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沈んだ船の後継者  作者: ライブイ
2章 風の都と呪われた弓使い
29/62

27話 神弓

26話を加筆修正しました。ストーリーには影響しません。

 風の都トルシス。その南西の城壁の上に一人の女性が立っていた。

 顔立ちは非常に整っており、背は長身で髪は腰に届いている。体つきは細く豊満で、防具は身に着けず、武器屋で纏め売りされていそうな弓と矢を背負っている。


 女性が矢を弓につがえた瞬間に空気が一変する。

神々しいと例えられる緑色の魔力が空間を満たしている。耳のとがった女性が弓を構え、矢をつがえる。女性を中心に魔力が広がり、矢に凝縮されていく。足を開き、腕を引き、遠く離れた森に向かって弓を引く。


「【弓神魂散】」


 矢は森に向かい一直線に飛んでいき、空中で爆散。神々しい輝きを放つ無数の魔力の矢となり地面に向かい、森にある遺跡を粉砕していく。魔力の矢は地下深くにある地下空間までも粉砕する。


 アレット達が偵察だけして逃げ帰った巣穴が、たった一射で跡形もなく消滅した。





「やばいな。あの人。さすがは世界唯一のハイエルフにして、冒険者ギルドの創設者だ」


 そんな光景を、アレットは恐れ慄く表情で見ていた。


 アレットたちが潜入したゴブリンの巣穴は、質は一番強い個体でも相手が一体ならば負けない。数は圧倒的に相手のほうが多いという、アレットたちでは逃げ帰ることが精いっぱいの強敵だ。冒険者でいえばB級冒険者が一人でギリギリだろう。


 そんな魔物の群れを相手に、街からの狙撃、しかもたったの一射で殺しきるなど、アレットにはどれだけ実力が離れているのか想像すらできない。


「すごかったねー」

「……噂でも過小評価」


 一緒に見ていたソフィアとモアナも、彼女を否定する言葉は出てこない。


「初めて目にしたが、さすがはヘレナ様だ!」

「美しいだけではなく街から魔物を射抜くなんて、まさに守護神のようなお方だ」

「私もいつかヘレナ様みたいになりたい!」


 アレット達だけではなく、周囲にいる民衆からも褒め称える言葉しか出てこないが、それも当然だろう。


「いった通りすごい人でしょ。ヘレナ様」

「ええ。彼女を主役とした演劇が多くあるというのも納得ですね。ところで俺は特に聞いていないのですが、巣穴を破壊してしまっていいのですか?跡形もなく吹き飛んだら、素材の改修も出来ないですけど」

「さあ?冒険者ギルドがそう決めたなら何でもいいわよ。報酬が減るわけでもないんだし」


 アレットは今日のことを教えてくれたリリアーヌと別れ、冒険者ギルドで事の顛末を聞いていた。


 アレット達の報告を聞いた冒険者ギルドは現在依頼できる冒険者では、解決できるものは一人もいなかったのだ。冒険者は危険と隣り合わせの職業とはいえ、まず間違いなく死ぬ依頼を引き受ける冒険者はいない。

 では街を運営している貴族の戦力ならばどうかと考えたが、不可能だった。というのは、そもそも素材が目的ではなく魔物の駆除を目的とする依頼は、基本的に街を運営している貴族から冒険者ギルドに依頼される。貴族から降りてきた依頼の解決に貴族の戦力に期待することはできない。

さすがに魔物が街に進行してくればそんなことは言っていられないが。


 しかしこの風の都トルシスに限れば、最後の手段がある。

 冒険者ギルドの創設者である神弓のヘレナ。彼女に依頼するのだ。


 ヘレナは千年前の大戦で生まれた英雄であり、冒険者ギルドの設立者。現在の各国にも多大な影響力がある人物だが、故郷の森に隠居するわけでも、大国の支配階級にいるわけでもない。比較的安全で平和なトルシスに暮らしている。

その理由は不明だが、彼女は様々な勢力に向けて自分の力を示すために魔物退治をしている。


 そのため今回のゴブリンの変位種に謎のデーモン大量発生は力を示すためには持ってい来いだ。


「それでヘレナ様が解決することになったと」

「ええ。彼女一人いればすべてを解決できますからね」


 神の御業にしか見えない一射を直接目にしたのだから、その評価も馬鹿にできない。叶うものなら教えを請いたいものだ。千年以上生きている人物なら国も誕生も滅亡も体験しているだろうし、弓術の腕を磨きたいし、アレットの故郷の船を再建するという遠い目標にも近づくだろう。


「ヘレナ様に会ってみたいのですが、居場所を教えてもらえませんか?」

「いいですよ」


 いいのかよ。アレットは反射的にそう返した。


「ヘレナ様の自宅は誰でも知っていますし、彼女は普段は後進の育成をしています。冒険者ギルドが運営している冒険者学校の最高教官もしているので、自宅まで行けばいつでも教えてもらえますよ」


 アレットは天啓を受けたような衝撃を受け、冒険者ギルドを飛び出した。


「ただ彼女の理論は分かりやすいのですが、指導を受けた教え子たちは口をそろえて二度とここには来ないという程厳しいので、そこは気を付けてくださいね。……ってもういない」





「家が独創的すぎる。エルフ式の家なのかな」


 アレットは乗り気ではない二人の首根っこをつかみながら家まで来てみると、その家は樹木に覆われたものの太陽の光が差し込む暖かな家だった。


「カギはかかっていませんよ。入ってきてください」


 アレットが扉をたたくと、優し気な声が響く。二人は先ほど見た一射を思い出し顔をこわばらせたが、アレットは構わず扉を開く。


「いらっしゃい。かわいい子供たち。今日は何の御用かしら」


 そこにいたのは、城壁に立っていた美しいエルフの女性だった。一射で遺跡とその地下を消滅させた神のごとき力を持っていることなど感じさせない。だがそれは彼女が弱いわけではない。


(この距離で見ても強さが分からない。島で見たシエほどじゃないけど……。いや、数値ではそうでも、弱体化していない分この人のほうが強いかもしれない)


 アレット達はヘレナを絶対的な上位者として本能が認めていたが、今日は修行つけてもらいに来たのだ。


「ふむ。後ろの二人も同じですか?」

「はい。私もいい経験かなって」

「……死なないのなら、戦っておきたい」

「なるほど、血気盛んかつ上昇志向が強い。大変好ましいことです。では早速戦いましょう」


 この後彼女の教え方は厳しすぎるということを、アレット達は思い知ることになる。


最近ストーリーの整合性を調整するのに気を取られて、自分の書きたいものをかけていない。文力上げたい。

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