67 七人組が暴れる
「リヒト、あなたも行きなさい!」
ジルヴァラの声に応え、ワンコが敵の群の中へ飛び込んで行く。
「アリア、私の側へ」
「はい」
言われた通りジルヴァラの横に並ぶ少女。
その二人の周りを薄っすらと黒い霧が包み込む。
「ここは安全だから。さ、貴方も行ってらっしゃい」
そう、俺に向け言う。
「いや、あの三人に任せて大丈夫そうだ」
敵の中へ飛び込んだ三人は危なげない戦いぶり。
こちらへ飛び込んで来る敵を槍で打ち倒していればそのうち終わるだろう。
「あの辺、勇者が転がったままじゃ無いかしら?」
そう言ってジルヴァラは、少しモンスターの密集する一角を指差した。
……。
忘れてた。
うん。
忘れてた!
「行った方が良いかな?」
もう手遅れじゃ無いかな?
「逆恨みされても面倒だから行って」
「はいはい。乱れ撃つ」
その一角へ弾丸をばら撒き、槍を持って飛び込んで行く。
「うらぁ!」
こちらを振り返ったゴブリンの首を跳ね飛ばし。
◆
「生きてたか! 治癒」
モンスターの群の中に寝転ぶ勇者を発見。
ひとまず回復。
「解麻痺」
次いでウミにやられた麻痺を回復。
「助かったー!」
「ほら、ここで働かないとお姉さん方が許してくれないぞ」
「いや、おっぱいって素晴らしいですね」
……。
助けてよかったのかな?
「おっぱい最高ー!」
勇者は叫び声を上げながら剣を抜き放ち、そして、モンスターの中に飛び込んで行った。
もう、金輪際あいつに絡みたく無い……。
軽く飛翔。
「星降如く」
空から弾丸を撒き散らしながら三人の元へ。
「治癒・波動」
上から回復魔法で援護。
そして、俺は孤軍奮闘するワンコの側へ降り立つ。
「治癒」
ワンコを回復。
見た目に怪我をしている様子はなかったので不要だったかもしれないが。
「さ、片付けてご主人様の元へ帰ろう」
槍を振りながら掛けた声に、ワンコが鳴き声で返事をした。
◆
「十字斬り」
剣筋が微かに光を放ち、オークの体に十文字に斬りつける。
勇者の放ったその一撃が、モンスター軍団の最後の一体を葬った。
「治癒・波動」
全員を回復して、魔王の毒入りマジックポーションでMPを回復。
ついでにウミに一つ渡す。
「順番、逆じゃ無い?」
「あ、そうか」
ウミのMPを回復して、ダメージを回復魔法で帳消しにした方が良かったか。
「ま、良いけど」
言いながら彼女はアイテムを使用する。
「さて、バカ乳は現れるのかしら?」
そう思うから回復したのだが。
「お前、もう飛びかかるなよ?」
勇者に念押し。
「……それは、世界の摂理に反する……」
心底悔しそうな顔をする勇者。
それに、場の全員が汚物を見るような視線を向ける。
「役に立たない連中だ」
そんな声と共に先ほどの牛女が現れる。
いや、違う。
先ほどの牛女とその仲間が現れたのだ。
同じく、頭から角を生やした女達。
左から、スイカ、スイカ、メロン、スイカ、ビーチボール、スイカ、牛。
皆、一様に巨乳。
ただ、最後の一人だけ顔が牛。
何とも残念。
「貫き注入する・麻痺」
いち早く反応したウミが武技を叩き込む。
勇者に。
今、正に巨乳の群れに飛び込もうとしていた勇者は、そのまま地面に倒れる。
「ふん。そこのバカな男は最後にいたぶって殺してやるよ」
多分さっきの牛女がそんな事を言う。
「数の上では不利だけど、行けるかな?」
「「炎。全てを無に」」
確認の為に振り返った俺を無視して、魔王とその弟子が問答無用で牛女の一体を消滅させた。
皆さ、相手の話を聞くとか、そう言う事はしないの?
「これで、数は同じですね!」
リーザが言いながら斧を手に飛び出して行った。
その体から紫の炎を立ちのぼらせながら。
「やっちまえ!」
恐らく一番強いであろう牛顔の号令と共に走り出す巨乳達。
「足を取る水」
その足元へ、ウミの水魔法。
足を取られ転倒する牛女五人。
それを踏み台にして、リーザが牛顔に飛びかかる。
起き上がろうとした牛女の首を、獅凰が剣で一閃。
更に身を翻し、もう一体の首を刈る。
「貫く投槍」
飛び上がり、上から放った俺の槍が牛女を背中から心臓部を貫く。
「降り積もる石礫」
「光を切り裂く風」
「願う・冷気は矢の如く」
三人の魔法が残る二体の牛女を襲う。
「全弾・乱れ撃つ」
更に上から俺の放った弾丸。
その連続攻撃を食らった二体が粒子になりかき消えるのと、リーザの斧が牛頭の肩口からその心臓部まで深々と突き刺さるのはほぼ同時であった。
さながら牛の鳴き声の様な断末魔の叫びと共に最後の一体も消滅した。
◆
遺跡の奥、牛達が現れた方向に木で作られた宝箱があり、中身は、宝石、貴金属類ばかりだったが、それを七人で均等に分け、戦利品とした。
◆
街に戻り、リーザ達は宣言通りスイーツを食べに行った。
勇者はそそくさとログアウト。
この後何するんだろうね?




