表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/44

セドの居城2

「では銀狼一族のお嬢さん二人の髪を貰えるかな?」


セドは陽気に口を開く。


「髪か?必要ならば仕方ないだろう……が、二人とも女の子だし。全部じゃないだろうな?」



「ああ。魂の情報として必要なだけだ。そんなに沢山なくても大丈夫だが……お嬢さん。いただけるかな?」



セドは近くに座っていたフェンリルの髪を触ろうとしたが、フェンリルは椅子をズラして距離を取る。


「ハハハ。嫌われてしまったようだ。ブラッド君。後で構わないから二人の髪を持ってきてくれたまえ。」


なんだか薄気味悪い話をしている。


魂の情報?ホムンクルス?命の実?


それは神の領域に踏み込んでいるのではないか?


俺は無神論者だったのだが、この世界に来る時、バランサーと呼ばれるナニカと話しをしている。


異世界に来てすぐに牧草にされた俺は今や無神論者ではないのだ。


「ああ。そういえばブラッド君。オークの呪いを解いた者は見つかったかね?」


「いや。わからないままだ。」


ブラッドの返答を聞いたセドは椅子に深く沈み込み腕組みをする。


「うーむ。あの村には私の描いた魔方陣が張り巡らされているから、勘違いという事はないと思うのだが……。」


セドが巻いている眼帯の下から

怪しい光が洩れてきた。


(魔方陣?……それにコイツ……隻眼ではないのか?)



オーク村にも、セドという男にも何か秘密が隠されていそうである。


「まぁいい。またブラッド君には動いてもらうかもしれないが、よろしく頼む。」


「……ああ。」



それにしてもブラッドは、なぜセドの言うことを聞くのだろう?


フェンリルやヘル。


銀狼一族が関係しているのであろうか?


(というか、これ今チャンスじゃね?)


俺の目の前には村を呪い、ユグドラシルを壊滅した者がいるのだ。


白狼(はくろう)は部屋の外。


エリクシールはセドの仲間という訳でもないだろう。


問題はブラッドとフェンリルだが……。


ヘル(俺)がもしセドを殺したとしても俺の敵に回るだろうか?


敵になる可能性は0とは言わないが、敵になる可能性は高くはないと思う。


ブラッドはどちらかと言えば銀狼一族には甘い。


俺は鼓動を抑えながら周りに気づかれないように深呼吸をする。


その時!


ブラッドがレイピアを抜き俺に近づいてきたのだ。


(バレた!?)


呆気に取られてブラッドを見つめていると、優しい声でこう言った。


「……怖くないから。」


(いや!こえーよ!!)



ブラッドは俺の髪を摘まむとブツリと切った。



(…ああ。そっちか。)


先程セドが言っていた《魂の情報》の話だったらしいのだが、それにしてもレイピアで切る事はないだろう。


なんでも知ってる元勇者と思ったが、意外とガサツなところもあるな。


さすがロンベールの幼馴染みである。


少し抜けているところを見れてなぜか安心した。


そして今はフェンリルの髪を切ろうとしている。


何をするか分かっていてもやはり怖いのだろう。


フェンリルが涙眼になって怯えている。


そして今が最大のチャンスである。


ブラッドはこちらに背を向けている。



俺は静かに静かに呼吸を整えていく。


そして心臓の高鳴りを抑えて静かに立ち上がった。


そんな俺に気付いたのかセドはにこやかに微笑み俺に声をかける。


「どうされました?狼のお嬢さん。」



《ダンッ!!》


俺は床を強く蹴り、セドに向かう!



セドの目の前にある茶器に足が当たり大きな音を立てる!


俺は振りかぶった爪を振り下ろす!


だけなのだが……。


(体が動かない!?)


セドは冷やかな微笑みを浮かべて俺を見詰めている。


「どうされました……体が動きませんか?狼のお嬢さん。」



(……ぐうぅ!!コイツ!!)


セドは眼帯を外し不気味な色を放つ眼で俺を覗き込んでくる。


「なんのつもりかわかりませんが、貴女では私を殺るには力不足でしたね。」



「ぐ……ぅ…な……ぜ?」


俺は言葉を絞り出す。


セドは肩を竦める。


「貴女に説明する理由はありません。さて。狼のお嬢さん。どうしてやりましょうか?」


ブラッドが慌てて割って入る。


「セド!ちょっと待ってくれ!ヘルは何かに驚いたんじゃないか?」



「ブラッド……気持ちは分かりますが、明らかな敵意を感じましたよ。」




二人とも俺から視線が逸れる。


(今だ!)


俺は特技である(いかずち)を発動する。


敵ではなく自分にだ。


「ぐはっ!」


自分の雷の衝撃で体が動くようになった。


俺は扉を蹴破り部屋を飛び出した。


相手が悪い。今は引くしかない。


「白狼!その娘を斬りなさい!」


扉を出た俺の視線の先には元白銀騎士団の白狼が待ち受けていた。


俺は全力で駆け抜ける。


構えに入った白狼は抜刀の構えに入る。


(上か下か!?)


俺は体を沈め込み飛び越えようとする刹那、声が聞こえる!


「ヘル!跳んじゃダメーッ!!」


俺は爪を地に突き立て低い体制を維持し低い体制で駆け抜けた。



白狼の鋭い抜刀は《キィン》という音を立て壁にキズを入れた。


俺はそのまま駆け抜けていき、岩の扉の前に立つ。


「グラビディ!」


目の前の岩は沈み込み道が開ける。


とにかくここから逃げ出さねばならない。


俺は全力で森を駆け抜けていく。

主役の彼が異世界に来て初めて《敵》と認識した相手です。


いかがでしたでしょうか?


じわりじわりとした投稿で申し訳ございませんが、暫しお付き合いくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