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沈んだ船の後継者  作者: ライブイ
2章 風の都と呪われた弓使い
18/62

16話 風の都トルシス

中途半端ですが日曜を過ぎているので投稿しました。


一章が終わったから休憩とか言っていたら立ち上がれなくなるところだった。

二章開始です。今後もお付き合いしていただけると嬉しいです。

 島を出て2週間後の明け方。アレット達は中央大陸南東部の沿岸にたどり着いた。

 

 やや崖になっていたが登れない程では無く、三人とも魔術による強化や補助を使わずにひょいと登り切った。


「結構近かったね~」

「陸地のほうが落ち着く…」


 そこは緑が一面に広がる大草原だった。


 陸から見れば海を一望できる丘があり、海からは爽やかな風が吹き込む。放牧に適しているような場所だ。


「あ、道発見」


 感慨深げに呟いている二人を他所に、アレットは平原を横切るように通っている街道を見つけた。初めて森を見た時は感動したが、もう慣れたのだ。


 馬車が通ったようなあともあり、この道をたどれば街に着くだろう。街が左右どちらにあるかは分からなかったので、馬車を追うことにした。馬の蹄の向きから馬車の進んだ方向を推測し、三人は左へ歩き出した。





 遮蔽物が存在しない平原を暖かい風が吹いている。蒸し暑い海上とは雲泥の差だ。心地よい昼下がりに三人が街道を歩いていると、城壁が見えてきた。


「じゃあここでお別れだね」

「…今まで楽しかった。元気でね」


 アレットとモアナは別れの挨拶を済ませ、アレットは先に街へ向かう。順番に大した理由は無い。アレットは生まれてから今まで船で過ごしていたが他者との会話は当然していたので初対面の相手でも問題なく会話できる。対してモアナたちここ二、三年は島で生活しておりお互い以外と会話していなかったため手間取るだろう。なのでアレットが先に行くだけだ。


「いやいやいやいやまったまった!え?なんで別れようとしているの?これからも一緒にいるんじゃないの?モアちゃんもなんで当然のようにお別れしているの!?」


 そこにソフィアが待ったをかけた。


 二人は顔を見合わせて小首をかしげたが、思い至ったように口を開いた。


「そういえば、陸についてから一緒に行動するかははっきり決めてなかったか」

「…当然お別れすると思ってた」


 一か月近く共に過ごし口調も気にせず会話する中になったとはいえ、二人にとってはお互いに他人なので、お別れするのが当然なのだ。


 しかし、ソフィアは違う考えのようだ。


「お別れする理由がないなら三人でいようよ!一緒にいたほうが……、ほら、私は人間社会の仕組みにアレット君よりは詳しいし、モアちゃんは強いし、アレット君は錬金術で物を治せるし、なによりきっと楽しいよ。ね!」


 ソフィアがどうしてそこまで一緒に三人で居ようとしているのかアレットにもモアナにも分からなかったが、特に断る理由もないので、今後も三人で一緒にいることにした。


 アレットは島のあったダンジョンの最下層で二人を守るために命を懸けたが、それは自分に力が無いせいで目の前の大切な人が死ぬことを嫌っただけなので、自分が傍にいない間に死んでしまったら後悔する、といったことは考えていなかった。


 自分が傍にいないだけで死ぬならば、それはその人の責任。アレットは悲しみを覚えるが、それを回避するためにそばに居ようとは考えていなかった。





「そういえば、通行料とか掛かるのかな。ソフィア。知ってる?」


 アレットは門が見えてきたあたりで自分たちが無一文なことに気が付いた。前世では物語全般が好きで、若いころは異世界を舞台にした小説も読んだことがあった。うろ覚えだが、大抵の小説では街の出入りにお金がかかったような気がする。


 日本では街への出入りにお金などかからないが、街が密接している日本と魔物が存在し街の周囲を防壁で囲っているこの世界とでは社会の仕組みを同じに考えることは避けたほうがいいだろう。


