15話 船が浮かぶ日
投稿遅れてごめんなさい。一章完結です。
島を出る最後の日、アレットはジョブチェンジ部屋に来ていた。シエとの戦いでレベルがカンストしていたが、今日までジョブチェンジは出来ていなかった。
なぜなら、この島がもうすぐ崩壊すると判明したからである。
ダンジョンの宝物庫で手に入れたアイテムと共に島の解析をしていると、この島がもうすぐ崩壊することが判明した。どうやらこの島はダンジョンの最奥に居たシエが維持していたようで、それが消滅したためこの空間も消えるようだ。
ダンジョンとして維持していたため即座には消えないが、10日もあれば完全に崩壊する。
そのためアレットは自身のジョブチェンジや二人への説明は後回しにすることにし、島を脱出するための船を作ることにした。
泥で。
日本の童話に出てくる泥の船を参考に作ったものだ。
最初は【知恵の書】で調べてみたが、船で生活していた研究者たちは主に都市規模の超大型船の研究はしていたが、数人で使う船に関する研究をしていなかったため、頼れる資料がなかったのだ。
正確には研究自体はしていたはずだが、数人規模の小型船は研究の本筋から外れていたために神に奉納されなかったと思われる。
微妙に不便なスキルである。
材料は島にある木と土と砂と魔物。木を骨に見立て、泥で肉付けし魔物の皮で覆う。
一日で製作可能な、沈まないだけの船である。
他の陸まで持つかは不明だが、安心できるだけの船を作る時間がないので妥協した。
アレットが船から託されたアイテムポーチに食料や荷物を積み込み、島から脱出する準備を終え、ようやく一息つくことができた。
「さーて、どれにジョブチェンジするかなー」
アレットは言葉尻に音符が飛んでいそうな声ではしゃいでいた。
シエとの戦闘でレベルがカンストしたが、他にも神から加護を得たり謎のスキルを手に入れたりと、おとぎ話や英雄譚のようなことがあったのだ。
一般的には弓術士は遠弓士や剛弓士、水属性魔術師は氷水魔術師や流水魔術師などの特化ジョブに派生していくが、間違いなく上位互換の特別なジョブに就くことができるはずだ。
「んー……どうしよう。思ったより就けるジョブが多い」
しかし、おそらくは上位互換だが、名称からは効果が判断できない新ジョブが大量に表示された。
どのジョブに就いても並外れた補正が望めるだろうが、それぞれのジョブ補正の方向性が異なるのだ。
「ん?このジョブは何だ?」
しばらく悩んでいると、あるジョブが目に留まった。
「よし、一番効果が分からないジョブに就くか」
名称から効果が推察できるならば、そのジョブに就かなくともジョブの方向性はわかる。ならば最も効果が分からないジョブに就いたほうが得るものがある。
そう考えジョブを選んだ、
「【境命士】を選択」
≪【境命士】にジョブチェンジしました≫
≪【思考存在】【状態異常耐性】スキルのレベルが上がりました≫
≪【境界破棄】【万象耐性】【霊体】【魔力増大】【生命力増大】【魔力自動回復】スキルを獲得しました≫
≪【物理耐性】【魔術耐性】が【万象耐性】と統合されました≫
≪【境界破棄】が【思考存在】に吸収されました≫
・名前:アレット
・種族:人種(人魚)
・年齢:8歳
・称号:無し
・ジョブ:境命士
・レベル:0
・ジョブ履歴:見習い戦士、弓術士、錬金術師、水属性魔術師
・能力値
生命力:330(50UP)
魔力 :732(200UP)
力 :146(26UP)
敏捷 :181(20UP)
体力 :281(73UP)
知力 :542(153UP)
・パッシブスキル
水属性耐性:5Lv
万象耐性:4Lv(NEW)(UP)
状態異常耐性:4Lv(UP)
怪力:2Lv
能力値強化:水辺:3Lv
自己強化:水辺:3Lv
魔力増大:1Lv
生命力増大:1Lv
魔力自動回復:1Lv
・アクティブスキル
錬金術:6Lv
弓術:6Lv(UP)
鎧術:3Lv
盾術:3Lv
格闘術:3Lv
無属性魔術:1Lv
水属性魔術:7Lv(UP)
土属性魔術:3Lv
魔術制御:6Lv(UP)
家事:1Lv
歌唱:6Lv
指揮:2Lv
限界突破:3Lv
高速思考:1Lv(NEW)
並列思考:1Lv(NEW)
霊体:1Lv
ユニークスキル
水の祝福
ルメアの加護
ソルカの加護
思考存在:2Lv(UP)
知恵の書:1Lv(UP)
神鉄骨格:2Lv(UP)
英霊化:1Lv(NEW)
「ん!んー……?うん?吸収?」
アレットはジョブチェンジし新しいスキルを得た。それは誰がどんなジョブに就いても起こることだ。同系統のスキル同士なら統合も稀にあるらしい。
