首が目に入った。女子とは思えないぐらい太く、ガッチリしていた。喉仏もあり、その時初めて「彼女」と思っていた人が男子だったと気づいた。それほどまでに顔立ちが女性寄りだったのだ。
「移動したなー?目が悪くて見えないってやついるかー。」
先生がそう言うと、御子柴さんが手を挙げた。
「せんせー、目が悪くて黒板が見えないので一番前の菜月くんの隣に行きたいでーす」
この教室の誰もが彼女が噓を吐いていることを知っていただろう。彼女の仕草と、「前の席」ではなく「菜月くんの隣」と言ったことで彼女はただ小野さんの隣を求めているだけだった。
私が小野さんの隣の席を見ると、柊さんが周りをキョロキョロ見渡して焦っていた。彼女が小野さんを好きなようには見えないし、これから女子に嫉妬されることに焦っているのだろうか。
「お前は視力検査で評価Aだったろ。柊は眼鏡かけてて目が悪いんだから丁度良いじゃないか」
御子柴さんは、休み時間はいつもスマホを見ている。趣味はネットサーフィンと自己紹介で言っていたし、たくさん画面を見ていれば目も悪くなるはずなのに、なぜ評価Aと私より目が良いんだろうか…
私は両親が目が悪いのとゲームをしているため、目が悪い。中学生の頃まで眼鏡をしていたが頻繁に眼鏡屋に調節に行かないとすぐズレるので高校生からコンタクトをしている。
「チッ」という御子柴さんの舌打ちが聞こえた。先生や他の子にも聞こえるだろうに、なんでそんなに大きく聞こえるように舌打ちをするのだろうか。御子柴さんが舌打ちをしたら、それ以降舌打ちの原因の人物は悪口を陰で言われると噂されている。何にも悪くない柊さんが可哀想だ。
私は人間関係が面倒くさいので親しい人以外とはあんまり積極的に会話しない。これを言ったら怒るかなとか、悲しむかなとかを配慮しながら会話するのはかなりストレスが溜まる。
一限目は数学だ。私は引き出しから数学の教科書とノートを取り出し、筆箱に手を突っ込んだ。シャープペンシルと消しゴム、一応定規も机の上に並べる。金属の定規が音を立て、私はすぐに定規を押さえた。
日直が号令をかけて授業が始まり、数学の先生が黒板に式を書き始める。私はふと窓の外を見た。登校してきた時は雲一つなかったけど、今は少しもくもくとした白い雲がところどころ見える。雲には実体がないというが、地上から見ると雲は乗れそうな気がしてならない。乗れなくても、雲の間を飛んで遊びたい。
そういえば、いつの日からだろうか。私が翼を求めるようになったのは。
ベランダに立った時、このまま飛び降りて飛びたいという衝動が湧いてきた。でも、私に翼はないという事実と飛び降りたらどうなるかという理性が私を邪魔した。
この世の技術では翼は生やせない。そんなことは知っている。だからこそ、決して叶わないこの夢に私は心を奪われてしまった。
窓の外を見て飛ぶ私を想像すると、ほんの少しだけ心が軽くなるような気がする。私は授業よりも、窓の外を眺めることのほうが好きだった。だから前の窓から一番遠いあの席は退屈でならなかった。あそこは教室の出入り口に一番近いので人の話し声や歩く音がうるさかった。この前なんて、本当にびっくりした。
「ねぇ見てこれ〜!今流行ってるやつ。めっちゃ可愛くない!?」
私の後ろで話す声が聞こえる。少しだけ首の向きを変えると、そこには教室と廊下の境目で別のクラスの女子と喋る御子柴さんがいた。
大人数で教室の前でたむろするのは周りの人にとって迷惑でしかないのに、なぜそれが分からないのだろうか?そう考えながら本を読んでいると、私の右肩にスッと手が置かれた。
「あんたも可愛いと思わない?」
御子柴さんが、全く無関係の私に喋りかけてきたのだ。御子柴さんが見せてきた左手のスマホには、シスター様の着る、修道服に似て非なる衣装をした女性の踊る動画が流れていた。腕や足の露出が多く、ベールがあるのに髪は全く隠れていなかった。髪は派手な色で染まり、素顔が全くわからなくなるほど濃いメイクをしていた。
「これは…?」
私が言いかけると、御子柴さんは少し驚いたような顔で、でもすぐスマホを操作した。ボタンを押して、数字が表示された。
「ほら、再生数一千万超え!シスターの服ってダサいのに、こんなに可愛く着れるとか神すぎー。」
シスター様の服がダサい?シスター様の服は神への誓いを表す、神聖な修道服だ。ダサいも何もない。
露出を減らした、統一された服であるからこそ人の決意が現れるのだ。私は間違っていなくとも、周りから変な価値観を持つ変なやつだと思われたくなかった。
「そうだね、確かに可愛いね」
私は微笑みを顔に貼り付けた。人間の固定概念で見れば魅力的かもしれないが、私は本来の、優しい女神様のようなシスター様が美しいと思っている。
私は否定しなかったが、嘘でも本来のシスター様を侮辱するようなことを言ってしまって後悔した。私の席があそこじゃなければ、御子柴さんに声をかけられることもなかったはずだった。
私がボーッと窓を見ていると、先生がこちらの方を見た。
「じゃあ早乙女、ここの問題の答えは?」
「はっ、はい!」
隣の花撫くんが慌てて立ち上がる。ノートをぎゅっと持って、ノートに目をくっつけるようにして見ている。
先生がチョークで指すところには、式を求める問題が書いてあった。花撫くんはパニックになっているようで、ノートを握る手には汗をかいていた。
私は黒板の問題を見て、そして先生が見ていない隙に花撫くんをツンツンとつついた。花撫くんがこっちを見てかがんだので、私は花撫くんの耳にコソコソと答えを教えた。
花撫くんが小さい声で答えると、先生は正解だと言った。花撫くんは肩を撫で下ろして、フーッとため息をついた。
私が再び窓を見ようとすると、隣から小声で「ありがとう」という花撫くんの声が聞こえた。振り向くと、花撫くんは顔が火照って恥ずかしそうにしていた。
私はまた窓を見た。
チャイムが鳴り、授業が終わった。私は立ち上がって、女子トイレに向かった。一番奥の個室に入ると、私は便器の蓋の上に座り、両手の指を組む。
『主よ、憐んでください。この後、何も大変なことが起こりませんように。』
私は短くそう祈ると、個室の扉を開け蛇口をひねる。キンとした冷たい水が手を覆った。
二限目は理科だった。私は引き出しの中から教科書とノートを取り出し、重ねてその上に筆箱を乗せた。私は一番下の教科書を抱えて教室を出た。廊下にはたくさんの同級生たちや先輩、後輩がいる。
だけれど、私はその中には入れない。私がちゃんと喋った人なんてアヤメぐらいしかいないと、私は思う。部活も入っていないし。私はそう考えながら理科室に着いた。今日は理科の実験の日だった。班に分かれて実験をするんだっけ。班は先生が決める。班にアヤメがいればいいな…
私は先生が班を教えるまでの場つなぎに適当な席に座った。授業が始まるまで暇だったので理科室の時計の秒針をじーっと見つめていた。すると、授業開始のチャイムが鳴った。
先生が黒板に出席番号を白いチョークで書いていく。ドキドキしながら私が見ていると、私の番号の隣に「二十六」の番号が書かれた。二十六番は、アヤメの出席番号だ。ふとアヤメの方を見ると、アヤメもこちらの視線に気がついたようで、ニコッと微笑んだ。
ここまで読んで下さりありがとうございました❀.*・゜
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