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幼馴染み

ロンベールはブラッドの腕を引いて家に向かう。


そして。


俺にまとわりついてくる牛達。


(……俺の事わかるのか?)


俺が牛になった時に見た牛もチラホラいる。


ジェードになった時も歓迎されていたし、なにか伝わる物でもあるのだろうか?


しかし亜人とは言え、狼にまとわりつく牛など異常な現象である。


犬好きな者には犬がなつくのと同じ現象なのだろうか?



俺の後ろではフェンリルが牛を見ながらヨダレを垂らしている。


同じ牛好きでも牛肉好きからは牛は距離を取るみたいだ。


(まあ俺も牛肉好きだけど。)


頭に浮かべた途端、牛がスッと距離を取った。


うん……賢い動物である。


俺はフェンリルに話しかけた。


「この牛は、ブラッドのお友達の牛だから襲っちゃ駄目だぞ。」


「うー。わかったよー。」


フェンリルは口をモゴモゴ動かしている。


エア牛肉でも食べているのであろうか?


「着いたぞ。」


ロンベールが声を出すが、そこはロンベールの家ではない。


裏の小屋からは煙が上がり、トンカントンカンと金属を鍛える音がする。


(ガーネットの家だ!)


俺は前にお邪魔しているから分かるが、ブラッドはわかっているのだろうか?


ロンベールはブラッドの腕を引いたまま、裏口に回る。


即座に金属を鍛える音が消えてガーネットが出てきた。


「ブラッド!てめえ!どのツラ……ってか!怪我してるじゃねぇか!ロンベール!なにやってんだ!俺のベッドに寝かせとけ!」



そう言って駆け出したガーネットは包帯と液体の入ったビンを持って戻ってくる。


「僕は大丈夫だ。」


「これだけ血塗れで大丈夫なワケねえだろう!」


ガーネットはブラッドの服を捲り上げるとビンに入っていた液体を口に含む。



プーッっと吹き掛けると部屋中にお酒のニオイが広がった。


そしてガーネットが気づいた。


「あれ?ブラッド。傷が塞がってないか?」



「だから大丈夫だと言ったろう。お前達二人は相変わらず人の話を聞かないな。」


仏頂面のブラッドだが、セドと対面した時とは違う。


なにか独特の雰囲気があるのだ。


それよりもこの三人は先日、剣を合わせたのに忘れているのだろうか?


親友って凄いなと思った矢先だった。


ゴツンと鈍い音がしたのだ。


「な!なにをする!」



「なにをするじゃねーよ!親友に剣を向けた罰だ!」


ガーネットの職人らしい太い腕で放った拳骨だ。


相当、痛いのだろう。


不老不死のブラッドが殴られた頭を押さえている。


「あと勝手にいなくなった罰と、なんなら俺達を心配させた罰が残っているぞ。」


ガーネットが再び拳を握る。


「わかった!わかった!僕が悪かった!赦してくれ!」


慌てるブラッドだが、口許は少し緩んでいた。



この三人の関係は言葉ではないのだろう。


幼馴染みであり、そして一緒に旅をし、苦楽を共にした親友。


なによりこの三人の中で、ガーネットの親分肌っぷりには驚いた。


あのブラッドがタジタジである。


「おーい!ロンベール!あれがあっただろう。茹でといてくれ。」


「あいよー!」


うん。


ロンベールの立場は予想通りであるが、彼がいると場が和むから不思議だ。



ブラッドが口を開く。


「ロンベールは牛飼いになったと聞いたが、ガーネットも女王の子飼いは辞めたのか?」


「あ?ああ。お前が行方不明になってから、俺も足を洗った。あんな胸くそ悪い仕事は、もう懲り懲りだ。とは言っても武器を作ってるから変わんねーがな。」



「武器……か。」


「ああ。綺麗事言うつもりはない。だがこれ見ろよ。」


ガーネットは一振の包丁を取り出す。



「いまだに魔獣の被害はあるから武器は必要だ。だが、いつか武器が不要になる時が来るんじゃないかと思って、今から練習してるんだぜ。」


その包丁を手に取りブラッドが笑い出す。


「ハハッ。鬼のガーネットが包丁か。似合わないな。」



(…鬼のガーネット?)


やっぱこのガーネットオジサンは凄い人だったのか。


毛根治せなくてゴメン。



「できたぞー!」


そうこうしているうちに、ロンベールが茹で上がったトウモロコシを大皿一杯に載せて持ってきた。



「俺が包丁を打ち始めた理由の1つがこれだ。食べてみてくれ。」



部屋に甘い香りが充満する。


「これは?」


「まあいいから食べてみろよ。」


ブラッドはトウモロコシにかぶり付き驚きの表情を浮かべている。


「……甘い。」


「あまーい!!」


(フェンリル早いよ!!)


「そちらのお嬢さんも食べな。」


ガーネットは俺にトウモロコシを渡しながら続けた。


「そのトウモロコシはオーク村産だ。俺もロンベールも、そのトウモロコシの大ファンだ。」


「オーク村産!?」



「ああ。あの魔獣のオークだ。ブラッド。お前が行方不明になった事で俺達は考えさせられた。このまま魔獣を滅ぼすまで戦い続けるのかと。」


ブラッドは静かにガーネットの言葉を聞いている。


「だが、魔獣だって話せばわかると気づいた。その切っ掛けをくれたのがジェードだ。」



「……ジェード。」


その言葉を聞き、ロンベールが口を挟む。



「あの闘技場にいたエルフの兄さんだよ。」



ブラッドはハッとする。


そして呟いた。


「僕はその夢を諦めてしまっていた。人間界と魔獣界の相互理解など築けはしないと……そんな明るい未来の芽を僕は……狩り獲ろうとしてしまっていたのか……。」

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