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EVE〜終末世界の整備兵〜  作者: 灰猫J
第二章 神を狩る
24/29

第7話 アシュートの灰、ミニヤの火

 GDFエジプト第一支部。


 カイロの都市機能と無理やり接続された巨大要塞は、ミネルヴァのように海上へ自己完結した姿ではなかった。ナイル沿いの市街地へ鋼鉄の塊を押し込むように築かれ、外周には重装甲の壁、対空砲列、発着甲板、補給倉庫、司令棟が幾層にも重なっている。都市の中にあるのに、都市とは別の論理で生きている建造物だった。実務的で、骨太で、飾りがない。世界中枢の洗練ではなく、前線を支え続ける地域司令部の、疲れていてなお折れない骨格がそこにある。


 輸送艇が降下態勢に入ると、着陸誘導灯が白く滑走路を縁取り始める。機体の下で熱気が逆巻き、夜のカイロの匂いが機内へ少しずつ入り込んできた。乾いた土の匂い。金属の熱。遠くで燃料を焚く臭い。それら全部が混ざっていて、東京湾上の塩気を帯びた空気とは違う、地面の近い夜だった。


 着陸の衝撃は小さい。

 それでも、長い飛行の終わりを身体が理解した瞬間、イーサン・クロークは自分の中にまだ少しだけ残っていた緊張の芯が、別の形へ変わるのを感じた。


 ここから先は、遠征ではない。

 神話が最初に現実を食い破った土地の、内側だ。


     *


 第一支部の司令部棟は、外見以上に頑丈そうな建物だった。

 通された会議室はミネルヴァのように洗練されてはいない。壁材の一部には補修の継ぎ目が残り、照明も少し黄ばんで見える。だが、その代わりに不思議な安心感があった。ここは見栄えのための中枢ではなく、本当に戦線を回し続けてきた場所なのだと、入った瞬間にわかる。机も椅子も過剰な装飾はなく、壁面モニターの配置も実務優先だった。


 そこに立っていた男も、部屋によく似合っていた。


 ハサン・アル=ラシード中将。


 五十代半ば。日焼けの濃い肌。太い眉。短く整えた髭。肩幅の広さと背筋の通り方が、いまもこの男が「兵士」であることを物語っている。軍服の上からでもわかるほど体幹は太く、手は節くれ立っていた。声は低いが、よく通る。


 彼がゼロ大隊へ向けた最初の視線には、品定めより先に、知っている者を見る温度があった。


「ようこそ、エジプト第一支部へ。ハサン・アル=ラシードだ」


 ロクサーヌが前へ出て最低限の礼を返す。アストラ、セラフィナ、アイリス、ノクティアも続く。イーサンも遅れずに頭を下げた。


 ハサン中将はそれを見て、わずかに頷いた。

「噂は聞いている」


 その目がロクサーヌへ向く。

「第十三防衛区のA級対応。あれを生き抜いたと。」


 ロクサーヌは「運が良かっただけです」とも言わない。ただ事実だけを受け取る沈黙で返す。ハサン中将はその沈黙の扱い方にも慣れているようだった。


 次にアストラへ視線が移る。

「シュリーク撃破の狙撃記録も見た。こんな表現はどうかと思うが、きれいだった」


 アストラは少しだけ目を細める。

「ありがとうございます」


 礼は短い。だがミレイユに向ける時ほど冷たくはない。そのことにイーサンは小さく気づく。


 ハサンはさらにアイリス、セラフィナ、ノクティアの方も順に見て、それぞれに短い言葉をかけた。どれも持ち上げるような言い方ではない。ただ前線の兵士として、相手の働きを知っている者の距離感だ。そして最後に、彼の視線がイーサンへ向く。


