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貴方の夢  作者: 茜馮鹿
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第一章  第一話 ある日の席替え

初めまして、もつなべと申します。


9月末締め切りの賞への応募を目指して執筆した作品です。

初めての投稿となり、ドギマギしていますが、最後まで見ていただけるとすごく嬉しいです。


それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

冬隣のある日のこと。


朝の空気はいつものように冷え切り、澄んだ空気は私の頬を掠めた。


皮肉なことに、こういう天気の日は大体空が綺麗なんだ。雲一つない青空に、私は見惚れていた。邪魔者が何も居ない大空を、あの鳥たちは大きい翼で自由に飛び回っている。


あれほど羨ましい事はない。たくさんの羽根で構成された美しい翼を、バッサバサと動かして飛んでいる。


私は冷たい自転車のペダルを踏んで漕ぐだけだ。

もう冬も近いというのに寒いスカートを履かなければいけないという苦痛は、長い間私を苦しめていた。いくらタイツを履いているとはいえ、こういう時男子の制服は羨ましいと心から思う。



毛糸の分厚い手袋をつけても、毛糸の隙間からハンドルの冷たさを感じる。私はハーッと白い息を吐いた。




学校の校門をくぐり、駐輪場に自転車を停め、鍵をかけた。


二階の右奥へと歩いていく。

廊下が外と同じくらい寒いのは本当に嫌いだ。廊下にエアコンを付けて欲しい…

教室に入ると、暖かいポワポワした空気が私に覆い被さる。教室はいつもエアコンが付いているので、毎朝教室の扉は閉められていた。

いつもの廊下側の一番後ろの席にカバンを置き、必要なものを引き出しに詰める。



角が潰れた国語の教科書。落書きだらけの数学の教科書。先生にはバレていると思うが、授業中に考えが浮かんでくるのだから仕方がないのだ。勉強はちゃんとしているし。筆箱を出して、カバンをしまう。しょっちゅう思うが、教室ってなんでこんなにもうるさいんだ…?朝からそんなに話すことがあるのかな。でも、そこまで大きい声をだす必要はない気がする…でも正直そんなに楽しそうに話しているのは羨ましい。


教室の暖気にウトウトしていると、誰かに声をかけられた。


「おーい、おはよう!昨日はちゃんと寝た?」


元気に喋るのは、アヤメだった。ふわふわとしたボブの髪がなびく。


「…12時前には寝たよ」



カクカクした声で絞り出した。この子は優しくて純粋だから嘘が吐きにくい。



「怪しいなぁ…今日の昼の12時までには寝たとか言わないよね?」


案の定私の嘘はすぐバレる。昨日は絵を描いていたら0時を回っていた。自分に呆れたのを覚えている。

「その反応は…昨日も夜中まで絵描いてたんでしょ?描くのはいいけどちゃんと寝ないと今みたいに寝そうになるよ」


アヤメが人差し指で私の鼻をツンと押す。私は頭を後ろにのけた。



「ごめんって。たまにはいいでしょ」



アヤメのムスッとしていた顔が、ため息をついてほどけた。いつもの柔らかいアヤメの顔に戻った。


ふと私の机の横に誰かが来た。


「よっ。何してんの?」


彼の名前は確か……何だったっけ?彼の胸元を見て、名札を確認する。セーターにぶっきらぼうに付けられた名札には、「松雪昴」と書いてあった。


「昴くん!ただ話してただけだよ」



アヤメが焦っているような、照れているような、でもキラキラした瞳で彼に答えた。ああ、そうだった。アヤメは彼に恋をしていた。



「ふーん。花撫もなんか話しなよ」



背が高い彼の後ろからひょこっと顔を出したのは、髪が耳たぶより少し下ぐらいまで長い、童顔の女子だった。彼女は人見知りのようで、昴くんの背中にくっついて離れなかった。



昴くんは、彼女の耳元で小さめに何か話しかけていた。


「じゃあな!」と言って昴くんが去っていった。その後ろを彼女が早歩きでそそくさとついて行く。そういえば、名前を聞いていなかった。でも確か、「かなで」とか言っていたような…



