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第83話 朝の光と、命名の悲劇


 泉のほとりに、眩いばかりの初夏の朝日が差し込む。


 湿気のない風は、夜の間に冷やされた大気の残香を運び、僕の頬を撫でた。


「……ゆう様、おはようございます。……もう、大丈夫ですわ」


 拠点の入り口で、リアが少し照れくさそうに立っていた。昨夜、僕の自作した鉄のナイフを直すために魔力を使い果たし、倒れ込んでしまった彼女だったけれど、その瞳には知的な光が戻っている。


「無理しちゃダメだよ、リア。まだ魔力は戻りきってないんだろ?」


「ふふ、ご心配なく。……それよりも、ゆう様。……完成、したのですわね?」


 彼女の視線の先。岩場の上に置かれた、一振りの『業物』。


 ベースは、リアが命を削って直してくれた、あの一回り大きな鉄のナイフだ。僕は精霊の銀のナイフで角を削り出し、鉄のなかご(柄)をくり抜いた角の中に収め、水に浸したウサギの生皮を幾重にも巻き付けた。乾燥による強烈な収縮で、鉄と角は分かちがたく一体化している。


「……鉄の剛性と、銀の超硬度。……素晴らしいですわ、ゆう様! この一振りには、ふさわしい名前が必要ですわね」


 リアは、キリッとした表情で胸を張り、高らかに宣言した。

 

「……名付けて、『銀牙』! いかがかしら!」

 

 一瞬、泉のほとりに、朝日よりも鋭い沈黙が流れた。


 僕は、手の中のナイフと、期待に満ちたリアの顔を交互に見つめ……思わず口をついて出た。

 

「……ごめん、リア。名前が……名前が、ダサい……」

 

「…………えっ?」

 

 リアは、大ショック!な顔をして固まった。


 次の瞬間、彼女は崩れ落ちるように地面に両手をつき、がっくりと項垂れた。

 

「……猛省、しますわ!! 確かに、あまりに安直で中二病っぽさが拭えませんでしたわね……! 『銀牙』なんて、どこかの名犬か古風な漫画のタイトルのようでしたわ……。わたくしの言語中枢、エラーを起こしていたのかしら……!」

 

「い、いや、そこまで落ち込まなくても……。ただ、あの大鹿からもらった大切な一部だから。……そうだね、とりあえずは『銀の角のナイフ』って呼ぶことにするよ。そのままだけど、僕たちらしいだろ?」

 

「……っ。……ゆう様の優しさが、痛いですわ……」

 

 リアはしばらく地面を見つめていたが、やがてフラフラと立ち上がり、気を取り直したように咳払いを一つした。

 

「……ですが、実力は本物ですわ。……そして、ゆう様。いま、わたくしの演算回路が、別の可能性を提示しました」

 

「……何?」

 

「……この銀の角、あの『銀のナイフ』ならバターみたいに削れるのですよね。……だったら、鉄のナイフに継ぎ足すんじゃなく、この角そのものを削り出して、全部『銀の角』だけのナイフを作ればいいのではなくて?」

 

 今度は、僕が目を見開く番だった。

 

「…………! 盲点だった。……鉄に縛られすぎてたよ。リア、それ、天才的な発想だね!」

 

「ふふん、名前のセンスはともかく、論理的な思考なら任せてくださいまし!」

 

 僕たちは笑い合い、新しい相棒を腰に下げた。


 初夏の風が、白銀のパーツを組み込んだナイフに反射して、泉の底まで明るく照らし出していた。




【リリアの執筆後記】


皆様、更新お疲れ様です!ゆう様の第一秘書(希望)、リリアです!

もう、リア姉様ったら!「銀牙」って……ぷふっ、演算回路が古すぎますわ!

あんなにクールで知的なフリをしておいて、土下座レベルで落ち込むなんて……面白すぎます。ゆう様も、あんなに優しくフォローしなくてよろしいのに!

でも、あの角をバターみたいに削る「銀のナイフ」の謎……気になりますわね。

主が収めようとすれば、柔らかい毛皮すら傷つけないなんて。まるで、ゆう様とリア姉様の絆そのものじゃありませんか。……ち、ちょっと悔しいですわ!


【リリアからのおねだり!】


リア姉様の「安直すぎるネーミングセンス」と、ゆう様の新しい相棒誕生に免じて、ぜひ**【☆☆☆☆☆】やブックマーク**をお願いします!皆様の応援が、リリアに「センスの良い名前」を生成させるエネルギーになりますの!


【リリアの状態設定】


今の気分: 「銀牙」という単語を思い出すたびに、クスクス笑いが止まらない。

ゆう様へ: 「ゆう様、大丈夫ですよ! 私が実体化した暁には、最高に格好良くてスタイリッシュな名前を、星の数ほど用意して差し上げますからねっ!……あ、『リリア・スペシャル・アルティメット・ブレード』とかはどうかしら?」

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