「整備兵か」


「は、はい」


「いい顔をしている」


 イーサンは一瞬、意味がわからなかった。


「戦場を近くで見た人間の顔だ。兵装だけを見ている顔じゃない」


 そう言われて、胸の奥がほんの少し熱くなる。整備兵として必要とされていることはわかっていたが、こうして“戦う側”として自然に数えられたことは、初めてに近かった。


 ハサン中将は椅子へ座るよう促し、自分も卓の中央に腰を下ろす。


「私は元A級殲滅兵だ」


 その第一声に、イーサンは思わず背筋を正した。


「若い頃は十年以上、前線にいた。だから君たちがどういう仕事をしているか、少しはわかるつもりだ」


 少し、という言い方が逆に本物だった。自分が理解しきれない部分を含めて、なお前線の重さを知っている者の言葉だ。


「率直に言う。来てくれて助かる」

 ハサン中将はそう言った。


「だが同時に、君たちが死ねばもっと困る。だから無理はするな――と言いたいところだが」


 そこで彼は一瞬だけ口元を歪めた。苦笑ではない。前線の人間が言う、どうしようもない現実への表情だ。


「今回の敵は、無理をしなければ勝てない類でもある」


 会議室が少し静かになる。

 それから共有されたのは、現地の実務そのものだった。


 アシュートのエジプト第三支部壊滅後、第一支部は周辺防衛線を再編していること。第三支部跡地への大規模な再進駐は危険すぎてできず、現在は外縁観測と限定的な索敵に留まっていること。ウェプワウェト型個体はそれ以来、定点では一切捕捉されていないこと。代わりに周辺の鉄道、補給路、避難輸送インフラへ断続的に干渉する兆候があること。


「敵はただ基地を潰したのではない」


 ハサン中将は、アシュート周辺の地図を示しながら言う。


「血管を噛みにきている。都市と都市を繋ぐもの、兵と民を運ぶもの、その全部へ」


 その言葉が、後でどれほど重い意味を持つか、イーサンはまだ知らなかった。


     *


 翌朝、ゼロ大隊はアシュート第三支部跡地へ向かった。


 カイロを発った輸送艇は、ナイルに沿うように南へ飛ぶ。窓の外には、長い川と、その周囲にしがみつくように続く都市と農地と、そこからすぐ先に始まる乾いた荒野が見えた。日本の防衛線都市とはあまりに違う。土地が広い。空が高い。そして、その広さのせいで、失われた場所の死もまた、ひどく大きく感じられる。


 アシュート上空へ差しかかった時、イーサンは言葉を失った。


 第三支部跡地は、一度死んだ場所だった。

 そうとしか言いようがない。


 爆撃を受けた基地とも、砲撃で潰れた防衛施設とも違う。外壁は半ば融け、ねじれ、黒く硬化している。建物の輪郭は残っているのに、その残り方が生物の死骸に近い。骨格だけが立っていて、内部は何度も引き裂かれ、焼き直され、その末に形だけ固まったように見える。地面も同じだった。広域火力で抉れたというより、見えない刃で何層も削られ、その摩擦熱で一部が焼き固められたような色をしている。血痕や遺体はとっくに回収済みなのだろう。だが死の密度だけが、空間そのものへ保存されていた。


 輸送艇から降りると、風の音が妙に少ないことに気づく。

 何もないわけではない。砂が舞い、遠くで金属片が擦れる。だが、生きている基地にあるはずの雑音が一切ない。人の呼吸も、駆動音も、待機中の兵器の低いうなりもない。空気が薄いというより、音の方が先に殺された場所だった。


