第10話 崩れ始めた『輝きの剣』 パーティー視点
暗闇の森の中、湿った丸太を断ち切るような、鈍い斬撃の音が響き渡った。
戦闘を繰り広げているためか、氷の指で肌をなぞられているかのような感覚に陥る。
なにせ、奴は俺の知っている普通の魔物ではないからだ。
――ガギィン
「くそ!」
剣が皮膚に入らない。
まるで岩壁に刃を押し付けているかのようで、力を込めてもビクともせず、俺の手だけがガタガタと震えていた。
「おい! なんでこんなにオークが硬いんだ!?」
俺は『輝きの剣』のリーダー、ライズ。
ガルドを追放し、あれから俺たちはパーティーの依頼としてオークの討伐に出ていたが、予想外の状況に追い込まれていた。
何度剣を振っても、まるで生きた鎧を斬っているかのような感触ばかりが返ってきて、奴の皮膚には傷の一つすら刻めない。
「ちょっとこのオークおかしいわよ! 私たちの攻撃がまるで効いてない!」
レーゼが堰を切ったように声を挙げる。
確かにその通りだ。
俺の斬撃なら、紙を裂くように奴を容易に切り伏せられるのに。
今回ばかりは違う。
俺の斬撃は岩壁に刃を叩きつけているかのようで、効いている素振りすらない。
レーゼは俺たちに治癒魔法をかけてくれるが、これじゃあジリ貧だ。
なんなんだ?
俺たちの攻撃がここまで効かないなんてことがあったか?
俺は煮えたぎる鍋のような苛立ちを募らせながら、指示を飛ばす。
「ユーザ! 盾を使って前衛を頼む! それとエルサ! お前は後方から魔法で攻撃しろ!」
俺が指示を出した瞬間、ユーザは城門のように盾を構えて、オークの棍棒に備えた。
次の瞬間、鐘を打ち鳴らしたような轟音が森に鳴り響き、盾を地面へと食い込ませる。
エルサは杖を高く揚げ、詠唱を紡ぎながら、魔力を練っていった。
よし、これならあのオークだって、砂の城みたいに崩れ落ちるはずだ。
大丈夫、これならいける。
今のところ、俺の経験にないことが起きているが、大丈夫だ。
「よし、やっちま……え」
俺の視界に飛び込んできたのは、信じられない光景だ。
オークの棍棒は、破城槌のような重さで、ユーザの盾を叩き砕き、その体を、木の葉ごとく吹き飛ばしたからだ。
ユーザは吹き飛ばされた勢いのまま、地面に何度も転がっていく。
それを見たレーゼは、まるで時が止まったかのように、呆然と立ち尽くしていた。
あんな簡単に吹き飛ばされるなんて聞いてないぞ?
まるでオークは子供と戯れているかのように、余裕たっぷりで棍棒を振り回している。
いつものユーザなら、あんな大振りの一撃なんて難なく防げていたのに。
「ちょ、ちょっと!? どうなってんのよ!?」
レーゼが悲鳴を上げて、すぐさまユーザの元に駆け寄る。
まずい、この状況だと、今俺の後ろにはエルサが魔力を高めている最中だ。
「エルサ! さっさと魔法を放てよ! もう目の前まで来てるぞ!」
「だ、だけど、まだ魔力が集まって......」
「いいから早く放て!」
俺の切羽詰まった焦りが伝わったのか、エルサは不機嫌そうに眉をひそめながらも、魔法陣を展開し、魔法を放った。
エルサから放たれた魔法は、唸りを上げる巨大な火の玉となって、一直線にオークへ向かっていく。
あれを喰らえば、流石のオークでも極熱の火に焼かれて死ぬだろう。
はは、これでやっと奴はくたばるはずだ。
「ゴウ?」
オークは首を傾げる。
なんだあいつ、もしかして諦めたのか?
くくく、なんて情けない奴だ。
俺はニヤリと笑っていると、オークは棍棒を振りかざし、放たれた火の玉を叩きつけた。
「へ?」
俺は間抜けな声が出てしまう。
いやいや、どういうことだ?
火の玉が、消えた?
俺の視界に映っているのは、棍棒で叩き落とされた火の玉が、ジュウジュウと不快な音を立てて、周囲を焦がしている。
焦げた土の匂いが鼻を突いた。
「おいおい、どうなってんだよ」
俺は恐怖に呑み込まれ、膝がガクガクと震えてしまう。
オークは口元を吊り上げて、棍棒を持ち、ズシンズシンと、地を鳴らしながら巨体が迫ってくる。
「は、早く逃げましょう!」
俺が呆然と立ち尽くしていると、後ろにいたエリサが声を張り上げた。
俺はその声でハッとし、震える膝を動かしながら、レーゼに指示を飛ばす。
「レーゼ! このオークは俺たちじゃ討伐できない! 急いで撤退するぞ!」
「わ、分かったわ!」
レーゼはユーザの治癒を一旦止めて、逃げる準備を始める。
だが、ユーザは気を失っている為、運び出すのに時間が掛かりそうだ。
俺がそう思っていると、エリサが魔力を練り始めた。
「私が魔法で煙幕を張ります! 急いでください!」
エリサはそう言って、杖を再度上に掲げる。
彼女の杖からは、幾何学模様の魔法陣が展開され、中心からは禍々しい黒煙が広がっていき、オークを包み込んでいく。
「グオ!?」
オークが混乱している隙に、俺たちはもつれそうになる足を動かして、その場から離れていく。
「くそ……何でこんなことになるんだよ……」
俺は苦痛に顔を歪めながら歯を食いしばり、オークに背を向けて一目散に駆けるのだった。
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