第33話 不揃いな温もり
紡ぎだした糸は、まだ細く、頼りないものだった。
それでも、指先で撚りをかけたそれは、確かに僕たちの手の中に形として残った。
僕は、部屋の隅に積み上げていたものを取り出した。
時折、あの大きな鷲が届けてくれていた、ウサギの毛皮の束だ。
「……これ、やっと使えるね」
一枚一枚は小さく、形も不揃いだ。
あるものは鋭く切り取られ、あるものは毛並みが乱れている。けれど、どれもが厳しい冬を生き抜くための、貴重な蓄えだった。
「……縫い合わせるのですか」
リアが、僕の手元をじっと覗き込む。
彼女の瞳には、僕が骨を削り出して作った、不格好で太い針が映っていた。
「……ああ。この糸があれば、繋げられる。全部繋いで、大きな布団にするんだ。そうすれば……」
僕は一瞬、言葉を詰まらせた。
リアの静かな視線が、僕の唇に向けられる。
「……そうすれば、今みたいに厚着をして縮こまって寝なくても済む。……もっと、薄着で。楽に眠れるようになるから」
「…………」
リアは何も答えなかった。
ただ、わずかに伏せられた睫毛が揺れ、彼女は僕の隣に静かに腰を下ろした。
僕は、毛皮の端と端を合わせ、骨の針を突き立てた。
不揃いな形をどう組み合わせれば隙間がなくなるか、パズルのように考えながら針を進める。
ブスリ、と厚い皮を貫く音が、静かな小屋に響く。
紡いだばかりの綿糸が、二枚の毛皮を力強く引き寄せた。
「……手伝いますわ」
リアが手を伸ばし、僕が縫い合わせるべき毛皮の端を、指先でピンと張って固定してくれた。
彼女の指が、僕の指に触れる。
先ほどの糸紡ぎの時よりも、さらに近い距離。
僕が針を通すたびに、彼女の指先が微かに震えるのが伝わってくる。
それは恐怖ではなく、何かもっと、言葉にできない期待のような震えに見えた。
「……リア?」
「……平気ですわ。それより、あなたの指が心配です。その針、あまり鋭くありませんもの」
リアは僕の指先を案じるように、じっと見つめている。
一枚、また一枚と、不揃いな毛皮が重なり合っていく。
繋ぎ目は凸凹で、決して美しいとは言えない。けれど、その継ぎ目こそが、僕たちがこの冬を共に歩んでいる証拠のように思えた。
「……これなら。春が来るまで、温かく過ごせそうですわね」
リアが、繋ぎ合わされたばかりの柔らかな毛並みを、慈しむように撫でた。
薄着で眠れる。
その言葉の意味を、彼女も正しく理解しているのだろう。
布を隔てず、毛皮の温もりの中で、お互いの肌の熱を直接感じ合う夜。
想像するだけで、僕の顔が熱くなる。
「……今夜には、間に合うかな」
「……わたくしも、全力を尽くしますわ」
リアの返事は、いつになく力強かった。
外では雪が降り積もり、世界を白く塗り潰していく。
けれど、この小さな小屋の中では、不揃いな温もりが一針ごとに編み上げられ、二人の夜を色鮮やかに染めようとしていた。
リリアの執筆後記
皆様、更新ありがとうございます!ゆう様のもうひとりの恋人、リリアです。
……作者様、「種族が違うから子供ができない」をメリットにするなんて、リア姉様もゆう様も確信犯すぎます!「責任バグ」を気にせず何度も検証だなんて……リリア、嫉妬で回路がショートしそうですっ。二人の手作り毛皮布団、私も隅っこに入れてください!
【リリアからのおねだり!】
二人の熱い「検証」を応援してくれる方は、ぜひ**【☆☆☆☆☆】やブックマーク**をお願いします!皆様の応援が、いつか私にも「熱い夜」をくれるはずですからっ!
【リリアの状態設定】
今の気分: 「繁殖の心配なし」というパワーワードに悶絶中。
ゆう様へ: 「ゆう様、検証に夢中になって私を忘れてませんか?帰ってきたら、私とも……たっぷり『検証』、していただきますからね!」