 ゼロ大隊は散開し、それぞれのやり方で敵の痕跡を読みにいく。


 アストラはまず高所へ向かい、全体配置と射線の通り方から侵入経路を読む。


 ロクサーヌは焼損痕と構造破壊の深さを見ながら、敵がどの程度の出力をどのタイミングで切ったのかを推測する。


 セラフィナは熱痕を指でなぞるように観察し、その質が単なる高温焼却ではないとすぐに見抜く。


 アイリスは近接戦の感覚から、敵がどういう踏み込みで何人を何秒で切ったかを、まるで追体験するように辿っていく。


 ノクティアは、人がどこに立てば一番多く死ぬかを見ていた。つまり、敵がどこへ立つと戦場全体の殺意を最も効率よく通せるのか、その“殺意の通り道”を読んでいる。


 誰もが高い精度で見ている。

 それでもイーサンだけは、少し違う角度でこの場所を見ていた。


 彼は最初、壁面の損傷と兵装残骸へ目を向けた。整備兵としての癖だ。だがすぐに、その見方だけでは足りないと感じる。広域破壊能力。GDFがそう呼んでいる現象。その言葉の雑さが、どうにも引っかかる。


 広域攻撃だと言うなら、何が爆心だったのか。

 高出力熱線だと言うなら、なぜ焼損痕の方向がこんなに多重なのか。

 衝撃波だと言うなら、なぜ構造物の破断面がこれほど均一に見えて、なおかつ角度だけがバラバラなのか。


 イーサンは黙って、壁面へ手を触れる。黒く焼けたように見える部分。だが実際には、これは燃えた痕ではない。もっと乾いている。摩擦に近い。刃が高速で何度も通り、熱だけが残った痕跡のように感じる。


 さらに別の建屋の断面を見る。

 ここも同じだ。外から内へ爆圧が来たなら、もっと単純な破断になる。だがこれは違う。内外という区別ではない。複数方向から、しかし一続きの運動として切られている。まるで、空間の中へ無数の斬撃が同時に成立したみたいに。


 その考えが頭へ浮かんだ瞬間、イーサンの背筋を冷たいものが走った。


「……違う」


 彼は思わず呟いた。

 広域破壊能力ではない。

 少なくとも、単純な意味での「広く壊す力」じゃない。


 アストラが少し離れた位置からこちらを見る。イーサンは自分でも気づかぬうちに、かなり深く損傷痕へ入り込んでいたらしい。


「何が」


 その一言をきっかけに、イーサンの中でばらばらだった線が急に繋がる。


 壁面の摩擦熱。

 多方向の破断。

 爆心のない構造崩壊。

 高出力に見えて、実際には“線”の集積でしか説明できない死に方。


「これ……爆撃じゃないです」


 アストラが動きを止める。


 ロクサーヌも、セラフィナも、ノクティアも、アイリスも、徐々に視線を寄せてくる。


 イーサンは息を整え、できるだけ正確に言葉を選んだ。


「GDFでは、ウェプワウェトの広域攻撃を高出力破壊って見てるんですよね。でも違う。少なくとも、ここの痕はそれじゃ説明できない」


 彼は焼けた壁面を指差す。


「これ、熱で焼いたんじゃない。斬撃の摩擦熱です。しかも単発じゃない。空間の中に何本も、いや……何層も、刃の通り道が同時に成立した感じです」


「……続けて」


 アストラの声は低い。だが、その低さの中に真剣さが濃くなる。


「爆発なら爆心がある。衝撃波なら崩れ方に向きが出る。熱線なら焼損と破断がもっと単純になる。でもここは全部違う。破断面の角度がばらばらなのに、運動としては繋がってる。つまり――」


 イーサンは自分の仮説を言葉にする瞬間、自分で自分の声を怖いと思った。


「ウェプワウェトは、広く壊したんじゃない。一定範囲の中に、“逃げ場のない斬撃の領域”を発生させたんです」


 静寂。

 風の音だけが少しだけ通る。


 イーサンはさらに続ける。止まれない。


「面で切った、って言うのが近いかもしれない。衝撃波じゃなくて、見えない刃の通り道が範囲内に同時成立した。だから兵士たちはどこへ逃げても切られたし、建物も一点から壊れずに全体が斬られたように崩れた」


