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ブラッドVSホムンクルス

ホムンクルスがブラッドとの距離を詰めてくる。


ホムンクルスはローブを深く被っているので全貌は見えないのだが身のこなしは素晴らしいと言えよう。


ブラッドの放った大地魔法を躱しながらも、こちらに近付いてくる。



ブラッドは2本のレイピアを顔のまえで十字にクロスさせた。


そしてレイピアの奥から、冷たい眼光でホムンクルスを見つめている。



「フン……。ホムンクルスですか? 私にレイピアで挑むとはね。」


ブラッドが呟くのとほぼ同時に、ホムンクルスは急激に速度を上げ直線的に飛び込んできた。




ホムンクルスは速度を落とさずレイピアで突き技を繰り出すが、ブラッドはその攻撃を右のレイピアでいなしていく。



そして間髪入れずにに左のレイピアでホムンクルスを袈裟斬りにする。



ホムンクルスは即座に後ろへ飛び退くが、ブラッドのレイピアは被っていたローブを切り裂いた。



その切り裂かれたローブの隙間から見えたホムンクルスの姿は……。



セドは笑いが堪えられないように自分の顔を抑えている。


「クックック……フハハハハッ!! ブラッド君! この間は素敵な置き土産をありがとう!」



その声を聞き、ブラッドは訝しげに問い掛けた。


「土産だと?」


セドは両手を大きく広げた。


「ああ! 最高の置き土産だよ! ブラッド君。キミの左手はひとつの生命体となったのだ! フハハハハハアッ!」


「−!」


あまりの事にブラッドは絶句する。


まさにホムンクルスはブラッドは生き写しだったのだ。



しかし、人工生命体がこんなにも早く出来るものなのだろうか?


(……!!)


俺は気付いてしまう。



もしかしたら昨夜見た夢は夢ではなく、現実だったのではないか?


すると、このホムンクルスは……俺?



いや。


それはない。


意識を乗っ取れるのは俺の細胞を食べた者だけなのだ。


ホムンクルスの母体となったブラッドは俺の細胞を食べていないはずだ。


そして俺の疑問はすぐに晴れる事となる。



「ああ。ブラッド君。私は優しいからな。君の願いは叶えておいたよ。」


セドは歪んだ笑顔を見せてもう一人のローブを取り去る。



そこには銀髪の少女が立っていた。


サラサラと流れる長い髪がキラキラと輝き、神々しく見えた。


どことなくフェンリルにも似てるし……ヘルにも似ている。



「銀狼のホムンクルスだ。美しいだろう! 君達、二人の髪から作らせてもらったよ!」



セドは俺とフェンリルを指差し狂ったように笑いだした。


(あの時か!)


俺はセドの城でのやりとりを思い出す。



ブラッドが、俺とフェンリルの髪を切りセドに渡した事を。


その後、俺がセドに戦いを挑んだ為、ブラッドとセドの仲は一気に悪化したはずだ。


その後、セドは銀狼族の髪を回収し、その細胞を使ってホムンクルスを作ったのだろうか。



だが、見方を変えればこれはチャンスである。


昨夜、俺が見たものは、きっと銀狼のホムンクルスが見た映像であろう。


髪とはいえ、俺の細胞が入っているのなら乗っとる事が可能である。


(セドの野郎! 後ろからぶん殴ってやるぜ!!)


俺は銀狼のホムンクルスとリンクを繋げようとする。


(あれ?おかしいな?)


そう。反応がないのだ。


昨日、映像が見れたのだから、ホムンクルスに俺の細胞が含まれているのは間違いない。


俺は何度もリンクを試みようとする。



……が。ダメだった。


セドは銀狼のホムンクルスの髪を撫でて薄気味悪くこちらを眺めた。


「この銀狼のホムンクルスはオスだ。銀狼の娘さん達。私の仲間にならないかね? 銀狼族を復活させたいのだろう?」



フェンリルは黙ってホムンクルスを見つめている。


俺はどうするべきなのだろうか?


銀狼族としては命を紡ぐチャンスが訪れている。


しかしこれは……。


黙っている俺達を見てセドは続けた。


「ホムンクルスが生殖機能を持っているかデータが取りたいのだよ。私の研究の為に協力したまえ!」


「……。」


「は? 誰か何か言ったかね?」


セドはキョロキョロと周りを見渡す。


「……。」



「あん?銀狼のホムンクルス君か?私に何か言いたいのかね?」


セドが銀狼のホムンクルスに近づいたその刹那である。


銀狼のホムンクルスが突如牙を剥き、一瞬でセドの首を切り落としてしまったのだ。


あまりの出来事に、俺達は茫然と立ち尽くす。


俺は、何もしていない。


いや。何も出来なかった。


銀狼のホムンクルスとのリンクは今もって出来ないのだ。



銀狼のホムンクルスは、地に落ちたセドの首を冷たく見下ろす。



「我が名は、バランサー。世界の秩序を守る者なり。セドよ……貴様は命を弄び過ぎた……。」



「バランサーだって!?」


俺は大声を出してしまった。


俺をこの世界に連れてきた者。


このチート能力を与えてくれた者。


そして……わざとなのかどうなのか未だに謎ではあるが、俺を牧草にした者である。



まさか再び声を聞く事になろうとは。

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