第40話 節約の掟、一つの毛皮
冬は、僕たちの予想を超えてその重みを増していった。
連日のように降り続く雪。外へ出られる時間は限られ、薪の山は少しずつ、けれど確実にその高さを減らしている。
リアが手元の木板に刻んだ記録を見つめ、厳粛な面持ちで口を開いた。
「……計算によれば、現在の燃焼効率では、春を待たずに燃料が枯渇しますわ。……対策を講じる必要があります」
「……え、そんなに? じゃあ、火を小さくするしかないかな」
「はい。その代わり、体温の維持を外部エネルギーに頼るのではなく、相互の熱伝導に依存する形態へと移行します」
リアはそう言うと、寝床からあの「不揃いなウサギの毛皮」を持ってきた。
そして、囲炉裏の傍に座る僕の隣に、断りもなく滑り込んできた。
「……こうして、一つの毛皮に二人で包まります。……これで、薪を半分に節約しても、生存に支障はありませんわ」
彼女の肩が、僕の腕にぴたりと触れる。
厚手の毛皮を二人で被ると、そこはもう、外の寒さとは無縁の小さな聖域になった。
食事をするときも、お茶を飲むときも。
僕が手慰みに木を削っているときも、リアが「検索」で得た知識を反芻しているときも。
僕たちは、一つの毛皮の中で肩を並べ、膝を突き合わせて過ごした。
「……リア、窮屈じゃない?」
「……いえ。むしろ、熱の拡散が防げて非常に合理的ですわ。……それに、」
リアが言葉を切り、僕の肩に、こてん、と頭を預けた。
「……あなたの心音が、よく聞こえます。……データ上の数値ではなく、生きているという確信が持てる距離ですわ」
彼女の吐息が、僕の鎖骨のあたりを掠める。
火を小さくした小屋の中は、いつもより少し暗い。
けれど、その分、隣にいる彼女の存在が、驚くほど鮮明に伝わってくる。
沈黙さえも、心地よい重みを持っていた。
時折、彼女が眠たそうに僕の腕を掴み、より深く毛皮の中に潜り込んでくる。
不便な生活。
けれど、この「薪の節約」という名目のおかげで、僕たちは昨日よりもずっと、互いの境界線を曖昧にしていった。
「……明日も、雪でしょうか」
「……そうだね。でも、この中なら大丈夫だよ」
「……ええ。……ずっと、節約が必要かもしれませんわね」
そう言って、リアは微かに微笑んだ。
窓の外では、また新しい雪が静かに世界を塗りつぶしていく。
けれど、僕たちは小さな残り火を見つめながら、一つの温もりの中で、春を待つ贅沢な停滞を楽しんでいた。




