18話 協会地区
日曜に更新したいんだけど、なんだかんだ火曜日になってしまっている。
「こっ、これはポイズンスネークの毛皮に氷狼の牙かい!?魔石もランク4相当だ!どうやってこんなものを?」
「村に元冒険家がいて、選別にくれました」
「なるほど!」
換金所で嘘ではないが詐欺といわれそうな言葉を吐きながらお金を手に入れた後、アレットたち三人は協会区画と呼ばれる場所に宿を探しに来ていた。
この世界で最も多く信仰されている光神教の協会があるためそう呼ばれ、協会が運営する孤児院、治癒院や医療院が存在するこの町で最も治安が良い場所だ。
安さを求めるなら他にもあるが、この世界では値段と安全性は比例する。そのため素直に門番の人に教えてもらった『赤鳥の宿』に向かっていた。
「それでどんな方法で誤魔化したの?あの受付の人は私たちのステータスを見ても反応してなかったけど」
「……私とソフィアは高いだけだけど、アレットはユニークスキルを持っているから、受付の人も顔に出るはず」
その道中で二人が首をかしげながら聞いてくる。
「あれは【思考存在】を使って幻覚を見せたんだよ。あの受付の人の目の前に……眼球のすぐ前に低いステータスを表示して誤魔化したんだよ」
二人はあっけに取られたような顔をした。そんな力技で誤魔化したのかと。
「そ……そんな行き当たりばったりだったの?」
「うん、そうだよ。……ああいや、一応勝算があると思ったからやったんだよ?このスキルで魔術みたいな現象を起こすだけじゃなく、幻覚を見せることも出来ることは分かっていたから。それに万が一失敗したら精神にも干渉して気絶させればいいかなって」
「いやそれ勝算って言わないから」
受付の職員が突然気絶しても、周囲は子供たちが大人を気絶させる特異な力があると考えるのではなく、職員の人に疲れがたまっていたのだろうと常識的な判断をするはず。そう二人に説明したら微妙な顔をされたが、最終的にはそういうものなのかなと納得してくれた。
「ここかな」
この教会地区は子供だけで出歩けるほど治安が良いため周囲から注目されることもなく、三人は宿を見つけ看板を見上げている。
看板には赤い鳥が描かれている。赤鳥の宿という名前をそのまま表している看板だ。文字でないあたり識字率が低いというのは本当なのだろう。
宿は四階建てとここまでみた宿と変わらない。一階が受付兼食堂で二階以上が個室になっている。宿としては一般的な作りだ。
扉を開けるとアレットが想像していた以上に宿は清潔だった。客商売だろうと地球と比べると薄汚れているようなイメージを持っていたが、的外れで失礼な想像だったようだ。
昼と夜の中間の時間だからか人がほとんど居らず、受付にアレット達より少し年上の少年がいるだけだった。
「いらっしゃい!お食事ですか?それともお泊りですか?」
宿に入った三人に受付の少年がそう声をかけてくる。
「泊りです。三人で、とりあえず一か月お願いします」
アレットの言葉を聞くと少年は笑顔を受かべながら頷いた。
「ありがとうございます!えーっと、宿は朝と夜の食事付きで一人一泊30ファム。一か月が30日なので三人で……2500ファムですね!」
「え?計算間違えてますよ」
「へ?いや同じ条件の人たちがこの値段だったから合っているはずで……ちょっと待っててください。かーちゃーん変わってー!」
受付の少年が裏の事務室と思われるドアを開けて消えていく。
この世界では宿屋や食堂、雑貨屋など大衆向けで個人経営の店は家族経営が基本だ。もとより企業という概念が存在せず、家族で手の届く範囲でしか商売をしない。家と職場が同じ建物であることも多い。丁稚奉公のように下働きが雇われることはあるが、正式に従業員を雇用するのは少数だ。
家を継げない子供は将来独立し、親元や商人ギルドに融資してもらい自分の店を出す。この世界では一般的にこの流れで新しい店が建つ。
宿屋は大抵の場合はまず個人経営の食堂や酒場があり、店主が結婚を機に住居兼職場を増築し、宿としても商売を始める。
アレット達が訪れたこの赤鳥の宿もそういった店のようだ。
受付の少年が離れてすぐ、恰幅の良いおばさんが出てきた。
「おまたせしました。うちの倅がすいません」
「いえいえ、大丈夫ですよ。子供ならそんなものです」
「あなた達の方が幼いように見え‥‥‥いえ、何でもありません。それで、宿泊料金は前払いとなっておりまして、朝と夜の食事付きで一人一泊30ファムとなっております。一か月が30日なので2700ファムですが、一か月以上の長期滞在の場合は割引対象になるので全部で2500ファムになります」
「あっ、総額は合っていたんですね」
「ええ。以前にも同じことがあったので、値段だけ覚えていたのでしょう。よく言い聞かせておきます」
「なるほど……ああ、それでお願いします」
悩みもせずに頷いて、懐からお金を取り出す。門番から教えてもらった獣人のモアナが安全に泊まれる宿は他に知らないので、もとより悩む余地はない。
「あの、ところで俺たちは泊っても大丈夫なんですか?子供だけですけど」
鍵を受け取ってところで、アレットはふと聞いてみた。客観的に見て自分たちは被差別種族もいる子供だけの訳あり集団だが、店は危険があるかもしれないから泊まらないでくれ言わないのだろうかと。
するとおばさんは優しい目をして口を開いた。
「大丈夫よ。訳ありの子供なんていくらでもいるけど、それを見捨てる人はこの地区にはいないわ。貧する者にこそ手を差し伸べなさいって、女神様もそういっているわ」
「なるほど、そういうことですか……。ありがとうございます」
一礼して三人は部屋へ向かった。
「ふひゃー……疲れた―‥‥‥」
「……にゃー」
二階の角部屋。三人が借りた部屋に着くと、ソフィアはベットに飛び込み、モアナもそれに続いた。思い返せば二人とも数年無人島生活をしていたのだし、慣れない人混みに酔ったのだろうか。
「ご飯食べる前に明日受ける仕事を冒険者ギルドに探しに行くつもりだったんだけど……、そんなに疲れたなら一人で行ってこようか?」
「任せたー」
「……任せたー」
装備を脱いで振り返ると、二人とも既に昼寝の態勢になっていた。アレットは一人で情報収取に出かけて行った。
ペース上げるために詳細な描写を減らすかこのままいくか悩んでます。




