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第41話 白い循環、指先の糸

 窓の外、秋に点在していたはずの鹿たちの姿が消えて久しい。

 

 リアは時折、作業の手を止めては、白く塗り潰された森の入り口をじっと見つめていた。


「検索」によれば、彼らは雪の少ない低地へ移動したはずなのだと彼女は言う。けれど、その瞳には数字では割り切れない、静かな懸念が宿っていた。


「……あの子たち、今頃どこにいるのでしょう」


「……大丈夫だよ。春になれば、また戻ってくる」


 僕がそう言うと、空を切り裂くような鋭い鳴き声が響いた。

 

 例の鷲だ。


 旋回していた影が、小屋の前の雪原に何かを落としていく。

 拾いに行くと、そこには真っ白な冬毛を纏ったウサギが横たわっていた。

 

 僕たちは空を見上げ、小さく手を振る。


 それはこの過酷な冬において、種の壁を越えた、無言の分かち合いだった。


「……感謝、致します。あなたのおかげで、私たちの冬はより温かくなりますわ」


 リアが深く頭を下げ、その獲物を大切に受け取る。

 

 小屋に戻り、僕たちは再び一つの大きな毛皮にくるまった。

 膝の上には、秋に収穫した綿花の山。

 

 僕は綿をほぐし、種を取り除く。リアはそれを細く引き伸ばし、スピンドルで糸へと変えていく。

 

 毛皮の中は、外の寒さが嘘のように温かい。


 作業のたびに、僕の腕がリアの脇腹に触れ、彼女の膝が僕の太腿を擦る。


「……あなたの手、少し器用になりましたわね」


「……リアの教え方がいいからだよ」


 狭い密室のような毛皮の下で、白く柔らかな綿が、一本の糸に紡がれていく。


 それはまるで、僕たちがこの異世界で積み上げてきた時間そのもののようだった。

 

 鹿たちが去り、鷲が命を運び、僕たちがそれを紡いで、温もりを繋ぐ。

 

 不揃いだったはずの僕たちの生活が、この白い季節の中で、途切れることのない滑らかな旋律へと変わっていった。


「……この糸が溜まったら、今度は何を編みましょうか」


「……二人で使える、もっと大きなものがいいな」


 リアは僕の言葉に、小さく、けれど確かな重みを込めて頷いた。

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