「きゃあ!昴くんと話しちゃった!」

とアヤメが顔をリンゴのように赤らめて言ってきた。ただ話しただけなのに、まさに片想いの可愛い女の子って感じがする。


アヤメの口角がグインと上がる。周りの目もあるから変にニヤニヤしたくないが、勝手に私の口が笑みを浮かべているようだ。

「良かったねえ、告白はしないの?」


「ばっバカ、できるわけないでしょ!絶対振られるに決まってる…!」


慌てて恥ずかしそうにアヤメが答えた。アヤメは身長が私よりも低く、女の子らしい可愛い笑顔の女子だ。他の男子からも数人好かれているが、アヤメは昴くんに夢中なので気づいていないようだ。


キーン、コーン、カーン、コーン。

朝のチャイムがなり、先生が名簿と少し先が丸い鉛筆を出して出席を取り始めた。


「小野菜月さん」「はい」


小野さんは運動が得意な男子だ。小学生の頃から一緒だった。足はガッチリと筋肉質で、顔が整っている。そのせい女子は彼に群がってくる…でも、菜月は勉強が苦手だ。いつも赤点ギリギリ、だが勉強は頑張っているのでそこは素直に尊敬する。 


「御子柴梅さん」「はぁい」


御子柴さんはスタイルも良く髪も綺麗で美人なのでちょっと羨ましいけど、表面上優しくしてくれる割にはクラスメイトの悪口を頻繁に言うので苦手だ。私が知ったのはアヤメが彼女に愚痴られたことを私に話してきた事から。相変わらず先生を舐めた態度だ。


「柊青芭さん」「…はい」


小さな声で柊さんは返事をした。柊さんは物静かで休み時間には本を読んでいる。話しかけにくいので、クラスメイトと話しているところはあんまり見たことがない。でもいつもテストでは学年10位以上を保持している。


「早乙女花撫さん」「はいっ」


低いような高いような声が耳に響いた。みんなと返事の仕方は一緒だったはずなのに、彼女だけ声が違う。『声質』がどこか、他の子とはかけ離れている。そんな気がした。


一通り出席確認が終わり、一限目は何だろうか…と思ったときだった。先生が口を開いた。

「今日は、席替えから一ヶ月が経ったので席替えをしようと思います」

私の今の席は空が見れないのであんまり好きじゃなかった。もちろん今回もくじ引きだろう。


先生が黒板に白いチョークでこの教室の席を四角形に見立てた図を描き、そこに右上から順に番号を割り振っていった。

席でいうと廊下側の一番前から一、後ろにいくにつれてニ、三といったところだ。


小さい箱に手を入れる口が付いた先生お手製くじ引き箱を先生が振り出した。中には数字が書かれた小さい紙が入っている。

「じゃあみんな番号順に並んでくじ引いてって」


みんなが席を立ち上がり並び始めた。私も重い腰を上げ、椅子を机にしまって並んだ。

私が狙うのは窓側の席。とはいえ窓側の前から二番目は学校の大きな柱があるので避けたいところだ。隣の席が誰になるかも大事だ。


小野さんは女子が嫉妬してくるだろう。

顔が整っている人が自分の近くにいると劣等感に襲われる。御子柴さんも苦手だ。人の悪口を言うような人とはあまり関わりたくはないし、私の悪口を言われてもごめんだ。アヤメが隣なら、気を遣わなくて良いから安心なのに。


だが私は今朝もいつも通り入念に神に祈ってきたのだ。私は朝起きた時、神に今日一日の平安を祈る。主よ、私をお助け下さい…


色々考えている間に私の順番が回ってきた。箱の中に手を入れ、探り探りで引き当てた紙を引く。こういうのはあんまり選びすぎないことにしている。


選ばなかったものが自分の望むものだったら、勿体無いからだ。手を動かすうちに私の手のひらに入りこんできた紙を選ぶことにした。


綺麗に半分にきっちり折られた紙を開けて覗き込むように中を見る。すると、そこには二十六と書いてあった。二十六は丁度窓側だ。主よ、ありがとうございます。あとは、隣が誰になるかだ…


「じゃあ、数字を見て机を移動してー」

私は今の席から一番遠い窓側に机を移動させ始めた。椅子を机にしまい、少し浮かせながら一緒に移動させる。窓側の一番前に机を持ってきた人が、私の隣の席になる人だ。


私が机を場所に移動して空を見ていると、「コンッ」と何かがぶつかるような音が聞こえ、机が少し左に動いた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!



次の更新も頑張りますので、よろしければブックマークや評価をよろしくお願いします!

次回もお楽しみに〜!

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