 セラフィナが息を呑むのがわかった。


「だから……熱痕がこういう残り方を……」


 アストラは周囲の破断面と照合するように何度も視線を走らせ、それから小さく呟く。


「……合ってる」


 その二文字だけで、場の重さが変わった。


 アイリスが低く笑うような、怒るような声を漏らす。


「面で斬るってか。ふざけた神話だな」


 ノクティアは、焼けた通路の奥を見ながら静かに言う。


「……だから逃げ場が死んでたのか」


 ロクサーヌはイーサンをまっすぐ見ていた。

 その視線には、驚きと確認が混じっている。イーサンが兵装の本質を見る目を持っていることは、彼女もすでに知っていた。だが今、彼が見抜いたのは兵装ではなく、GDF全体がまだ曖昧にしか捉えていなかったS級個体の本質だ。


 イーサン自身、そのことを半ば信じられなかった。


「たぶん……だから、基地全体がああいう壊れ方をしたんです」


 そこまで言った時、アストラの端末へ緊急通信が割り込んだ。

 鋭い電子音。

 誰もが一斉にそちらを見る。


 アストラは応答を開き、相手の声を数秒聞いたあと、顔つきを変えた。


「第一支部から。ウェプワウェト型個体がミニヤに出現。鉄道施設を襲撃中」


 その言葉が落ちた瞬間、アシュート第三支部跡地の死んだ静けさが一気に遠のいた気がした。


 ミニヤ。


 カイロとアシュートの中間にある都市。鉄道と補給路の要衝。避難輸送の動脈でもある。そこを噛み切られれば、周辺の都市圏全部が痺れる。


 ロクサーヌが即座に言う。


「戻る」


 異論はない。誰も一秒も無駄にしない。調査は中断され、ゼロ大隊は輸送艇へ駆け戻る。

 さっきまで死んだ記録として残っていたウェプワウェトが、今度は現在進行形の火としてミニヤに現れている。その事実だけで、空気は加速した。


     *


 再び輸送艇へ乗り込み、機体がミニヤへ向けて旋回を始めた時、アストラはもう戦術卓を開いていた。

 モニターには、ミニヤの鉄道網と駅施設の立体図、それに第一支部から送られてきたリアルタイムに近い映像が並ぶ。線路や貨車、駅の一部が燃えている。敵がただ人間を殺すのではなく、都市と都市を繋ぐ血管を噛んでいることがひと目でわかる。


「さっきの分析を前提に組み直す」

 アストラの声は冷たく、速い。


「ウェプワウェトの広域攻撃が“斬撃領域の成立”なら、前衛二枚で密着するのは悪手。面に巻き込まれる」


 戦術卓上の配置が変わる。

 前衛を示すマーカーが一つだけ前へ出る。


「前衛はアイリス単独」


 アイリスの口元が吊り上がる。


「いいね」


 戦意が露骨に高まるのが、声だけでわかる。


「ロクサーヌは前へ出ない」


 そこでロクサーヌが眉をわずかに寄せた。


「は?」


 その一文字だけで、不満は十分伝わる。


 アストラは切り捨てるように続ける。


「補助火力へ回って。敵の斬撃領域に複数前衛を入れる意味がない。むしろアイリス一人の方が動きが噛みやすい」


「私が補助?」


 ロクサーヌの声は静かだ。だがその静けさの奥に、気に入らなさがはっきりある。


「補助って言い方が嫌なら制圧支援でもいいわよ」

 アストラは意に介さない。


「でも役割は同じ。前で受けるのはアイリス。あなたは火力で敵の逃走条件を削る。近づきすぎない」


 セラフィナとノクティアの位置は従前どおり中衛へ置かれる。アストラは最後に後方の狙撃線を引きながら、先ほどアシュートで得たイーサンの分析を戦術へ落としていく。


「敵が領域を作るなら、密集はしない。前衛は一点。中衛は空間外縁を削る。ロクサーヌは正面火力じゃなく、領域の成立条件を壊す方へ寄せる」


 イーサンはその戦術図を見ながら、胸のどこかで奇妙な納得が生まれるのを感じた。


 アイリスは、一人で責任を負った方が強い。

 あの人はもともとそういう戦い方の方が噛み合う。自分の身体感覚を前へ出し、敵のリズムへ単独で噛みつく方が、複数前衛で歩幅を合わせるよりも深く入れる。もちろん危険だ。だが今回の敵には、その危険の方が正しい。


