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社畜おっさん、異世界で子育てはじめました~拾った娘が可愛すぎるので、世界一のパパを目指します~  作者: 空月そらら


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第19話 崖下の奇跡

 紫色の瘴気を突き破り、前方の巨大な木々をへし折りながら、三つの巨大な影が姿を現した。

 

 体長は五メートルを優に超え、全身の筋肉が岩のように隆起した豚頭の怪物。


 手には俺の背丈ほどもある血塗られた大鉈を握っている。

 

 ただのオークではない。


 魔境の瘴気を吸って凶悪な突然変異を遂げた上位種、『ヘル・オーク』だ。

 

 奴らは侵入者である俺を認識すると、醜い口から涎を垂らし、凶悪な殺意を放って突進してきた。

 

「邪魔だ!!」

 

 俺の口から出たのは、恐怖でも警戒でもなく、ただの純粋な「怒り」だった。

 

 武器を抜く時間すらも惜しい。


 俺は走り続ける勢いを一切殺さず、右の拳を背後に大きく引いた。

 

「『剛腕の極意アームズ・マキシマム』! 『破壊のルーン(デストロイ・エンチャント)』!」

 

 己の右腕に、考え得る限りの凶悪な攻撃支援魔法を重ねてブチ込む。

 

 バチバチと赤黒い放電現象を引き起こすほどに魔力を圧縮させた拳を、俺は先頭のヘル・オークのどてっ腹に向けて、一切の容赦なく叩き込んだ。

 

 ドゴォォォォォォォォォォォンッ!!!

 

 爆発が起きたかのような凄まじい轟音が魔境に響き渡る。

 

 五メートルを超えるヘル・オークの巨体は、俺の拳から放たれた衝撃波によって文字通り粉砕された。


 硬い皮膚も、岩のような筋肉も、紙くずのように弾け飛び、血の雨となって背後へ吹き飛んでいく。

 

 俺の拳の威力はそれだけでは留まらなかった。

 

 粉砕された一匹目の肉片は後続の二匹を巻き込み、さらにその後ろにそびえ立っていた樹齢数千年とも思える巨大な魔樹を十本以上もまとめてへし折り、森に一直線の巨大な道を物理的に開拓する。

 

「そこをどけええええええッ!!」

 

 俺は咆哮を上げながら、魔物の残骸と倒木を踏み越え、さらに森の奥深くへと突貫する。

 

 次々と俺の気配に気づいて襲い掛かってくる毒竜や、巨大デーモンの群れ。


 本来なら数十人の精鋭冒険者が命懸けで戦うべき相手だ。

 

 だが、今の俺にとって奴らは道を塞ぐただの障害物でしかない。

 

「退け! 退け! メリアの邪魔をするな!!」

 

 俺は自身に支援魔法をかけ続け、両拳を嵐のように振るって凶悪な魔物たちを次々と粉砕していく。

 

 魔術の探知が効かないのなら、この魔境の木をすべてなぎ倒してでも見つけ出してやる。


 俺は森の地形そのものを物理的に破壊し、強引に開拓しながら、血眼になって光草の反応を探し続けた。

 

 そうして、己の魔力も体力も度外視した狂気の蹂躙を続けながら歩を進めていると――。

 

 極限まで張り巡らせていた探知魔法の網に、一つの特異な反応が引っかかった。

 

 瘴気にまみれたこの森の中で、そこだけが不自然なほどに清浄で、神聖な魔力を放っている。

 

「……見つけた」

 

 俺は魔物の群れを蹴散らし、反応があった方向へと急行した。

 

 たどり着いたのは、森の最奥部にある、底が見えないほど深く切り立った巨大な崖。

 

 俺は躊躇うことなく崖の縁から身を躍らせ、落下しながら壁面を蹴って勢いを殺し、崖の底へと着地する。

 

 じめじめとした冷たい空気が漂う崖の底。

 

 そこは、濃密な瘴気がなぜか晴れており、岩の隙間からわずかに差し込む光を浴びて、一本の植物がひっそりと自生していた。

 

 七色に淡く、美しく輝く葉。

 

 間違いない。魔力の暴走を鎮めるという特効薬の材料――『光草』だ。

 

「ハァッ……ハァッ……あった……!」

 

 俺はその輝きを見た瞬間、張り詰めていた緊張が少しだけ解け、膝から崩れ落ちそうになった。

 

 異常な速度での長距離移動と、絶え間ない支援魔法の重ね掛け、そして魔物たちとの連戦。


 いくらチート級に身体を強化しているとはいえ、その疲労と魔力消費は尋常ではなかった。

 

 全身の筋肉が悲鳴を上げ、呼吸は乱れ、焦りと疲労で息がひどく切れている。


 額からは大粒の汗がボタボタと滴り落ちていた。

 

 だが、俺は震える足に鞭打って立ち上がり、光草の前へとゆっくりと歩み寄った。

 

 傷一つつけてはならない。


 成分が損なわれれば、メリアの命に関わる。

 

 俺は荒い呼吸を必死に殺し、全神経を指先に集中させた。


 あれほど凶悪な魔物を容赦なく粉砕してきた両手が、今はまるで壊れ物を扱うかのように、極限の優しさと繊細さをもって動いている。

 

「……よし」

 

 俺は魔法で周囲の土ごと慎重に切り出し、光草を根から完璧な状態で丁寧に採取した。

 

 淡く輝くその草を、特別製の保存箱にそっと納め、マジックポーチの最も安全な領域へと収納する。

 

「よし……! 待ってろよ、メリア。今すぐ帰るからな」

 

 俺は深く息を吐き出し、乱れていた呼吸を整えた。

 

 崖の底のじめじめとした冷気を肺に満たし、再び体内の魔力回路に極大の火を灯す。

 

 膝を深く曲げ、地面の岩盤がひび割れるほどの踏み込みを見せようとした、まさにその矢先のことだった。

 

「……キュゥゥン……キャウンッ……!」

 

 ピタリ、と。俺の足が止まった。

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