表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/224

65 七人組を結成する

 と、言う訳でウミさんが新たに二人の愉快な仲間を引き連れ登場したんだが……。


「ここでまみえる事となったか……」


 うち、一人がジルヴァラの前に立ち、そんな事を言う。

 僅かに地に目を落としながら。


 対するジルヴァラは、事態が飲み込めずキョトンとしている。


 あいつ、まさかファンクラブ会員かなぁ?

 まあ、街中だし変な事はしないだろう……。


「魔王よ。其方そなたに恨みは無い。

 だが、これもこの力の定め……」


 そう言いながら剣の柄に手をかける。


 あれ?

 風向きがおかしい?


「覚悟!」


 そして、その剣を抜き放ち……。


<ポーン>

<警告>

<市街地での戦闘行為は禁止されています>

<従わない場合はペナルティ対象となります>


 彼の前に現れる仮想ウインドウ。

 そして、手の中の剣は刀身を全て鞘から出す寸前で停止する。


「クッ……。これが世界の選択か……」


 呆気に取られる一同を他所に、片膝を着きながら、無念そうに呟く。


 パシーン!

 直後、その後頭部をウミが勢いよく叩く。


「何、訳わかんない世界に入り込んでるんだぁ!」


「イテッ」


 続いて俺のふくらはぎに小さな衝撃。

 目をやるとジルヴァラが怒りの表情でこちらを睨んでいる。

 どうも、彼女のローキックが俺のふくらはぎに炸裂したようだ。

 ……何で?


 疑問を口にする前にジルヴァラの口が開く。


「アンタ、私を守りなさいよ!!」


 そう、理不尽な事を叫んだ直後、彼女の目から大粒の涙が溢れだす。

 そして、両手で顔を覆いしゃがみ込んでしまう。


 とんだ流れ弾を食らった……。


 しゃがみこんだジルヴァラの横でワンコが大きな欠伸をした。


 掛ける言葉が見つからず、ウミに目を向ける。

 俺の視線に気付いたウミが、口だけを動かして、何かを伝えようとしている。


 何だ?


 口の動きをよく観察する。


 お……ご、え、ん、あ、さ、い……ごめんなさい!

 お、え、ね、え、あ、ん……おねえちゃん!


 それじゃねぇ!!

 絶対違う!!


 首を横に振って拒否。

 残念そうな顔で小さく頷くウミ。


「ジル、アホが驚かしてごめん!!」


 ウミがジルヴァラの横にしゃがみ込みながらそう声を掛ける。


「お詫びにケーキバイキングご馳走させるから」

「え!?」


 驚くアホ。

 しかし、ウミのその提案に、ジルヴァラは俯いたまま首を横に振る。


「駄目かぁ……」

「……専門店」

「ん?」

「チョコ専門店」

「おお! あそこか! よし、そこでおかわりし放題でどうだ」

「……許す」


 ジルヴァラは俯いたままだが交渉は成立したようだ。


 たしか、結構高い店だった気がする。


 ◆


 という訳で、場所を変え、おしゃれなカフェにて再度顔合わせ。

 ジルヴァラとウミ、そして少女とウミが連れてきたもう一人の前に、ケーキの皿が所狭しと並ぶ。

 見ているだけで胸焼けがしてきそうだ……。


 そして、事の発端となったアホの前には水だけ。

 まぁ、反省しろという事である。


「うん。おいしい!」


 ケーキを口に運び、少し機嫌を直したジルヴァラ。

 その足元でワンコが肉をかじっている。


 お前も、ホントは主人を守らなきゃいけなかったんだからな?

 そんな視線を投げかけるが、当のワンコは欠伸を一つ返し、また肉にかぶりつく。


「済まないことをした。この通りである」


 アホがテーブルに手を付き、深々と頭を下げる。


「猛省しろ!」

「アンタもよ!」


 俺の言葉に、何故かジルヴァラから流れ弾。

 解せぬ!

 そのアホが、顔を上げ今度は俺の方を見る。


「お前もいずれは倒すべき敵。雪辱は果たさせてもらう!」


 ……。


「雪辱?」


 暫し、考える。


「……誰だっけ?」

「ふ、強敵ライバルの名を忘れるとは……」

「ウミ、コイツ、面倒くさい!」

「うん。知ってる!」

「で、誰なのよ? 知り合い?」

「おお……魔王よ……我が名を記憶に刻み込め。我は」

「ウミ、コイツ、無理」

「え、他にアテないんだよ。みんなイベント行ってるから」

「まぁ、待て。強敵ライバルよ……」

「良いよ。じゃー、六人と一匹でも何とかなるだろ。ならなかったら傭兵雇おう」

「そっかー。まーしゃーないね」

「スイマセンでした!!」


 やっとアホが面倒なキャラを捨てる。


「で、名前は?」

「クロムです」

「「あー」」


 俺とジルヴァラの声がハモる。


 居たね。そんな人。

 闘技大会に。

 俺とジルヴァラ、二人に負けた珍しい人だ。


「こんな面倒な奴だったのか」

「スイマセン……。暴走しすぎました」

「どうする?」


 ジルヴァラに確認。


「何のつもりなの? さっきの」


 ジルヴァラがアホに問う。


「僕は……勇者です」

「ほー」


 英雄より格下の勇者さんか。


「説明になってないわ」


 ケーキを食べながら睨みつける魔王様。


「勇者は……魔王を倒す定めです」


 小さくなりながら答える勇者君。


「そんな理由で私に剣を向けたの?」

「……はい」


 ジルヴァラはチラリを俺を見る。

 ん?

