↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/62

51話 街の昼下がり

お待たせしました。四章開始です。

 太陽が中天に輝く昼下がり、石とレンガで舗装された大きな道を歩いていると食欲をそそる匂いが漂ってくる。肉を焼く屋台が多いのは肉体労働者が多くいる地区だからだろう。

 スラム街では樹の皮よりはましと言われるゴブリンの肉で出来た肉団子のスープや石のように硬い黒パンにはさまれたケバブの様な料理が売られているが、この辺りは街の大通り。人の手で飼育された豚や牛といった一般人が食べている肉を使った料理もあるが、オークやミノタウロスといった冒険者が買っていく高値で肉質も上等な料理もある。どれを買っても後悔はしないだろう。


 冒険者として討伐依頼を日帰りで終わらせて街に帰ってきた少年もお昼ごはんとして何を買おうかと物色していると、屋台の陰に見慣れた魔女の帽子をかぶった少女がうずくまっているのが見えた。


「また金を使い切ったのか?だとしても乞食の真似はみっともないぞ」


 アレットの声にびくんと跳ね上がるように大げさな反応をする少女。振り向いてくる顔は恥ずかしがるように真っ赤になっていた。


「ア、アレット!違いますからねこれは!このお姉さんが何やら困っているようなので、天才であるこの私が手伝ってあげているだけなのです。そのお礼として、売れない切れ端を受け取ってあげるだけですから」


 アレットと最近よくパーティーを組んでいる魔術師の少女ミアは言い訳するようだった。


「そ、それにほら。このとおり野草も拾ってきましたから、今日の夕飯は期待してくれていいですよ」


 そういって広げてみせてきたカバンの中には食べられる草と知られる野草が入っていた。優秀な冒険者として大金を稼いでもすぐに使い切ってしまうこの世間慣れしていない少女を拾ってから約一か月。同じ家に住んでいるのだから何か家事を手伝ってくれと言ったら食事を作ることにしたようだ。

 だとしても出費を抑えて食材を買うのではなく野草を拾ってくるのは想定外だが。


「いやアレットにそんなにブツブツ言われるのは心外です。あなたは何故かお金持ちなのでお金の心配はいらないのでしょうが、私は教義上の理由でお金は私利私欲のために使ってはいけないのですよ」

「ミアが万年金欠なのは教義上の理由じゃなくて、珍しいマジックアイテムを買っちゃうからだと思うぞ。そのせいで貯金も出来ずにアイテムポーチも買えていないだろうに」

「まあ……それは認めます……アイテムポーチ便利ですよね、空間が歪曲していてあんなに小さいカバンに宿の一部屋並みの収納スペースがあるんですから。十年前はごく一部の高位の錬金術師しか作れず、それも国や軍隊が確保してしまうから私たち一般人には目にする機会もありませんでしたのに、カナロア商会が販売してくれたおかげで私たちもそれなりに気軽に入手できるようになりましたし」

「ほしいなら一つ上げるぞ?」

「だからだめです!私を甘やかすのは禁止だと何度言えばわかるのですか!」


 なら貯金しろという意味を込めてじとりとした目で見つめると、ミアは自覚があるのか目が左右に揺れている。


「た、たしかに私は貯金とかしませんし、稼いでも協会に寄付するかマジックアイテムを買うかに使ってしまいますが、すべて私の魔術に必要なことなのです」

「それはしっているけど、ミアの水属性魔術を使った予知魔術って俺は詳しく知らないんだが……本当に教える気はあるんだろうな」

「もちろんです!ただ、私の予知魔術は私たちの一族がだいたい受け継いできた秘術なので、そうそう教えるわけには……」

「分かっているよ。教えてくれる気になったらでいいって話でお前を拾ったからな……失礼、一つ下さい。じゃあ先に帰っているからな」

「ええ。またお家で」


 串焼きの屋台のお姉さんから買わないなら帰れという視線を受けてお昼ご飯を購入し、アレットは借家に帰っていった。





 帰り道でふと振り返り、もう見えないミアを見つめる。


(あいつとは、長い付き合いになるだろうな)


 その姿に、もう五年はあっていない家族をどこか思い出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 新キャラや― [気になる点] 意思のように硬い黒パン 精神によって硬さのかわるパンかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。