24話 危険の多い魔境であれど
「あっ、この依頼なんてどう?ゴブリンが大量発生したから原因を見つけてほしいって。これ、この間私たちがゴブリンをたくさん持ちこんだのと関係あるんじゃない?」
ある日アレット達は冒険者ギルドに依頼を受けに来てみると、さっそくソフィアが依頼書を勝手に持ってきた。
依頼書を読んでみると、たしかにアレット達が冒険者登録した次の日に大量のゴブリンを持ち込んだが、その原因が見つかっていないのだろう。
(絶対見つかっていると思ったけど、まだ見つからないのか?冒険者だけでなく、増えすぎれば貴族が何かしら手を打つと思っていたけど)
アレット達が大量のゴブリンの素材を持ち込んでから一週間もたっていないが、アレットはてっきり上位の冒険者が巣穴を見つけ出し駆除したものだと思っていた。
そうでなくともゴブリンは人間を害するための生き物の象徴の様なものだ。駆除するまでの時間が延びればそれだけ害をなすので、この街の領主の評判も落ちる。
上位の冒険者を数人派遣して則殲滅。それができなくても貴族の騎士団が解決している。そう考えていたが、あのキノコの森とかいう魔境はそんなに入り組んでいるか、ゴブリンたちがよほどうまく隠れているのだろうか。
「ほら、アレット君のスキルなら見つけられるんじゃない?たしか【知……むがっ!?」
「こんなところでスキル名を言うな」
他にも冒険者がいる冒険者ギルド内でスキル名を暴露しようとしたソフィアの口を頭突きで塞ぎつつ受付に向かった。
「これは事後報告でいいので受付で受理する必要はないですね」
「え?本当ですか?……ランク不問としか書いてませんけど」
「依頼書には書いていませんけど、通常の依頼とは別の場所に張ってあるんですよ」
アレットがソフィアを見ると、ソフィアはそっと目をそらした。
アレットはため息をついた。
「申し訳ありません。こちらの確認不足です」
「いえいえ、他の冒険者の方々でも結構あることなので、誤っていただかなくても大丈夫ですよ」
結構あることなのかよ。アレットはそう思ったが、依頼書がいかにも安物の紙に書かれている時点で依頼書事態に対した価値はないと気が付くべきだったかもしれない。
「ですが気を付けてくださいね。キノコの森は奥に行けば状態異常攻撃をしてくる魔物が増える危険な魔境です。ゴブリンたちもそこに巣穴を作ってのならば、なめてかかってよい相手ではありません。止めることはできませんが、しっかり準備してから行くこともおすすめします」
アレットは反射的になめられていると感じたが、その言葉にはこちらを心配してくる気配しか感じなかった。
そのためアレットも嘘偽りなく言葉を発した。
「ご心配ありがとうございます。ですがこれでも腕に覚えがあるので大丈夫ですよ」
「……本当に、しっかり準備をして、気を付けて、行ってきてくださいね」
むしろより深く心配されてしまった。
アレットたちは全員が状態異常耐性や魔術耐性などを自信に付与するマジックアイテムを身に着け、装備の手入れをし、ポーションなどの回復アイテムを各自が持った状態でキノコの森に入った。
「【知恵の書】発動。地形を把握。把握範囲拡大」
そしてアレットはユニークスキル【知恵の書】の効果の一つである地形を表示する機能を発動した。
アレットの手の上に出現した本を開くとホログラムのように周囲の地形がどんどん表示され、範囲内の魔物の位置まで分かる。
「そうそうそのスキルだよ。【知恵の書】だっけ。巣穴見つかった?」
「いやそんなすぐには無理だよ。キノコの森の森全域を表示するには俺の魔力がまったく足りないから」
アレットのユニークスキルである【知恵の書】は常識外れの効果を持つが、当然発動には魔力が必要であり、地形を表示するならその範囲に応じて消費魔力も増えていく。今のアレットが安定して使うには、自分を中心に半径百メートルを表示するのが精々であり、上空や地下なども範囲外だ。
「それでも巣穴なんかの俺たちが目で見てもわかりにくい場所を見つけることはできるし、地道に移動しながら探してみるか。途中で魔物を倒して素材をはぎ取れば赤字にはならないだろう。
ところでモアナ、さっきから黙っているけど、どうかしたか?」
「……ぎくり」
アレットは森に入ってから黙っているモアナに声をかけた。物静かに無口な所はいつも通りだが、今日はどこか焦っており喋りたいが言葉が見つからないように見えた。
「そうだよモアちゃん。このあいだから一人で森に来ているみたいだけ、それと関係あるの?」
「最近ポーションの補給を頻繁に頼んでくるようになったけど、関係あるのか?」
「……二人とも、気が付いていたんだ」
モアナが一人で森に入っていたことは気が付いていたが、二人ともモアナの強さは知っていたので心配はしていなかったが、モアナの様子がおかしくなったので聞いてみたら、なぜかモアナが拗ねたような顔をした。
「気が付いていたけどモアナも言うべきことがあれば言うだろうし、心配はしていなかったよ」
「うんうん。モアちゃんは強いから私も心配はしていなかったけど、仕留めきれなかった魔物でもいたの?……え?本当にいたの?」
ソフィアの言葉にモアナは表情が高くなり、本当にそんな強い魔物と遭遇していたのかとソフィアは驚愕した。
「仕留めきれないってことは、最低でもモアナより強いってみるべきかな」
「……うん。強くはないけど、とにかく大きくて厄介なキノコだった」
だから私のほうが強いのと言いたげなモアナとそんなモアナを心配そうに会話しているソフィアを見ながら、アレット索敵の範囲を追加した。
今までは自分を中心に半径百メートル、高さを一メートル程度の索敵だったが、高さを捨てて半径一キロメートルにまで拡大した索敵範囲を追加したのだ。
ついでに索敵の精度も捨てたが、モアナが言うにはそのキノコも魔物は胴体が十メートル程度はあったらしい。それだけ大きな生き物であればアレットも見落とすことは無い。消費魔力は増えるが魔力回復用のポーションを飲めばいい。安全のための必要経費だ。
「あ、一応いっておくけど、見つけても戦闘は避けるからな。」
アレットの言葉に再戦を期待していたモアナだけでなくソフィアも驚いた顔をした。
「……遭遇したら戦うと思ってた。私たち三人なら絶対倒せる」
「モアちゃんが一人で倒せないなら、ランク6くらいじゃないかな。難しいけど、殺せると思うよ?」
「俺も絶対に倒せないとは思わないけど、今回はゴブリンの巣穴を見つけるのが目的だからな。再戦は次回にしてくれ」
「……ぶーぶー」
「かわいく言ってもだめ、すぐに言わずに黙っていたのだから、また今度にしなさい」
「モアちゃん今ももう一回やって」
「……やだ」
アレット達は楽しくしゃべりながら遭遇する魔物を倒していく。
キノコの森の浅瀬。ランク2の狼と同程度の脅威ならば、おしゃべりしながらでも十分に対処できるのである。