「えーっと、たしかかかるよ。子供は10ファムだったかな」

「ファム?」

「お金の単位だよ。あっ!私がいた国ならだけど。でも料金自体はどこ国でも同じくらいらしいよ。お金はたしか、門で魔石や素材を換金できるはずだよ」


 この世界では一般的に街に出入りするためには通行料がかかる。


 この世界の人々はほとんどの人が生まれた街から出ることなく一生を終えるが、街から街へ移動する人たちも存在する。商人や傭兵などの仕事で出入りする人たちや、修行や娯楽で旅人をしている人たち。辺境ならば宗教組織に属する聖職者が巡礼に訪れることもある。そういった人たちは通行料がかかるのだ。


 例外的に街の領主からの呼び出された場合や、冒険者などの街から出ても同じ街に帰ってくる人たちは通行料が免除されることもある。


「魔石っていうと、あの島で倒したランク3のヒュージボアの魔石で大丈夫かな。船からもらったランク6以上の魔石を売るのはちょっと抵抗があるんだけど」

「十分よ。全部捨てちゃったけど、ランク1のホーンラビットの肉でも足りるはずよ」


 幸いアレットは今まで倒した魔物の魔石や素材は全てアイテムポーチに収納してある。素材とは武具に使う頑強な魔物の筋や骨、錬金術の触媒にする舌や目玉や臓器などを指す。

 魔石はマジックアイテムの動力源として必須だ。魔石の質(魔物のランク)に限らず需要がある。

 

 アレットの持つアイテムポーチは空間拡張と重量軽減が付与されているだけなので、時間は普通に流れる。そのため肉などの腐るものは捨てているが。


 なお、10ファムは約千円に相当する。街に出入りする人種は金を持っているが、多すぎると街に人が来なくなるのである。





 街の門番は衛兵が順番に配置される。

 衛兵の仕事は街のパトロールに喧嘩の仲裁、犯罪の捜査や酔っ払いの回収など多岐にわたる。門番はその中でも最も大変な役割だと言われている。


 街に出入りする大勢の人たちを迅速かつ正確に検査し、遅れれば嫌そうな顔をされ、冒険者の中には大声で苦情を言ってくる者もいる。

 苦情をうまく躱せなければ仕事が溜まりさらに苦情が増えていく。立っていればいいだけの仕事など口が裂けても言えない。


 街の中の仕事は多くが体を動かすが、その日のうちに成果を挙げなければいけない仕事や失敗できない仕事もまずない。だからといって手を抜いていいわけではないが、門番と比べれば天国の様なものだ。


(今日は一段と寒いな。早く交代の時間になってほしいものだ)


 風の都トルシスの東門の門番をしている衛兵ラナイは、早く仕事が終われと念じていると、街道から三人の子供らしき姿が見えた。フード付きの外套を羽織って、荷物を背負っている見慣れない服装の少年少女たち。利発そうな少年と活発そうな少女。それに暴力事件の被害者といわれても納得がいくような目をした少女だ。


 明らかに怪しい三人組だ。子供だからこそ怪しい…というよりの意味不明だ。全員が大人なら奴隷を連れているのかとも思うが、子供だと幽霊の様な理解の外にいる何かを見ているような気分になってくる。

 子供ということを差っ引いても、護衛がいないことがおかしい。この町の東側には魔境は無いが、南西に大魔境があり、稀にそこからあふれ出した魔物が出没することがある。

 そして街に着く時間が中途半端だ。昼頃か日が暮れる前後に街に着くのが一般的だ。他の人がいない時間帯を狙ってきたとも考えられる、


 しかし、怪しくないと考えれば、怪しくない。子供にしか見えないが、エルフやドワーフなどの十歳から成長が遅くなる種族で、その中でも背丈が小さい三人組かもしれないし、時間も単に寝坊したのかもしれない。


 もしくは貴族の四男以下が従者と共に道楽で旅でもしているのかもしれない。それなら子供ということがおかしいかもしれないが、こんな危険なご時世に子供だけで旅をしようと考えるなら、魔物が来ても何とかなると楽観的に考えたのかもしれない。


「身分証を」

 だからラナイは普通に身分証の提示を求めた。



今後も日曜更新予定です。予定です。

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[良い点] 人付き合い下手ねー
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