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沈んだ船の後継者  作者: ライブイ
2章 風の都と呪われた弓使い
19/62

17話 冒険者登録

日曜日に投稿できませんでした。すみません。


今回もちょっと中途半端です。どこで切るか迷う。

「すみません。身分証は持っていないんです」


 風の都トルシスの門番ラナイが訪ねると、背丈が腰よりも低い三人組の先頭を歩いていた少年がフードを脱いで答えた。思っていたよりも高い声で、髪が短いだけで少女なのかと混乱した。


「ええと、それはどういうことだ?」

 これは見た目通りの歳の子供たちなのかなと気を抜いてしまい、事務的な態度を崩してしまった。


「はい。俺たちは親が船で商売をしていたのですが、魔物に襲われて船が沈んでしまって……俺たちは運よくこの辺りに流れ着いたのですが、故郷に帰るにも場所が分からないので、道なりに旅をしてきました」

 前もってソフィアとモアナに相談して決めていた嘘の経歴を話すと、門番の目が不信や混乱から同情に変わった。


「そうか……それは大変だったな。それで、この町に来てからはどうするつもりだ?」

「まずは冒険者ギルドに行って登録するつもりです。俺たちは腕に覚えがあるので、魔物を狩ってお金を稼いで、護衛をしながら旅をするつもりですし」


 アレットがそう言うと、門番の表情がますます同情的になる。


「……そうか。分かった。これから大変だとは思うが、俺たち衛兵の世話にならないように頑張ってくれ。十五歳以下なら通行税は免除されるからもう行っていいぞ。それと宿なら協会の近くにある『赤鳥の宿』がおすすめだ。安いうえに子供だけでも差別されずに止めてもらえるからな。エルフはともかく獣人は今でも差別に合うこともあるが、あそこなら安心だ。食事はその近くにある『キノコと魚魚の宴亭』だと腹いっぱい食えるぞ。

 それからこの国では何歳でも冒険者ギルドに登録できるが、十歳以上じゃないと最初のG級から昇級できない。護衛依頼は最低でもE級以上の依頼だから当分この町にいるだろうから、ギルドの教官からしっかり戦闘系スキルや薬草の見分け方なんかを学んでいくといい。それからーー」


 急に親切になったおじさんに戸惑いながらも、ありがたい知識なのでアレットたちはしっかり覚えてからお礼を言って街に入った。


 親を魔物に殺されて身寄りを失い、命を担保にする冒険者になる。そんな悲劇的なおとぎ話の様な身の上の子供たちに深く同情していたことに、三人とも気が付くことは無かった。





 街に入ると、想像以上に活気のある街だった。道には馬車が走り、道を進むとある広間には綺麗な花が咲いており、とても美しい街だ。

 アレットは生まれて初めてみる街に目を奪われて感動している。


「これが『街』か!想像以上に賑やかで楽しそうで、本を読んだだけじゃ分からないもんだな!……って二人ともどうしたの?」


 アレットが一人ではしゃいでいると、ソフィアとモアナは沈んだ顔をしている。


「……嫌なこと思い出した」

「あー、ほら。島に流れ着く前に、獣人だからって差別されたことがあるから、そのことを思い出しちゃって……」


「ああ。なるほど」

 二人が落ち込んでいるような顔している理由を聞いて、得心がいった。何とか元気着けてあげたいなと思ったが、気の利いた言葉は出てこなかった。


「大丈夫だよ。この町にはちゃんと門から正規の手段で入ったんだし、門番さんの話を聞く限り問答無用で殺されるわけじゃないみたい。もしも石を投げてくる人がいれば投げ返せばいいんだよ」


 気の利いた言葉が出てこなかったので、アレットは物騒な、しかし正しくはある言葉を正直に選んだ。


 二人はキョトンとした顔になり、笑い出した。


「あっはっはっは。なるほどそれもそうね!」

「…反撃して、いいの?」


 実際、アレットの言っていることは過激であるが間違いではない。この国では獣人種は差別される対象であるが、一等低い存在と定義されているだけで、人間である。

 店では店主次第で商品を売ってもらえないし、貴族に獣人種もいない。犯罪が起これば汚らわしい獣人がやったに違いないと真っ先に疑られることもある。街中で白昼堂々と人さらいにあっても、行政に訴えても雑事よりも優先順位が下の事とされてしまう。


 しかし直接的な暴力行為が承認されているわけではないのだ。


 見て見ぬふりをされるだけであり、獣人に暴力をふるった人が反撃されてけがをしても、獣人が罪人とされることは無いし、証拠はないが疑わしいからと拘束されることもない。


 一般人ともめ事を起こすと獣人のほうが最初に手を出したとされることもあるが、そういう時はばれないようにやればいい。


 理不尽で受け入れがたい理由で直接何かをされれば、反撃すればいい。それだけだ。





 すっかり元気を取り戻した三人は迷子になりながらも、冒険者ギルドにたどり着いた。

 

「結構綺麗な建物だね」

「荒くれ物や社会不適合者ってわけじゃないけど、兵士や衛兵なんかの規律が合わない人の集まりらしいし、もっと騒がしいかと思ってたのにな」

「…なんでもいいから、早く換金してごはんにしようよ」


 三人が冒険者ギルドに入ると、そこかしこから笑い声が飛び交いお酒の匂いが漂ってきてガラの悪そうな兄ちゃんたちがお酒を呷りながらじろりとにらみつけてくる…ようなことはなく、正面の受付カウンターや壁際の依頼書を見ている人がいるだけだった。


