66 嵌められる
こんな調子で若干の不安が残る面子で挑むクエスト。
まぁ、本当に危険になったら少女連れて逃げればいいのだが。
他は最悪、死に戻れ。
うん。
こんなクエスト引き受けなきゃ良かったな……。
フィールドを進む一同の先頭を行く勇者。
迫り来るモンスター共を一人蹴散らしていく。
よく考えたら、闘技大会の優勝者な訳で。
実力は折り紙付き。
俺を挟み後方でワンコと戯れながら付いてくる女性陣五人。
モフモフは……強いなぁ……なんて、しみじみ思う。
勇者らしく頑張るクロムに時折回復魔法を掛けながら進む。
まあ、本人も満更で無いようなので良いか……。
◆
やがて、街道を離れ、朽ちた石畳の先。
山の麓、草原の中に佇む人工物。
それは、破壊の跡に長年の風雨に晒され、周囲の景色と半ば同化しているような趣さえある。
立ち並ぶ石造りの円柱。高いものは五メートルほど。
しかし、その半数以上が、半ばから折れ、原型を留めていない。
「ここ……か?」
元は何かの建物であったのだろう。
しかし、今は屋根はなく、隙間から雑草の飛び出す石畳とその周囲を円形に取り囲む円柱、そして、階段状になった石積みの跡がその名残を見せるのみ。
取り囲む円柱は、陸上競技場ほどの広さの空間を形作っている。
その中心に立つ一同。
「何も居ないわね」
「一匹、余分だったからじゃないですか?」
余分な一言を放った勇者を女性陣全員が睨みつける。
「……すいません」
その余分と言われたワンコが不意に身構え、柱の一つに向かい唸り声を上げる。
と、同時にその方向から漂う気配と、強烈な敵意。
何時からいたのか。
柱の向こうから、現れたのは、褐色のローブを纏った人物。
距離があり、顔までは判断がつかないが背格好は街で依頼をして来た人物とほぼ同じ。
「罠、か……」
小さく呟く。
「罠なら罠ごと吹き飛ばせば良いのよ」
ジルヴァラが、それに答える。
ローブ姿の人物は、ゆっくりとこちらに歩みを進める。
「多分、敵だ」
全員に小さな声で警告。
それぞれが、武器に手をかける。
およそ十五メートル程の距離で相手が止まる。
そして、おもむろにそのローブを剥ぎ取る。
中から現れたのは、白い薄手の貫頭衣を纏った若い女性。
特筆すべきは、その頭か。
側頭部から、二本の角が生えている。
そして、ローブの中に隠し持っていたであろう柄の長い戦斧。
下品な笑いを浮かべる口元……。
だが、それらの特徴を全て吹き飛ばす程に、巨乳。
そう……巨乳!
パックリと空いた貫頭衣の胸元が内から引き裂かれんばかり張っている。
さながら、メロン……いや、スイカ!
「やっぱり、来たわね……」
その相手が、何かを語り始める。
それと、同時に勇者が飛び出し一気に間合いを詰める。
しかし、その手に剣は無く。
一体何を!?
その動きに一瞬眉をしかめたあと、戦斧を振り下ろす牛女。
それを軽く身を捻り交わした勇者は、その勢いのまま牛女に飛びかかる。
寸前で姿勢を低くし、下からすくい上げる様に。
そして、勇者は牛女に抱きつき、その溢れんばかりの巨乳の間に自らの顔を埋め込ませた!
「……え、いや、あーーーー!」
牛女の絶叫。
……。
けしからん!
何て羨ましい!!
何て業の深い事を!!!
「ちょっと! は、な、れ、ろ!」
絶叫しながら勇者の頭を殴る牛女。
「ヤダ! このまま死んでも良い!!」
勇者も負けじと絶叫。
「貫き注入する・麻痺」
背後から音も無く近寄ったウミが、勇者に剣を突き立てる。
脱力し、牛女から離れ地面に崩れ落ちる勇者。
「じゃ死んで来ようか?」
ウミが冷たい一言と共に勇者の首に剣を当てる。
「お前ら……お前ら全員死ね!」
牛女が絶叫と共に、窮地を救ってくれた筈のウミに向け、戦斧を振り下ろす。
それを、下がって避けるウミ。
と、同時に俺たちを取り囲む様に周囲から気配と敵意が溢れ出す。
「絶対、ぶっ殺してやる!」
その声を皮切りに、取り囲む柱の影から多数のモンスターが飛び出してくる。
そして、そのモンスターの群の更に頭上から飛来するのは矢か?
「舞い散らす風」
ウミが、下りながら風魔法を放ち矢の軌道を逸らす。
ざっと、周囲を確認。
現れたのは、思い思いの武器を手にしたゴブリン、そして、それより一回り小さい犬頭のモンスター、コボルド、更に豚の様な顔をしているのはオークか。
ぐるりと囲まれた。
「苦戦しそうなのはいるか?」
戻ったウミに確認。
「個別には問題無いけど数が。あと矢も厄介ね」
「光を掻き消す風」
少女がウミに倣い風魔法で矢を落とす。
「うーん、魔法で一画を切り崩してそこから突入して行くか」
「うん。良いと思う。回復よろしく」
「了解。リーザ、獅凰、聞いた通りだ」
「はい」
「……」
獅凰は首を引いて了の返事。
「じゃ、ジルヴァラ、でかいのよろしく」
「わかったわ」
「リーザ、奥の手は使うなよ!」
「はい」
「アリアシア、無理するな」
「大丈夫です」
「よし、行こう!」
「炎。全てを無に」
俺の合図に応じ、ジルヴァラが黒い炎で迫り来るモンスター達の一角を派手に燃やし尽くす。
「足取る水」
その周囲の敵へウミが魔法で行動を阻害。
そこへリーザが斧を、獅凰が両手に剣を持って飛び込んで行く。
一拍遅れてウミもそれに続く。
「乱れ撃つ」
「光を切り裂く風」
さらに、別方向へ俺の弾丸と、少女の魔法。
迫るモンスター達を打ち倒して行く。




