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幼馴染み3

ブラッドが話を終え、深い溜め息をひとつ吐くと、部屋には沈黙が訪れた。


ブラッドと銀狼一族の間にそんな過去があろうとは。


ヘル(俺)の肉体で見えた映像は村を破壊された時の記憶だったのか。


そして……。


この元勇者は俺と同じ経験をしたのだろう。


俺もオーク村に辿り着いた時には、魔獣に文化があり、そして名前がある事に驚いたのだ。


魔獣は悪しきものなのか?


それは人間界の誰に聞こうとも同じ見解だろう。


しかし、魔獣という、ひとくくりで全てを悪、人間の敵だと騒ぎ立てるのはいかがなものなのか。


もちろん人間にも言い分はある。


だが魔獣にだって言い分はあるのだ。



きっと人間も魔獣も、自分の持つ正義という名の下に生きているのだろう。


もしかしたら、お互いの正義は決して相容れないものなのかもしれない。


しかし、正義が違うからといって、相手の住む世界へ土足でドカドカ入ってはならないと俺は思う。


もちろん、今、俺が思っている事でさえ、俺の中の正義でしかないのだが。


しかし、そんな矛盾を抱えながらも解決に向けて模索できるのが人間なのではないか。


俺はそう信じたい。


きっとこの元勇者もそんな矛盾を抱えながら歩んできたのだろう。


そして……現勇者であるミントもオーク村で過ごしていた時間は、大いなる矛盾に苦しんでいたのかもしれない。



しかし、きっとミントも魔獣であるオーク村の住人を理解しようとしていたのだろう。


だからこそユグドラシルとオーク村の国交を結ぼうと勇気ある決断をしてくれたのだ。


静かに耳を傾けていたロンベールが意を決したように口を開く。


「ブラッド。今の王女に会ってみないか?」


「な……何を言っている。僕は数日前にユグドラシルを攻めた人間だぞ。どのツラを下げて会いにいけると言うのだ?」


その問いにガーネットが口を挟む。


「そのツラでいいんじゃないか?」



ブラッドは金魚のように口をパクパクさせた。


いや。


俺ですら唖然とする提案だ。


前女王はミントの母だぞ。


会った途端に戦いが始まるのではないか?


俺の心配を他所にロンベールは言葉を続ける。


「今の女王様ならきっとブラッドの気持ちを理解してくれるはずだ。それに、お前が諦めていた相互理解の扉がひとつが、もうすぐ開かれるんだぞ。」


「相互理解の扉だと?」


「ああ。女王就任式展の目玉だ。ユグドラシルとオーク村の国交を結ぶ調印式が行われるんだ。」



「なんだって!? ユグドラシルがオークと国交!?」


ブラッドの驚いた声を聞きロンベールは愉快そうに笑った。


そしてガーネットが、ブラッドの背中を叩く。



「安心しろブラッド!女王がお前を裁くようなら、俺達も一緒に裁かれてやる!なあロンベール!!」


「え……?いや。アッシは……。」


ガーネットがジロリと睨むと、ロンベールは徐々に覚悟を決めた男の顔に変わっていく。


「よし!決まりだ!女王就任式と調印式は明日だ。今日は皆、俺の家でゆっくりしていけよ。」


そう言うが早いか、ガーネットは消毒に使ったお酒をブラッドとロンベールに振る舞う。



三人は今までの時間を埋めていくように、昔話に花を咲かせている。


盛り上がる三人を他所にフェンリルが俺の手を強く握ってきた。


フェンリルの顔を覗いたが、黙ったまま、不思議な表情を浮かべている。


そして宴は深夜迄続いていくのであった。


静寂の夜を迎え皆が眠りについた頃、俺は不気味な夢を見る事となる。



夢の中の俺は青い液体の中に沈んでいた。


瞼を開くと二人の人間が狂喜に満ちた目で俺を覗き込んでくる。


その姿は見覚えがあった。


セドとエリクシールである。


「セド……ここは素晴らしい環境ね。」



「ああ。魔獣は兵隊にもなるし、研究材料にもなる。魔獣など泉の水で幾らでも傀儡にできるからな。」 



「素晴らしいわね……でもセド。魔獣を傀儡にする魔力はどこから供給しているの?」


セドはニヤリと笑う。


「オークの村に魔法陣が張り巡らせてあると言っただろう。魔力の供給源は、あの村の者達な力だ。」



「オークから?彼等は魔力が少ないんじゃないの?」


「元はエルフの者達だ。体内の力を数値化でも出来る者でもいれば分かりやすいが、エルフがオークになると魔力は低下する。では元々ある魔力はどこにいくと思う?」



「わからないわ。」


「魔力はオークの体内に収まらず霧散し続けるんだ。オークには魔力を体内に留める器がないからな。それを回収するのが、私の仕掛けた魔法陣というわけだな。」


セドは誇らしげに両手を広げる。


「……魔力について私はまだまだ学ぶ事は多そうね。」



そう言うとエリクシールは肩を竦めた。



「いやいや。エリクシール。君の研究の成果は素晴らしいよ。見てごらん。この出来を。まさに命の実だ。」


セドは、興奮した様子で俺を指差したのだった。

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