 冒険者が依頼を求めて混雑する時間は朝方なので、昼を回っている今では冒険者の姿はまばらだ。数少ない冒険者は本日は休みにして明日以降受ける依頼を見繕い、受付カウンターでは受付嬢やその奥では職員たちが書類仕事をしている。

 

 子供がいること自体が珍しいため目を引きながら、カウンターまで進んだ。


「こんにちは。冒険者登録をしたいのですが。俺たち三人です」

「…!はい、こんにちは。こちらの紙に名前と年齢、種族、それとあれば得意分野を記入してください」

 

 話しかけた受付嬢は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに営業スマイルを浮かべて登録用紙とペンを出した。


「代筆は必要ですか?」

「いえ、大丈夫です。ところで得意分野というのは何を書けばいいのですか?」

 冒険者についてはソフィアから一通り説明してもらったが、根本的に大人…冒険者登録できる年齢になってからの事だったので、アレットたちのように十歳に満たない場合の例外的な規則は教えられていなかった。それに国や、もしかしたら大陸も違うかもしれないので、規則に違いがある可能性もある。聞いておいたほうがいいだろう。


 ちなみに、ソフィアとモアナはアレットの後ろで黙って聞いている。二人とも口は達者でないので、一番口が立つ、もしくは一番まともなアレットに丸投げしている。


「得意分野は元兵士や冒険者から何か訓練を受けていたとか、魔術や戦闘系スキルの有無、それからユニークスキルについても記入します。」

「ユニークスキルもですか?ギルドカードを発行するときに分かるのでは?」


「ギルドカードを発行するときに判明したことは守秘義務によって守られますので、担当した職員以外は知ることがありません。得意分野の欄にユニークスキルを記入すると、それを生かした依頼を受けたいという意思表示になるんですよ」


 冒険者ギルドに登録する場合、冒険者はステータスを冒険者ギルドに開示することになる。これは契約魔術と呼ばれるに無属性魔術の一種だ。自分のステータスは誰でも確認することが可能だが、大昔に冒険者ギルドの研究者が開発した魔術を使用することで、相手が同意すればステータスを他者が確認することができる。


 冒険者ギルドは冒険者のステータスに応じて、その冒険者に適した依頼を斡旋する。また、実力が不足している場合は依頼を止めることも役目だ。冒険者ギルドに登録する新米たちは総じて自分の実力以上に自分を評価しているので、それを止めるためにステータスを確認するのだ。


 ユニークスキルの確認もその一つだが、やや例外的だ。ユニークスキルは数万人に一人が持つ特別なスキルといわれており、その効果は折り紙付きだ。例えば【ゴブリンスレイヤー】など特定の相手に多くダメージを与えるユニークスキルを持っていることを公にすると、それに応じた依頼を優先的に斡旋してくれる。それはユニークスキルがそれだけ強力だからだ。


 【ゴブリンスレイヤー】を持っていれば、一般人と同程度の身体能力でも村を壊滅させるようなゴブリンの群れを一人で倒すことができるようになる。それは新米の慢心が現実に押しかつ程だ。


 当然冒険者が公にしないことを望むならば、職員はその秘密を胸にしまっておくことになる。


(まー例外的にギルドマスターには言うとかあるんでしょうけどねー)

 そんな説明を受けながら、アレットは白けた目をしていた。用紙を書くために俯いているのでばれていないと思うが。


(二人はともかく、俺のユニークスキルは加護を含めていくつもあるし、明かさないほうがいいよな。よし不正をしよう)


 アレットは冒険者ギルドを信用していないわけではないが、地球という情報にあふれた世界での経験から隠すべきだと思い、不正行為をすることにした。


 ちなみにアレットは拒否感を覚えたが、この世界ではステータスを明かすことは抵抗があることではない。地球でいうとメールアドレスを記入したり免許証を見せることと同程度だ。

 上位の冒険者ならば、情報の重要さを知っているため隠すことが多いが、抵抗が無いものがほとんどだ。


 アレットたちは得意分野はそれぞれ弓術や風属性魔術などの最も得意なスキルを記入して提出した。


 アレットは三人分の登録用紙を纏めて、職員の目をみて子供らしい笑顔を浮かべながら手渡した。職員も心が癒されたのか、自然と笑顔を浮かべ……眩暈を起こしたようにふらついた。


「大丈夫ですか_」

「はっ、はい、大丈夫ですよ。‥‥‥‥…確認しました。間違いありませんね。カードを発行するので少々お待ちください」


 職員はアレットたちのステータスと提出した用紙を確認したが、平然と業務を進めた。ユニークスキルにも、異常なほど高いスキルレベルに反応することもなく。


 両脇からソフィアとモアナがどうやって誤魔化したのかと知りたそうにしていたが、一応だが注目されているので目で後で話すと告げた。


 ほどなくして冒険者カードを受け取った。


「登録はこれで完了です。これからの活動、がんばってくださいね」

「はい。激励ありがとうございます。ところで今までに手に入れた魔石や素材があるのですが、どこで換金できますか?」

「それでしたら、冒険者ギルドの裏手にある解体所で買い取りできますよ」


 アレットたちはお礼を言って冒険者ギルドを出た。



誤字訂正機能で直してくれた方、ありがとうございます!

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[良い点] 趣味だから自由でいいのよー
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