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87 風呂で落ち着いて考える

 風呂で疲れを洗い流し、落ち着いて振り返る。


 リーザがいるだけで国を滅ぼせる訳無いし、ジルヴァラに世界を燃やし尽くせる訳は無い。

 俺は裏で手配されていて、PKの的。

 もう少ししたら町にも入れなくなる。


 どうする?


 どうやって牛をぶっ潰すよ?


 まずは裏をどうにかするのが先か。

 依頼人、十中八九、牛だろうけど、それを突き止めたい。

 それには裏に明るい協力者が必要。


 その次に牛を潰す手段。

 いっそ、タウラス島ごと落下させる、とか。

 そんな魔法、無いかな。

 流石に無理か。

 もう少し具体的な手段を考えよう。


 そして最後に少女。

 連れ回すのは無理だな。

 PKに巻き込まれるだろうし、人質にでもなったら厄介だ。

 盾にも使えない。


 いやー、面倒な事になったな。


 懐かしいコル・カロリの宿。

 ここも当分来れないか。

 最後に女将のメシを堪能してからログアウト。


 胸を揉みながら、それだけ決めた。


 ◆


「……と言う訳で色々と大変な訳だ」


 ウミと通信。


『リーザにちらっと聞いたけど、それ以上に深刻そうね』

「ま、なんとかするよ」

『何とかって?』

「これから考える」

『きっとロクでも無い事をするんだろうな……』

「失敬な!」

『ま、事情は分かった。アリアとは当分一緒に居るよ。でも、君からアリアに連絡しておきな。通信は出来るんでしょ?』

「出来る、が、面倒だな。そのうち」

『今日しろ。この後すぐしろ』

「……はいはい」

『それと、呼べば助けに行くからね』

「ああ」


 どうやって来るの? とは聞かない。

 その言葉だけで十分だ。


「もし、アリアシアの面倒が見きれなくなったら獅子座、レグルスの王宮へ連れて行ってくれ」

『何で? そこに居るの?』

「そう言う誘いはあったが俺の方は断った。

 あそこの王様はアリアシアを気に入っている」

『へー。玉の輿?』

「どうかな。当のアリアシアにそんな気が無さそうだ。それにメシがな……」

『あー……』

「ただ、安全は保障されるだろうから」

『わかったよ。ま、安全な所なら真珠姫の側に置くってのもアリかもね』

「その辺は任せる。命があれは何でも良い」

『うん。任された。お土産よろしく』

「引き換えに飛びっきりの笑顔をもらえる様なの用意しとくよ」

『ほー。じゃ、それは上目遣いで可愛く渡してね。じゃーね』


 これでひとまずは、安心だろう。


 ◆


『ハルシュ! どうしたんですか? 大丈夫ですか?』

「あー暫く戻れそうに無いから、ウミ達と一緒に居てくれ」

『え? 大丈夫ですか? 今何処ですか?』

「また連絡する」

『まっ』


 これでよし。

 一旦少女からの通話を拒否に。


 ◆


『はい。こちらコンステレーション クエスト オンライン問い合わせ窓口です』

「ども。何か、覚えの無い事で手配が掛かってるらしいんだけど」

『手配、ですか? お調べします。

 ……はい。確かにハルシュ様はタウラス王国より、国外追放令が出ておりますね。

 そして、裏ギルドから懸賞金がかけられております』

「身に覚えが無いんで、何とかなりません?

 プレイに支障がある」

『そうですか。

 ですが、生憎こちらからの干渉はいたしかねます』

「何かの間違いだと思うんですよね。冤罪です」


 だって、何も悪いことして無いもん。


『冤罪、ですか。

 であるならば、それは、ご自身で証明していただくしかありません』

「えー。PKに狙われる実害が出てるんだけど。ちょっと非道く無いかな」


 取り敢えず、ごねる。


『止めたら良い』

「……は?」


 急にオペレーターの口調と声色が変わる。


『ゲームの中でそんなストレス抱え込むなんて馬鹿らしくない? 娯楽だぜ? 所詮』


 ……。


 うわ。


 俺の言葉だよ……な?


「いやいやいや、その言い方、て言うかそう言うやり方は無いと思うんだ」

『そう言えば死に場所を探してらしたんでしたっけ?』


 それは……ジルヴァラに言った気がする。


「あー、もう良いです。自分で何とかします」

『そうですか?』

「そうです」


 やべぇ。

 思い返すと結構恥ずかしい事言ってる気がする。

 それ、全部記録されてんのかな?


「行動記録って、運営なら誰でも見れるの?」

『いえ。原則、私達管理AIしか閲覧しません。

 プレイヤー様のプライバシーは守られていますので、ご安心下さい。

 もっとも、問題行為などを見つけた場合はその限りではございません。

 運営管理チームの人間の判断を要する場合などもございますので。

 ただ、その場合も極力アカウントの特定など出来ない様に尽力いたしております』

「そっか……」


 まぁ、まだ良かったか……?


「ちなみにさ、王様っているじゃ無い?」

『はい』

「プレイヤーが、殺す事も可能なの?」

『システム上に制限はございません。

 そう言った意味では可能です』

「そうするとどうなるの?」

『どう、とは、何を指していらっしゃいますか?

 いささか対象が広いので指定をお願いします。

 もちろん、全てを一通り説明は出来ますが』

「んーと。

 じゃ、王を殺したプレイヤー」

『わかりかねます』

「え?」

『王を殺すと言う事象は、実は歴史の中に於いてそれ程多くありません。

 それが、例え後世の歴史に於いて愚者の烙印を押されていた支配者だとしても。

 また、そのプレイヤー様が何を目的としてそういった行為に走るかによっても、その後の推移は変化すると思われます』


 つまり、やってみなきゃ分からないって事か。


「他も大体そんな感じ?」

『こんな感じです』

「やって良い?」

『どうぞご自由に。

 ただし、それが元で不利益を被ったとしても何ら補填は致しませんので悪しからず』

「そっすか」


 割と軽い返事だったな。

 なんか、少し毒気を抜かれた。


「んー、参考になった。ありがとう」

『引き続き、コンステレーションクエストオンラインをお楽しみ下さい。

 ハルシュ様に星々の導きのあらん事を』

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