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朱に染まって立ち尽くす姿。


俺はブラッドの左腕が無い事に気付く。


「おい! ブラッド!大丈夫か?」



俺はブラッドに駆け寄り体を支えると、膝の力を失い俺に凭れかかってきた。


手のひらにヌルリとした血の感触がする。


その刹那、俺の意識がフラッシュバックする。


血塗れになった銀狼族の男?


泣き叫ぶ……俺?


なんだこれは?ヘルの記憶か?


俺は右目を押さえる。


そしてブラッドは声を絞り出した。


「う……ん。大丈夫だよ。フェンリルもヘルも無事で良かった。」



「人の心配している場合か! ブラッド! 凄い傷じゃないか!」


俺はフェンリルに声をかけ、二人でブラッドを静かに寝かせる。



「大丈夫。寝てれば……治るから。」


ブラッドの服を捲ってみると、みるみる傷が塞がっていく。


失った腕も徐々に再生を始めているようだ。


(……これが不老不死の力か。)


「でも今回は血を流しすぎたみたいだ。頭がクラクラするよ。」


俺達を心配させまいとしているのかブラッドはゆっくりと体を起こす。



そして俺の頭を優しく撫でた。


「ヘル……大丈夫だったかい?怖かっただろう。」


ブラッドは俺を責めないのか?


「……なんで?」


俺は、この一言しか出せなかった。


「いいんだよ。この計画は僕が勝手に進めた事だし、付き合わせて申し訳なかった。」


「計画?」


なぜブラッドがセドと接触をしていたのか?


俺の推測が間違いなければ……。


「……うん。君たちはまだ子供だから言わなかったんだけど……。」


いつもの飄々としたブラッドではない。


口込もっている。


「もしかして、銀狼族のホムンクルスを作ろうとしたのか?」


「ヘル……そこまで分かってたのか?もしかしてそれが嫌でセドを?」



俺はその問いには答えられなかった。


滅びゆく一族のヘルなら、なんと答えるだろう?



なんらかの理由で滅びゆく宿命を負ったフェンリルとヘル。


本当の答えは彼女達にしか出せないであろう。


そしてフェンリルが口を開く。


「ホムンクルス?……それは仲間なの?」



俺もブラッドも絶句してしまった。


俺達の細胞から作られたホムンクルス。


その命はどこから来るのか?



命は自然から生まれてくるのであろう。


それを錬金術により器となる肉を作る。


セドの居城にはメイド姿のホムンクルスが存在していた。


確かに動いていたし意思もあるようだったのだが、なぜか命が希薄な感じを受けたのだ。



ではホムンクルスは仲間なのかと問われれば答えが出ない。


俺はフェンリルに伝える言葉を持っていないのだ。


俯く俺とブラッドを見たフェンリルは無造作に飛び込んでくる。


「私にはブラッドとヘルちゃんがいればいいんだもんー!!」



フェンリルの艶やかな髪とそよ風が俺の頬をくすぐっていった。



ブラッドはフェンリルの背中をポンと叩く。


「そうだな。俺が間違っていた。フェンリルに教えられたよ。」


フェンリルは満面の笑みを浮かべる。



その顔を見てブラッドはフェンリルの頭をクシャクシャと撫でた。



「さて。これからどうするか?」


ブラッドの視線が空を切ると一人の男が声をかけてきた。



「ブラッド! ブラッドじゃないか!」



(ロンベール!!)


まさかの登場である。


切っ先向けられて数日しか経っていないのに声をかけるとは考えられない。


「おや。誰かと思えばロンベールではないですか。」


ブラッドは身構える。


そんな事はお構いなしでロンベールは駆けてきた。


「ブラッド! 腕はどうしたんだ? 怪我してるじゃないか!」


「貴方には関係ないでしょう?」


「関係ある! 仲間だろ!俺の家に来い!治療してやる!」


ロンベールはブラッドの右腕を掴む。


ブラッドは振りほどこうとするが、ロンベールは離さない。



ロンベールは顔を近付ける。


「ブラッド!仲間だろ!」


「フン。あれから、あなたはいくつの種族を滅ぼしたのですか?」



「否定はしない。しないが俺もお前が村を後にしてからは戦いを止めた。今は牛飼いのロンベールだ。とにかく話は治療の後だ!来い!」



ロンベールはブラッドの手を引っ張る。


こんなに気迫の籠ったロンベールは初めて見た。


フェンリルは警戒していたが、俺が制止する。


ロンベールは続ける。


「親友を失う後悔を二度もさせないでくれ!」


その声を聞き、ブラッドの力が抜ける。


そしてロンベールの家に向かう事になったのだ。

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