表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

PRAYER 06 Fetish&Punish

――19時頃/アーク・リットのリシェルの寝室――

鏡の前で、彼女は「店長リシェル」を脱ぎ捨てていた。

後ろでリボンのように結ばれた髪はそのままに、頭上には派手な装飾が施された小さなシルクハットを斜めに被る。フォーマルベスト、裾や袖からは幾重にも重なったフリルが夜風にひらひらと舞う。首元には、黒のチョーカー。そしてマスカレードマスクに着替えた。

 

 ――20時頃/劇場の屋根の上――

そしてその手には、月光を照らされて鈍く光る巨大なトマホークが握られている。

 隣には、無機質な仮面を被り、重厚なトレンチコートに身を包んだモスの姿……いや、助手のワッツがあった。

「さてさて、ハリソンはチケット入りの手紙を受け取ったみたいだね。やっぱりテルールから貰ったチョコ入れといてよかったね。」

 「ええ。まさかあのパティスリーの常連だったとは。話が早かったですね。ルビクさん宛の手紙を送るだけで済みました。」

 

 ――数時間前/パティスリー・ル・フレール――

「こんにちはー!チョコの仕入れに来たよー。」

 気の良さそうなヒゲのおじさんのルビクは有名なパティスリーでアーク・リットのパン・オ・ショコラのチョコを提供している。

「おぉ。来たねリシェルちゃん。ちゃんと頼まれた数、用意してるよ。」

「いつも、ありがとう。……聞きたいんだけど。このチョコレートっておじさんの店のだよね?」

 リシェルはテルールから貰ったチョコを取り出した。

「あぁ。そうだね。常連の銀行員課長の特注ブレンドだ。結構甘党でね。こだわり強くて最初は苦労した。」

――――――――

 

「準備はいい?ワッツ。」

「ええ。……Ms.リッパー」

リシェルとモスは目を合わせ頷いた後、トマホークを爪でなぞり笑みを浮かべる。

「さあ、……殺っちゃおうか♡」

 

劇場は、夜の公演が終わり、静寂に包まれていた。

だが、その奥、観客席の真ん中には、一人で酒瓶を抱え、酔い潰れるハリソンの姿があった。胸ポケットの『A.S』のハンカチを握り締め、不気味に笑っている。

「……素晴らしい夜だ。この公演もぉ……あの女もろぉ……全部私の為と思えばぁ……」

 

「それ、名案だね。でも、あいにく今夜の演目は終了。こっから二次公演だよ。」

死神の囁き声が聞こえる。

ハリソンが驚いて顔を上げると、そこにはフリルを揺らし、巨大な斧を肩に担いだ「Ms.リッパー」が、目の前の客席の上に立ち彼を見下ろしている。

 

「だ、誰だ貴様……。」

 リシェルは椅子の上でしゃがみ、ハリソンと目線を合わせた。

「私は『Ms.リッパー』……貴方を裁きに来た死神だ…。」

 トマホークの刃先をハリソンに向ける。

 

「殺っちゃおうか♡ Ms.リッパーが、あなたの罪、食してあげる。」

 『Ms.リッパー』……その名前を聞いたハリソンは酔いが覚めて慌てふためいた。

「……は?!み…みみ、Ms.リッパー!……イーストエンドの死神……!わ、私を殺しに来たのか……?!」

ハリソンは思わず逃げた。ハリソンは椅子を掻き分け…舞台までよじ登る…幕の裏を回り込み舞台裏に移動した。

「まぁ……そりゃ逃げやるよね。」

 

 リッパーはハリソンを追いかけた。その逃げ込んだ先

……ハリソンはその場にあった銃を構える。

「ハハッ!……この劇団はな、本物にこだわる。だから銃もレプリカじゃなく本物だ……弾は趣味の関係で持ってるんだ……。」

 猟銃に弾を込めたハリソンは、……狩猟の経験を積んだ「狩人」であることの表れだ。

 

「死んでたまるか……貴様がくたばれ!」

狭い劇場内に、耳を劈く轟音の銃声が響き渡る。

「――っ!」

リシェルは思考よりも早く動き、巨大なトマホークを顔の正面で突き立てて銃弾を正面で両断する。

 

 キィィィィン!

 

 火花が散り夜の静寂を切り裂く金属音が響く。

「マジ? 銃とかずるくない。普通、こういう時って命乞いとかするもんでしょーが」

リシェルは着地と同時に唇を尖らせた。フリルの裾が焦げた硝煙の匂いを纏って揺れる。

「フハハ…勉強不足ってやつだ……。」

 (それにしても、コイツ銃弾を見切りやがったな……。)

ハリソンはリッパーを挑発しながらも内心では、馬鹿げた身体能力に戸惑っていた。

 

「もー、面倒くさいなー! 銃相手は疲れるからやなんだけどッッ!」

リシェルはトマホークを構えて突撃した。

ハリソンは次弾を素早く装填し、再び構える。

 やはり、猟をしてるだけあって、生き抜き方は熟知している。適切な距離を保ちながら銃を放ち。弾を装填する。

 しかし近距離ではリシェルの方が強い。ハリソンも銃でトマホークを受け止め抵抗しては逃げる。だがリシェルは追うようにハリソンに近づく。

 

しかし……ハリソンが彼は気づいていなかった。

彼の足元、かつて奥さんを葬った「舞台装置」の真上に誘導されていることに。

「ねぇねぇ……?ハリソンさん。あのバラードにかかってる紐……外して重りつけたら、どうなるかなぁ?♡」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