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ブラッド

「言葉ではなく…コレでやりあいましょうか?」


ブラッドはレイピアをこちらに向ける。



ふん。この人数とやりあう気か?


だいたい前回はミントにあしらわれていたくせに。


「あー。そうそう。多対一は騎士道に反しますよね」



ブラッドはそう呟くと大地を叩く。


ロンベールの時に見たような真円の魔方陣が現れる。



「あなた方には過ぎた相手でしょうが。暫しお相手を」



魔方陣の中央には二人の少女が立っている。


一人は長く艶やかな銀髪の少女。


もう一人はクルクルとした癖毛のある銀髪の少女である。


癖毛の少女はクルクルした髪を伸ばそうと摘まんでは引っ張っている。


「さぁ…フェンリル。ヘル。獲物は目の前だ。好きなだけ食べなさい」


少女の二人はジッとこちらを見つめている。


とても愛らしい。


戦いの場にいるべきではないような雰囲気なのだが…。


少女達はブラッドと何かを喋っていたが、こちらを振り向いた時にはニヤリと不気味に笑い、そして咆哮を上げた。


《ウォゥー!!!!》


犬!!?狼か?


少女達は四つん這いになり牙を剥く。


「まずいぞあれ!!」


ただならぬ雰囲気を感じた俺はフェンリルとヘルに向かって、鞭を叩きつけるのだが横に飛び退き躱された。


どうすべきか。


召喚師を仕止めるのが定石なのだろうか?


俺がブラッドに向かおうとした瞬間に腕を引っ張る者がいた。


ロンベールである。


「旦那…ブラッドはオイラがやります」


「やれるのか?」


「目を覚ましてやらなきゃ…」


俺はロンベールに問い直す。


「殺る覚悟はあるのか?」


「覚悟は…ないです。でも友が道を踏み外したのなら友が殴ってやらなきゃ!!」


強い瞳で俺を見返してきた。


その瞳の光は100の言葉よりも説得力がある。


しかしロンベール一人でブラッドを抑えるのは不可能だろう。


夜刀神は強いと思うが、ロンベール自身はそんなに強くないし。


サポート役が必要であろう。


「よし!!じゃあブラッドは俺とロンベールでやるぞ!!ミントはフェンリル。ミネヴァとシェルはヘルを頼む!!」


「「はい!!」」


「うむ!!」


皆は返事をし、闘技場に降り立つとロンベールは間髪入れずに夜刀神を召喚する!!


「ほう。夜刀神ですか?懐かしい。それとエルフの貴方。背中がお留守ですよ」


ブラッドの指し示した方に振り向くと、巻き毛の牙が俺の左腕に噛みつき…そして引きちぎった。


《グルゥゥゥウウ!!》



俺の腕から止めどなく血が溢れ出てくる。


(くうぅ…痛え…)


俺の姿を見てブラッドは無気味な笑顔を見せる。


「その傷ではそう簡単に治りませんね」


(ふざけんな!!)


自己再生を発動した俺の左腕がみるみる復元していく。


「ほぅ!!なかなかの化物っぷりですね。エルフのあなた!!面白いですよ」


ブラッドは俺の自己再生を興奮した様子で話している。


しかし、ヘルの相手を頼んだのは…。


会場を見渡すと、ヘルと戦っているハズのシェルは既に俯せに倒されており、ミネヴァは肩を押さえて跪いている。


あの一瞬で二人を倒したのか!!?


(ミントは大丈夫なのだろうか…!?)


ミントはフェンリルと激しい攻防を繰り返していた。


剣と牙で火花が散っている。



《グルゥゥゥ!!》


俺の左腕を乱雑に食べたヘルが再び牙を剥く。



「ふざけるな!! 」


俺はレイピアで間合いを詰めて突き技を放つ。


しかし俺の攻撃を左右に交わしていくヘルの速度は想像以上だった。


何度切っ先を向けてもレイピアが当たる事はない。


しかしヘル激しい攻撃は俺の体を朱に染めていく。



(…くっそぉ…どうするか?)


ヘルは俺の血で紅く染まった口を醜く歪ませこちらを狙っている。


見た目は少女だが、中身は獣そのものだ。


俺はレイピアを鞘に納め、再び鞭に持ち変える。


直線的な攻撃で駄目ならば不規則な攻撃でやるしかない。


上から下へ振り下ろしつつグラビディを遠慮なく発動する。


《ドウン!!》という鈍い音とともに地をへこませていく。


ヘルは鞭の不規則な動きに戸惑っていたように感じたが、俺のモーションを盗んだのが、タイミングを掴んだのか、少しずつ少しずつ、の距離を縮めてくる。


(くそっ!!くそっ!!)


異世界に来て俺は負けっぱなしだ。


今までの負けで失う物はなかったが、この戦いは絶対に負けられない。


俺が負けたら仲間は誰が回復させるのだ?


いや。


俺は負けられない。


意地でも。


俺はこの一撃に覚悟を決めた。


鞭でヘルに狙いをつけ特大のグラビディを放つ。


その攻撃すらも鮮やかに躱したヘルは俺に牙を向け飛びかかってきた。


−避けられない!!


大きく開けられたヘルの口に、俺は左手を突っ込む。


ヘルは噛みちぎろうと牙を立ててきた。


いや。既に左手はちぎれかけてているかもしれない。


既に左手は火傷しているかのように熱いのだ。


《グルゥゥ!!グゥウウ!!》


ヘルは俺の左手に噛みつきながら首を左右に振るう。


「残念だね……終わりだよ。」



《グラビディ!!》


ヘルの口内で放たれたグラビディはお構いなしでヘルを地中に沈めていく!!


《グ!!グウゥ!!…グウゥ!!》


苦しそうな呻き声をあげながら地中に沈む目はとても恨めしそうに見えた。



(…勝った…)


膝をつき深呼吸をする。


自分の左手を自己再生していく。


何度も握り返し指先の動きを確認する。


二度も腕を切られるとは…とんでもない相手だった。


(さて…ミネヴァを回復させなくちゃ)


再び立ち上がり振り向くと、俺の目の前に黒い塊が降ってきた。


その塊は地に落ち重々しい音を立てる。



「ー!!ジャスパー!!」


血塗れだ!!


観覧席に向かったらハズのジャスパーがどうして…?


負けたのか?誰に?


ワイバーンの群れに?


俺はジャスパーに駆け寄る。


「おい!!ジャスパー!!しっかりしろ!!」


「…うぅ…あいつ裏切りやがった」


「裏切り?誰が?」


俺はジャスパーが落とされたであろう観覧席を見上げる。


そこには白銀の鎧を纏った白髪の騎士が立っていた。


ご意見御感想ありましたらよろしくお願いいたします

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