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沈んだ船の後継者  作者: ライブイ
2章 風の都と呪われた弓使い
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21話 冒険者

 冒険者の暮らし方を学ぶために初心者向けの草原に行き大量発生していたゴブリンを倒した次の日、アレットたちは冒険者ギルドを訪れた。


「昇格試験ですか?」


 そしてゴブリンを換金したときに担当してくれた受付が昇格試験を受けることができると言ってきた。


「はい。昨日の大量の討伐実績から昇格試験を受ける十分な実力があると判断されました」

「ええと、聞いた話によると昇格試験はD級からで、俺たちはG級なので昇格試験は無いと思っていたのですが。というか、十五歳までは昇格できないと聞きました」

「ええ、その通りです。しかし例外的に冒険者ギルドに実力を認められたものは昇格試験を特別に受けることができるのです」


 冒険者は成人とされる十五歳にならなければ昇格できないが、例外が存在する。


 その一つは冒険者学校と呼ばれる教育機関を卒業することだ。

 冒険者学校は冒険者を育成する機関であり、希望すればだれでも入学は可能だ。

生徒たちは冒険者ギルドから初心者用の武器と多少の金銭を受け取り、冒険者ギルドが提携している宿屋に格安で生活する。費用は冒険者学校を卒業し冒険者になってから払うことも可能なので、大抵の初心者冒険者は入学する。

 学校は単位制で、在学期間は最長で三年。必要な単位を取るか教官三名以上に実力有りと認められると卒業できる。


 この冒険者学校を卒業すると未成年でも昇格できる。


 そして二つ目の例外として、冒険者ギルドに実力を認められことだ。

 最下級のG級冒険者であっても等級制限のない依頼を受けることができる上、魔物を倒し換金することに冒険者の等級は関係しない。冒険者ギルドに魔物を持ち込み実力が有ると判断されることがある。

 そういったものには冒険者学校の卒業試験と同等の試験を受けさせ、冒険者学校卒業と同程度かそれ以上と判断されると昇格できる。


未成年の昇格制限は、未成年は実力が不足しているため昇格させることは危険であるという最もな正論による制度であるため、実力があれば昇格させるのだ。


アレットたちは実力が十分にあると判断されたため、話を持ち掛けられたのだ。


 ちなみにアレットたちは冒険者登録したときに冒険者学校の話を聞き興味を持ったが、アレットたちが冒険者になったのは狩猟した魔物を換金するのに便利だからというのが主な理由なので、冒険者学校は保留にしてお金を稼ぎ生活できるようなら入学しようと話をしていた。


 冒険者になるための冒険者学校に通うために冒険者として活動するという逆転が起きているが、誰も気にしなかったのである。


 冒険者登録した次の日に「こいつらは冒険者学校の教官よりも強い」と判断されたため、冒険者学校に通うことは無くなったのだが。


 話を聞いたアレットは二人と相談して、昇格試験を受けることにした。


「それで昇格試験というのはいつ受けられるのですか?」

「今すぐでいいかしら?」


 突然後ろから声がかかり、三人と職員は驚いて声の主を見る。


「うふふ。ごめんなさい。話が聞こえてしまったの。冒険者学校の教官ならだれでもいいのだから、私が担当するわ」

「リ、リリアーヌさん‥‥‥。は、はい、問題ありません。お任せします」


 そこにいたのは赤い髪に杖をローブ姿の女性だった。見るからに魔術師といった姿で、アレットの目には優し気な美女と映った。


なぜか今までアレット達を受付していた職員の顔が引きつり憐れみの目線を向けてきたので、なにかあるのだろうか。厳しい人なのかもしれない。


 リリアーヌが三人を連れて訓練所に向かう。





「じゃあ三人とも兄弟じゃないの?」

「はい。私たちは最近知り合ったんです」

「俺は二人とも友達だと思ってますよ」


 昇格試験の前にリリアーヌから話題を振られ答えていると、アレットたちの関係をなぜかしつこく聞いてきた。


「仲がいいのはいいことよ。冒険者って言ってもパーティーメンバー同士で仲違いすることもあるわ。報酬の取り分で揉めたり、戦闘中に焦って味方に誤射して揉めたり、最悪味方と信じていた人から裏切られることもある。だから優れた武器や情報よりも、本当に信じられる仲間こそ大切にしなさい」


 先輩冒険者リリアーヌの言葉にアレットたちは心を打たれたかのように目を見開いて驚いていた。

 正確には魔女みたいな見た目をした優しくも怪しげな女性からまともな言葉が出てきたことに驚いていた。


「そうですね。知り合ったばかりで一緒にいる理由はないと考えていましたが、成り行きだろうと共に寝食を過ごし楽しいと感じるのだから、一生を共に過ごし支えあうのもべきなのかもしれません」

「そうだね。一緒に生活してこれからは旅立ってするのだし、アレット君もモアちゃんと同じくらい大切に思う日がくるかもしれない。三人で信じあえるようになりたいわ」


 アレットとソフィアは今まで仲のいい友達だが、あくまで一番近くにいる他人という一歩距離をとった関係だった。しかしこれを機にもっと仲良くなりたいと思い始めた。


「いやそこまで重い話じゃなくて、冒険者パーティーっていうのは仕事仲間なのだから、信用できない相手じゃなければいいというか……。仲が良すぎても問題が起こるというか……。ま、まあ、だいぶ先のことになるでしょうし、大丈夫よね」


