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16 裏のスキルを教わる

『西から迫っておるぞ。休む暇は無いぞぉ』


 通信機越しに、しわがれた声。


「あいあい」

『ちょっと、休憩……』

『ウミ、後ちょっと!』


 俺にとって初めての夜の狩り。


『範囲魔法を放つぞぉ。巻き込まれるで無いぞぉ』

『え、ちょま!』

足を取る水(スリッパリー)

『いやー転んだー』

『ウミ、大丈夫? あ、キャー!』


 念には念を、という事で魔法使いの傭兵を雇った訳だが。


『ホラ。しっかりせい』

『滑る! 立てない! キャー!』

『ウミ、後ろ!』

切り裂く風(エア・シックル)!』


 結果はご覧の通り、大混乱である。


『リーザ、立って』

『立てないー!』

貫く投槍(サール・ジャベリン)


 リーザに近寄ろうとしていたグレイウルフを武技で葬る。


『これでノルマは達成じゃな。ほら、次が来る前にとっとと帰るぞい』

「二人共、引き上げよう」

『はいー……離脱リーヴ

離脱リーヴ

「じゃ、爺さん、お先」

『直ぐ追うぞい』

離脱リーヴ


 スキル発動と共に目の前の景色が一変。

 森の中から、見慣れた街中へ。

 そして、疲労の表情を隠しもしない二人組。

 どちらも盛大に転んだのだろう。

 全身泥だらけである。

 全身、泥だらけである。


 いっそ、脱いだら良いのに。


 ◆


「はい。確かに。依頼達成です。お疲れ様でした」


 ツンツンした感じのギルドの受付嬢に報告。


「ウミさんとリーザさんは、これでギルドランクΔ(デルタ)です。おめでとうございます」


 おめでとうと言う割にニコリともしない受付嬢。


「イエーイ」


 しかし、それには構わず嬉しそうにハイタッチを交わすウミとリーザ。


「さて、今日の狩りはもうおしまい。と言うか夜は厳しそうだな」


 俺は、素直な感想を伝える。


「そうね。それにお風呂で汚れを落としたい! リーザ行こう。一緒に入ろう!」

「え、う、うん」


 ウミがリーザの手を掴み、ギルドから出ようとする。


「あ、俺」


 俺も、一緒に!

 そう言い切る前に振り向いたウミから凍りつくような視線。


「……は、ちょっと調べごとしたいから……今日は、自由行動で……」


 調べごとなんか無いけどな!

 いや、まぁ、無いことも無いか。


「そっかー残念! またねー」


 アイツの芝居掛かった口調が無性に腹が立つ!

 ウミに手を引かれるリーザが振り返り、ニッコリとして小さく手を振る。

 なんだ。ただの天使か。


 置いてきぼりになった俺は、ひとまずギルドの椅子に腰掛ける。


「ふー、帰ったぞい」


 ややあって、そう声を発しながらギルドの扉を開ける人物。

 先程の傭兵。

 年老いた魔術師。

 名前は確か、ガウナ。

 白髪で骨の浮き出たジジイだ。


「待ってたぞ。爺さん」

「おや、お疲れさん」

「まだ、時間は残ってるだろ? ちょっと付き合え」

「やれやれ、年寄り使いが荒いの」


 うっせ。


 ◆


「で、何の用じゃ?」


 ジジイが勝手に入ってしまった酒場のカウンターに二人並んで座る。


「まずは通信機返してもらおう」

「……ほれ。それが用事か」

「まさか。この先返答次第ではギルドにあんたの働きが悪いって苦情入れるからな」

「そりゃおっかないの」


 言葉と裏腹に大して気にしてなさそうな口調で答える。


「あんたさ、もう少し戦い方あっただろ?」

「何か不満か?」

「何で、夜中に地面を泥まみれにするんだよ」

「足止めじゃ」

「こっちは別に手練じゃないんだよ」

「そんなのは知らん」

「ふざけてたんだろ?」

「そうじゃ」


 このクソジジイ。


「大体、他に敵もおらんかったし、狼の二匹ぐらいでやられる様な輩でもなかろうて」

「だから、女二人が泥まみれで組んず解れつしているところをじっくり拝もうとした、と」

「いや、三人じゃ!」


 このエロジジイ!

