幼馴染と雨の日
学校で授業を受けている時、ふと外を見るとさっきまで晴れていたのに雨が降ってきていた。天気予報では雨が降るなんて言ってなかったのに、傘がないから帰りは濡れて帰らないと駄目なのか。
すると胡桃と目が合う。傘を忘れた事に気付いたのか、鞄から折り畳み傘を見せてきた。俺が忘れたのを知っててやってるのかな。
昼休み。今日は外で食べれないから、教室でお昼ご飯を食べる事にした。雨が降っていると何だか気分が落ち込むな。そう思っているところに、胡桃が来た。
「今日は元気?」
「朝までは元気だったけど、雨のせいで気分が落ち込んでるところ」
「雨の日だってたまにはいいでしょ」
「よくないよ……あっ授業中に見せてきたあの傘は、何のつもりだ?」
あの時見せてきたのは、俺が傘を忘れたのを知ってて嫌味なのかと思った。だがどうやらそれは違うようで。
「あー、あれは一緒に帰るとき傘に入っていくかなって」
「えっいいのか!」
「もちろんだよ! でも折り畳み傘だから小さいけどね」
「肩くらいなら濡れてもいいから、入れてくれたら助かる」
「いいよ! じゃあ私は友達とお昼食べてくるから、また放課後ね!」
「うん!」
それだけ言って女友達のところに胡桃は戻っていく。前に言った通り、ちゃんと友達とも一緒に食べる日をつくってるみたいだから良かった。
放課後。下駄箱で待っていると、胡桃が走ってきた。
「ごめんね、少し遅くなっちゃって」
「大丈夫だよ」
「じゃあ帰ろっか」
折り畳み傘を開いて、外に出る。
相合傘をしてたら、同じクラスの生徒に見られて何か言われないかな。と思っていたが、そんな事もなくいつもの帰り道を歩いていた。雨が降る中、歩幅を合わせて歩いていると胡桃が口を開く。
「やっぱりさ、雨の日もたまにはいいね」
「そうかな、胡桃のおかげで頭は濡れないけど靴はびしょびしょになりそうだよ」
「靴は明日にでも乾かせばいいでしょ。私が言ってるのは、相合傘ができて良かったって事なのに……」
「何か言ったか?」
「何でもない!」
雨の音でたまに胡桃の声が聞こえなくなる。何だか怒ってるみたいだけど、聞き逃したらまずかったかな。
黙ったまま数分歩いていたら、突然こんなことを言ってきた。
「ねえ私が気になってる人が誰か教えてあげようか?」
「えっいいのか」
「うん! じゃあ少し傘持ってて」
「おう」
そう言って傘を渡されると、傘から出た胡桃が数歩、歩いて振り返る。
「私が気になってる人は、一也だよ!」
「えっ今、俺の名前……」
自分の名前を言ったような気がして、動揺していると少し濡れてしまった胡桃が戻ってくる。傘に入ってきて笑顔で話しかけてきた。
「どう聞こえなかったでしょ?」
「えっ、うん聞こえなかったかな」
「ふふっでもちゃんと言ったんだよ」
「そ、そうだったのか」
「また今度教えてあげるね!」
その後も雨の中を二人で帰っていたが、胡桃が言った気になる人が頭から離れなくなっていた。
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