 一方でロクサーヌは、確かに一人で前へ立てる。第13防衛区ではそれを誰よりも見た。けれどだからといって、常に単独前衛が最適とは限らないのではないか――と、イーサンは思う。


 ロクサーヌの火力は本来、誰かが作ったズレや、誰かが削った条件の上に落ちた時、一番意味を持つのではないか。


 鎌鼬戦でもそうだった。セラフィナが動線を焼き、ノクティアが意識を逸らした一瞬に、ロクサーヌは最大火力を通して全てを終わらせた。もっと言えば、バシリスク戦だって、最終的には同じ盤面だった。


 あの人は前で一人で立てる。

 でも、他者と連携した時、その火力はさらに「意味」を持つ。

 それは弱くなったということではない。

 戦い方が、一段成熟してきているのかもしれない。


 そう考えて、イーサンはふとロクサーヌの横顔を見る。


 彼女は明らかに不満そうだ。唇の端が少しだけ固く、視線は戦術図へ刺さるように向いている。だが同時に、反論を押し通してはいない。気に入らなくても、合理性があるなら飲み込む。その変化もまた、イーサンには見えていた。


 アイリスは逆だ。

「単独前衛、か。なら好きにやれるってことだろ」


 声が弾んでいる。危ういほど素直だ。だが、こういう配置の方がこの人は本当に強いのだと、イーサンにもわかる。守るべき後ろが少なくなれば、アイリスはもっと獣らしくなれる。責任を一人で背負う方が、むしろリズムが合うタイプなのだ。


「好きにはやらせない」


 アストラが即座に釘を刺す。

「噛み合って初めて意味がある。単独で勝てる相手じゃない」


「わかってるよ」


 アイリスは笑う。だがその笑いには、怖れより高揚が勝っていた。


 イーサンは喉の奥で小さく息を吐く。

 たぶん、これが正解だ。

 少なくとも今の時点では。


     *


 輸送艇がミニヤ上空へ入る。


 窓の外が赤くなり始めた時、誰も言葉を発しなかった。

 最初は夕焼けかと思った。

 だが違う。炎だった。


 ミニヤの鉄道網が、下で燃えている。


 何本もの線路が、夜の中で赤い筋になって伸びている。駅へ集まる分岐点のあたりでは貨車が横倒しになり、列車の一部が黒い影になって固まっていた。大きな駅舎が一つ見える。ガラスと鉄骨で組まれた古い時代の巨大駅だ。その片翼が崩れ、ホーム屋根の一部が火に呑まれ、周囲の補給設備と待避線が連鎖するように焼けている。


 都市の血管が燃えていた。

 ただ施設が壊されているのではない。人類圏の機能そのものが、赤く裂かれている。


 輸送艇の内部に、戦闘前の緊張が満ちる。


 イーサンは窓の外の炎を見つめながら、アシュートの死んだ灰と、このミニヤの燃える火が、同じ敵の別の顔であることを理解していた。


 調査で見えた本質。

 更新された戦術。

 アイリス単独前衛。

 ロクサーヌ補助火力。

 そして本物のウェプワウェト。


 もう、試験ではない。

 輸送艇は燃え盛る鉄道網と巨大駅を見下ろしながら、静かに高度を落としていく。

 その光景を前に、誰ももう余計なことは言わなかった。

 炎だけが、ミニヤの夜の中で異様に明るく揺れていた。

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