 俺のターン?


 ……。

 しゃーない。


「愚かなる勇者よ。

 お前はその力に振り回され、勇者の本質を見失っている。

 その剣を向けるべき相手は本当に我が主か?

 考え、自分を見つめ直せ。

 それでもなお、主に剣を向けるというのなら、その前にこの槍がお主を貫いて見せよう」

「力を持つのなら、その力の意味を考えなさい。そして、力を振るうならその結果も考えなさい。

 それが出来なければ、力を振りかざす資格はありません。

 愚かな力を振りかざすのならば、私の炎がその身の全てを飲み込み無に返しましょう」


 偉そうに勇者を諭す、魔王と副官。

 ウミと少女は、慣れたものなのか気にせず皿の上にケーキを次々と退治していく。


「ならば! その力の使い方とやら、間近で見せて貰おう!」


 魔王を指差す勇者。


「はい。めでたしめでたし。おかわり注文するよ」


 ウミが、皿を片付けながら締めくくる。

 おっかしいな。食べ物の無くなるスピードが異常なんだよ。

 ま、俺の懐が痛むわけじゃないから良いけど。


「アンタも! 偉そうなこと言うならもうちょっと私に気を使いなさいよ!」


 そして、魔王から部下に流れ弾。


「さーせん。街中なんで油断してました」

「バーカ!」


 それ、足元のワンコにも言ってやれよ。


「で、こんなバカみたいな状況に黙って付き合ってくれる彼は?」

「あ、すっかり忘れてた!」


 良いのか? そんな扱いで?


彼女・・獅凰しおうちゃん!」

「あ、女性か。スイマセン。ハルシュです」


 ショートカットなので分からなかった。

 黙々とケーキを食べる獅凰に頭を下げる。


「……」


 何も言わずに頭を下げ返す獅凰。


「ジルヴァラです。宜しく。こっちはリヒト。あと、妹キャラのアリアシア」

「よろしくおねがいします」


 いつの間にか妹キャラにされている少女がジルヴァラと揃って頭を下げる。

 それに、黙って頭を下げ返す獅凰。


 ……。


「いつもあんな感じ?」


 ウミに問う。


「いっつもあんな感じ!」


 そっすか。


「えっと……いや、何でも無い」


 勇者アホとは違った意味で面倒そうな……。

 いや、静かな分まだマシか。


「おまたせしましたー」


 そこへ、最後の一人。

 リーザが入って来た。


「リヒトちゃーん! 大っきくなったー!!」


 そして、真っ先にワンコの所に行く。


 こうして七人の臨時パーティが結成されたのだ!

 不安しか無い!!


「えっと、戦い方を聞いといても良いかな。俺は槍と銃と回復。ジルヴァラとアリアシアは魔法」

「やっぱり、アリアも戦うの?」


 と、ウミ。


「ま、出来る範囲でな」

「がんばります!」

「危なくなったら俺がフォローするから気にせずに」


 ジルヴァラが若干不満気な視線を投げかけてくる。

 お前は自前の盾があるだろうに。


「勇者は……剣か」

「あと、土魔法をちょっと」

「で、獅凰は?」

「彼女も近接だね!」


 返事はウミから。


「……ヒーラーは?」


 俺の問に、ウミとリーザが俺を指差す。

 ですよね。


「いや、真面目な話、腕を再生させる程のヒーラーってまだそんなに居ないよ?」

「そうか……じゃ、聖女様だな」

「「「はあぁ?」」」


 ウミとリーザとジルヴァラが声を揃え、睨みつける。

 そこまでの事か?


「了解。さて、そろそろ気分は治まりましたか? 魔王様」

「まあまあね」

「じゃ、行こう。リーザは来たばかりで悪いけど」

「大丈夫です。後でまた来ますから」

「私も!」

「あ、あの私も」


 ウミと少女が、リーザの再訪に同行の意を示す。

 ……マジで? 既に回転寿司並に皿が積み上がってるんだけど。


「獅凰も良いかな?」


 顎を引いて同意を返す彼女。


「じゃ、支払い宜しく!」


 満面の笑みを勇者に向ける。


「宿代が……」


 何か呟きが聞こえたが気のせいだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作もよろしくお願いします。
サモナーJK 黄金を目指し飛ぶ!
https://ncode.syosetu.com/n3012fy/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