しかし、吸収は初めて聞いた現象だ。
「まあいいか。今考えているだけじゃ分からないし、航海しながら検証してみよう」
「…本当に島から出られるとは思わなかった」
「そうだねー。それよりモアちゃん。この船で本当に大丈夫なのかな。泥だよ?泥」
「…知らない。でも海に浮かんでいるし、きっと平気」
「モアちゃん適当に言ってない?まあ私もできること無いし、アレット君に任せたからいいけど。
しっかし、経験値が入っているってことは、アレット君が言っていた謎の男って本当にいたのかな」
ソフィアとモアナは先に船に乗ってアレットを待っていた。
最後にアレットがジョブチェンジした後で、住居を崩壊させるそうだ。
島が消滅する以上住居も消えるのだし、謎そんなことをするのかと二人は疑問に思ったが、アレット曰く区切りだそうだ。よくわからないが、アレットがそうしたいと言うのだから止めることもないだろう。
なお、二人は自分たちが失った記憶があることを理解していた。
二人はシエとの戦闘であまり貢献出来なかったためレベルがカンストすることは無かったが、少量とはいえ経験値が入っていたからだ。
そんなことが本当に自分たちに起こったのかという疑問はあるが、アレットが嘘をつく理由は思いつかず、心当たりのない経験値という証拠もある。ならば本当なのだろう。
二人で雑談していると、アレットがやってきた。
「お待たせ。じゃあ出航するか」
声を上げ船が動き出す。
アレットは泥船をマジックアイテムにしていた。今までは布や金属をマジックアイテムに改造していたので初めての試みだが、泥という内部にも魔術の回路を刻むことができる特徴がよかったのか、思い通りのマジックアイテムにすることができた。
効果は単純。沈まないよう浮力の強化と、船に魔力を流すと前に進む。
極めてシンプルな船だが、それゆえに壊れにくく修理しやすい船だ。
ソフィアとモアナの話から大まかな大陸の方向は見当がついている。およそ一か月もあれば着くはずだ。
しばらく進むと島を覆っていた結界を抜ける。振り返ると島が崩壊しているのが見えた。
「ねえ。アレット君。モアちゃん。二人はこれから、何かしたいことってある?」
生まれ故郷がなくなり流れ着いた島。崩れていく島を見て黄昏手いると、ソフィアが声を上げた。
「…これからっていうと、大陸に着いてからってこと?」
「そうそう。私はおしゃれしたいとかあるけど、ふたりは?」
「…私は、お昼寝できる家が欲しい。この世で一番気持ちよく眠れる場所に建てたい」
そんな二人の話を聞きながらアレットは考える。
生まれてからずっと船にいたアレットにも、地球で生きたアレットの前世にも、やりたいことはいくらでもあるが、絶対にやりたい「これ」というものは無い。
「あっ・・・!」
そんな彼だが、水平線をぼんやり眺めながら考えていたら、一つ思いついた。思いついた以上これしかないと言える程のものが。
「船を創りたい」
そう呟くアレットに二人はキョトンとした顔を向ける。
「…船って言うと、こういう泥の船じゃなくて」
「アレット君の故郷の、街より大きな船ってやつ?」
アレットは二人の言葉に、一気に気分が高揚したのか大声で返す。
「ああ!故郷の様な船を…、いや、もっと大きく優れた船を、俺は作りたい!」
アレットの故郷は、船であるが同時に街であり国であり、研究所であり、なにより神殿だった。
アレットの故郷は、永遠ともいえる時間の中で研究と信仰に生きていた。
既存の人間社会から離れ、独自の研究を続け、自分たちが奉じる神への信仰を絶やすことは無かったのだ。
現在どれだけ廃れていても、アレットにとってその事実は何よりの誇りである。
しかし、もう故郷である船は無い。
船は沈み、生き残りは自分と何人いるのか。
復興は絶望的を通り越して不可能だ。
では、故郷のことを忘れて生きるのか。それもいいだろう。自分の心の大部分を占める故郷だが、自分はまだ子供だ。いつの日かただの思い出になるだろう。
だが、出来るならば、自分は故郷を蘇らせたい。
「故郷が海に沈んだなら、俺がその遺志を継いで、再び海に浮かべよう」
アレットはどこにあるかも分からない故郷の残骸を見つめながら、故郷の再建を誓った。
初めて書く小説ということもありプロットが定まらず文章もぶれたりと踏んだり蹴ったりでしたが楽しかったので満足しています。
次投稿するのが2章になるか、それともこれは完結にして違う中編小説書くかまだ決めてません。
感想で意見を貰えると助かります。展開遅いかなって思ってます。