 だが、その気持はわかる。

 そして、そうか、あの場で俺も滑って二人に絡み付けばよかったのかと、そこまで考えが至らなかった事を反省する。


 いや、それよりもだ。


「他に敵が居ないって、随分目が良いんだな」

「伊達に年は取っておらんのでな」

「どういう仕組だ?」

「……酒が飲みたいのぉ」

「……一杯だけな」

「話が早い。エールをくれんか」


 下卑た笑いを浮かべた後、カウンターに酒を注文するジジイ。

 すぐさま、カウンター越しにグラスに注がれたエールが置かれる。

 ジジイはそれを一気に半分ほど流し込む。


「ふぅ。他人の金で飲む酒はまた格別じゃな」


 そりゃそうだろう。


「で、なんじゃったかな」

「目が良いって話だ」

「おお、それか。暗視のスキルを持っとるからの」

「暗視?」


 初めて聞くスキルだ。


「聞いたこと無いな」

「そうか。まっとうじゃな。裏でしか買えん」

「裏?」

「裏、もしくは闇」


 そう言って、残りのエールを一気に流し込む。


「どうすれば買える?」

「普通の人間には入れんよ」

「どうすれば買える?」

「もう一杯良いか?」

「……ああ」


 エールのおかわりを貰い、そして、今度はゆっくりと一口飲むジジイ。


「レグルスの路地裏にある。場所は教えてやってもいいがの」

「場所、は?」

「それだけじゃ入れん。紹介状が必要じゃ」

「はぁ?」


 何だよそれ。

 結局酒二杯おごって無意味な情報手に入れただけか。


「まぁ、書いてやらんこともない」

「頼む」


 それならそうと早く言え。クソジジイ。


「仕方ないのぉ。紙とインクを貸してくれんか」


 そうカウンター越しに酒場の主人に声を掛ける。

 主人は黙ってジジイの前に紙とインクを置く。

 そして、ジジイは紙に何やら文章を書いた後、目を瞑ってその上に手をかざす。


 ……長いな。

 三分、いや、五分程そうしていたか?

 やがて、ゆっくりと目を開ける。


「ほれ。これを持っていけ」


<『レグルス・闇ギルドの紹介状』を入手しました>


 紹介状か。

 それにしても、やけに時間かかったな……。


 グラスをあおるジジイ。


「で、場所は?」

「今、地図を書こう。すまんが紙をもう一枚くれんか」


 再び無言で紙を置く酒場の主人。

 置かれた紙に線を引き、そして地図を書き込んでいく。

 そして、完成したその地図をなぞりながら説明を始める。


「ここに武器屋がある」

「ああ、多分行ったことがある」

「その先の、小さな路地を曲がる。暫く行くと、誰か立ってるはずじゃ」

「誰か?」

「そいつにさっきの紹介状を渡すのじゃ」

「ふーん」


 怪しさ全開だ。

 さすがは闇ギルド。


 説明が終わるとジジイは、グラスに残っていたエールを全て飲み干す。

 そして、こちらをちらりと見る。


「お代わりは無いぞ」

「そうかい。では帰るとするかのう。ギルドまで送ってくれ」


 ジジイの飲み代を支払い、ジジイをギルドまで送る。


 この情報料が高いか安いかは、まだ判断がつかないな。


「じゃな」

「おう。また声を掛けてくれ」


 多分それは無い。

 そう思いながらギルドを立ち去ろうとした。


「ハルシュさん」


 しかし、受付嬢に呼び止められる。

 向こうから声を掛けるのは珍しいな。


「何ですか?」

「ガウラさんの契約ですが、時間がオーバーしています。五分程ですが」

「え」

「延長料金をお支払いください。尚、料金は一時間単位となりますのでご了承ください」


 あのジジイ!

 これを見越してゆっくりと紹介状書いたんじゃないだろうな!?

 いや、きっとそうだ!!

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