 そんな二人を見ながら何か言っているリリアーヌが意識に入らない程度には心が燃え上がっていたのだ。

 二人とも単純なのかもしれない。


「……私はソフィアもアレット君もお世話してくれる妹と弟だと思ってるよ」


 しかし一瞬で我に返る信じがたい言葉が聞こえてきた。


「ちょっとまった、モアナ。俺も兄弟のように仲の良い間柄になりたいと思っているけど、その場合は俺が兄になるんじゃないか?」

「そうだよ、モアちゃん。今までずっと私がモアちゃんのお世話をしてきたんだし、私がお姉ちゃんになるんじゃないかな?」


 今まで黙ってついてきていたモアナが口を開いたかと思えば、何を言い出すのかと二人が強めに聞き返す。


「……今まで私はお世話されていたんじゃない。ソフィアと出会った最初はそうだったけど、二人がお世話したがっていたからお世話させてあげていたの。だから私がお姉ちゃんなの」


 なにダメ人間みたいなこと言い出しているのかこの猫娘はと言い争いが白熱していく。


 それを見ながらリリアーヌはこれは大丈夫なやつねと見えないふりをしながら三人を先導した。





「それじゃあ昇格試験を始めるわね。本来G級からF級に上がるのに基準はないようなもので、武技や魔術が使えなければ昇格できないのはE級からなんだけど、今回の貴方たちが受ける昇格試験はいわば特例だから少し厳しめになるわ。

 だから自分が主に使う武技や魔術、あとは戦技を見るのが主な内容ね。最後に実践形式の試験もあるわ」

「なるほど。俺たちは全員武技か魔術が使えるので大丈夫ですけど、戦技ってなんですか?」

「……知らないの!?」


 戦技というのは武術を使い戦う者たちが最初に学ぶ武術だ。魔術師が最初に学ぶ無属性魔術の前衛職版にあたる。


 主に【勇猛】や【狂化】、【痛覚耐性】などの精神に働きかける武技が使用できる。


 人間は基本的に戦闘能力が低い。肉体的な問題ではなく、精神的なものだ。

 人間は傷を受ければ痛みで動きが鈍り、相手を恐怖すれば動悸が激しくなり体が動かなくなる。腕の一本でも失えば戦意が消えうせ殺されるだけ。いくら傷ついても戦い続ける戦士たちもいるが、それはごく一部だ。

 それを解決するために千年前に生み出されたのが【戦技】と呼ばれるスキルだ。相手を倒すのではなく、自分の心を一時的に強くする武術だ。恐怖を打ち消し痛みを無くし、敵を倒すための勇敢な心を持つための武術。

 最初に戦技を覚えることで魔物と戦うための心を手に入れ、自分や武器に魔術を纏わせ発動する武技の使い方を学ぶのだ。


 アレットは人間社会とは隔絶された船で育ったため存在を知らず、モアナとソフィアは二人に戦い方を教えた裏組織が戦技の副作用である使用中は知能が低下し口が軽くなるという点を無視しきれず教えなかったため、三人とも使えないのだ。


 そんな事情を知らないリリアーヌは三人は今時珍しい武技による強化無しで魔物に立ち向かえる強い心を持っているのかと感心したが、規則なので取り合える戦技の使い方を教えることにした。


「武術や魔術が使えるってことは魔力操作はできるでしょうから、習得に時間はかからないと思うわ。戦技は自分の心や魂を包み込んで発動するけど、イメージとしては自分の全身を包み込むようにするのよ」


 三人は言われた通りにしてみる。三人とも魔物を前に恐怖を覚えそれを乗り越える感覚は体で理解しているが、それを武技で意図的に起こすとなると苦戦していた。


「今ここで覚えられなくてもいいわ。この分なら数日で覚えられるでしょう。じゃあ次の試験ね」

「戦技は使えなくても合格できるのですか?」

「ええ。要するに魔物と戦えればいいのだから、必須ではないもの。初心者は最初に覚えていた方が後々武術を覚えるのが楽になるってだけだから、もう武技や魔術が使える以上、必須ではないわ」


 その後アレットとモアナは【格闘術】と実演し、ソフィアも【風属性魔術】を見せ合格をもらい、最後に軽く打ち合い合格もらった。


 三人はF級冒険者に昇格した。




・冒険者の平均的なステータス


・名前:F級冒険者(前衛)

・種族:人種

・年齢:十代半ば

・称号:無し

・ジョブ:見習い戦士

・レベル:0

・ジョブ履歴:なし


・パッシブスキル

無し


・アクティブスキル

剣術:1Lv


・名前:E級冒険者(前衛)

・種族:人種

・年齢:十代後半

・称号:無し

・ジョブ:戦士

・レベル:0

・ジョブ履歴:見習い戦士


・パッシブスキル

筋力強化:2Lv

気配感知:1Lv


・アクティブスキル

剣術:2Lv

解体:1Lv


・名前:D級冒険者(前衛)

・種族:人種

・年齢:二十代前半

・称号:無し

・ジョブ:剣士

・レベル:100

・ジョブ履歴:見習い戦士、戦士


・パッシブスキル

筋力強化:3Lv

気配感知:2Lv

剣装備時攻撃力強化:1Lv


・アクティブスキル

剣術:4Lv

盾術:1Lv

投擲:1Lv


ジョブによって剣術が斧術や弓術、魔術になり、罠や連携などのスキルを所有している。育ちによって農業や漁業などを習得している。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 設定によって 無駄に戦闘中にしゃべるキャラの違和感がないのがいいです
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