契約
ブックマークありがとうございます!!
《パチッ》
《…パチパチッ》
《パチッ》
俺は手を合わせて電撃魔法を発動している。
そう…修行中です
俺、早朝から修行中です
びっくりしました。
魔法って難しいんですね。
さっきまではミントと剣を使い修行してたんです
やはりレイピアは俺に合っていたようで互角とまではいかなかったけど、前回の修行の時みたいに六回も刀を寸止めされたりするような事はなかったのです
一回だけ首筋に刃を当てられたけど
いや。あの時のミントは怖かった
ビックリさせてやろうと新特技、雷を発動させたら静電気くらいの雷しか出なくて俺が一番ビックリちゃった。
テヘペロってやったら、「…修行を舐めてるのか」って首筋に刃を当ててくるんだもん
「いや!!昨日覚えたばかりだから操作がうまくいかなくて!!」って叫んだら許してもらえたけど、首筋に当てた刃に少し力が入ってたな
いつもいきなり上位魔法ばかり覚えてた俺だけど、今回覚えたのは下位魔法みたいだ
雷って名前だから強そうなんだけどなぁ…
今回はミネヴァも修行に参加している
力のコントロールを習っているらしい。
ようは力加減だ。
確かにミネヴァの魔法は殺傷能力しかないからな
飲み水が欲しくても岩すら貫通してしまう水圧では、容れる器がない
ミネヴァに手加減の仕方を教えながらも、ジェードは本気で雷出していいんだぞと言われたのはかなり傷付いた
さすがの特殊スキル、ハートブレイカーミントである
まぁ俺が勝手に呼んでるスキルなんだけどさ
「−んな!!旦那ー!!こんなとこにいやしたか」
ロンベールだ。
最近では毎日トウモロコシの受け取りに来てくれている
人間界でオーク産のトウモロコシは好評らしくロンベールはなかなかに忙しいようだ
まぁまだオーク産と言うのは秘密だ
イズンの大地産という、国産的なノリで誤魔化している
お店を間借りさせてもらっている武器屋の主人には本当の事を伝えてあるけどね
伝えたのも口利きしてくれたのも名工ガーネットなのだが。
さすがに販売者にもオーク村産というのを秘密というわけにもいかない
「トウモロコシが大好評で毎日大忙しですよ」
そういうロンベールはホクホク顔だ。
オーク村も収入が入って豊かになるだろう
そう。
オーク村産だから、俺一人の収入にならないのが痛い
収穫は仲間に手伝ってもらってるし。
いや。みんな豊かになればいいのだが、防具が欲しい
特に首筋を守りたい
「武器屋の主人から伝言なんですが、旦那と正式に契約を結びたいらしいんでさぁ」
契約とはどういう事なのだろうか?
「売場をを間借りではなく、正式にトウモロコシやお茶を仕入れたいという話みたいですぜ」
なんと!!それはありがたい!!
バックマージンを払っているとは言え、やはり間借りは気が引ける
しかも売り上げ管理も武器屋の主人に任せていたのだ。
さすがに心苦しい
やはり商売はWin・Winの関係でいたいのだ
よし。善は急げである。
ロンベールは今から武器屋へ納品のようだし、俺はミントとミネヴァに声をかける
二人とも二つ返事で一緒に城下町へお出掛けだ。
だが、ミントの顔が少し曇った気がしたが気のせいであろうか?
俺達はトウモロコシを載せた荷車を引く牛の横をロンベールと一緒に歩いていく
城下町は初めてだ
俺は元々人間だが、人間の作る街なんて想像するだけでワクワクする
元オークのミネヴァは期待や想像で既に顔が赤い
ミントはトウモロコシをつまみ食いしている
(…いや。ミント…それ売り物だから)
「旦那!!見えてきましたぜ!!ユグドラシルだ!!」
あれが王都ユグドラシルか。
高い城壁に囲まれている街
その中央に聳え立つの白亜の建造物がユグドラシルの城である。
人間界はこの王都を中心にして衛星都市が存在する
もちろん都市だけではなく小さな村も点在してるし、名工ガーネットのような、村から少し離れた場所に居を構える者もいる
ガーネットの場合は、人嫌いというわけでなく音で迷惑かけるからという話だったが
石造りの城壁に近付くとその高さに驚きを隠せない
城壁を見上げるだけで背筋がピンッと伸びてしまう
これだけの高さがあれば、魔物も簡単には侵入できないだろう。
城門に差し掛かるとプレートメイルを装備した屈強な兵士が槍を片手に立っていた
その精悍な顔付きを見るだけでも、鍛練レベルの高さが伺える
そういえば出入りする時、身分証とか必要ないのであろうか?
ロンベールに聞こうと思った矢先に警護兵が近づいてきた。
「おはようロンベール!!今日もトウモロコシの搬入か?このトウモロコシを食べるのが最近の楽しみなんだ!!」
いきなりお客様発見!!
ありがたやありがたや。
うちのトウモロコシが評判と言うのは本当のようだ。
すると衛兵は何かに気づいたのか直立不動に固まる
視線の先にはミント
「こ!!これは勇者様!!よくぞお越し下さいました!!」
屈強な男が最敬礼である
ミントは「ああ」とだけ答えたのだが、その声はいつもの声でなく、少し煩わしく感じているような声であった。
(…あれ?機嫌悪いのかな?)
少し気になったが、声のトーンがいつもと違っただなんて言うと怒られそうなのでやめておく。
俺は空気の読める男なのである。
そして城門をくぐっていくと両脇に黒のローブを纏った者と白のローブを纏った者が座っていた。
ローブを目深に被っているのでよくわからないが老婆であろうか?
なんだろう?強烈な視線を感じる。
なんとなく声を出せる雰囲気ではなかったので、城門を通ってからロンベールに聞いてみる
「街の出入りに身分証とか必要ないのか?」
「必要ないですよ」
「もしもだが魔物が人間に化けていたらどうするんだ?」
「左右にローブ姿の人が座ってたでしょう。あの人達が、魔物が化けてないか見抜くらしいんすよ」
そうか。
確かに、身分証を一人一人チェックしていたら日が暮れてしまう
目視のチェックを衛兵が行い、魔物が化けていないかのチェックはローブの者が行う
魔力の存在する異世界ならではの二重チェックというわけだ。
大通りは石畳になっており綺麗に掃き清められている
両隣には商店が並んでおり、どこに入るか悩む程である
しかし俺達は真っ直ぐ武器屋を目指す
そう。手持ちの所持金などないのだ。
ミントやロンベールは持っているようだが、お金を借りるのはイヤだ。
まぁ間借りしている武器屋の主人に会えば、昨日の売り上げは手に入るし、その売り上げ分は好きに使って良いと長老…ミネ爺からの許可は貰ってある。
自由に使えるお金とは今から何に遣おうか楽しみだ
武器屋に着くと主人が両手を広げて歓迎してくれた
丸眼鏡をかけた白髪まじりの男である
人懐っこい笑顔は長年商売を続けていたからであろうか。
「これは勇者様。御健勝でなにより。そしてジェード様よくいらして下さいました」
俺達は店の奥に通される
武器屋らしく店内にはアックスやロングソード。モーニングスターなどが所狭しと置かれている。
手入れもきちんと行き届いており、武器も綺麗に磨き抜かれていた。
「私はこの店を経営しておりますアンバーと申します。以後お見知りおきを」
言葉軽やかに挨拶を交わす
そしていかにうちのトウモロコシが素晴らしいか熱弁を振るってくれた。
俺は当初、多少の駆け引きは必要かと思っていたが、このオッサンは信用できそうだ。
お茶を出してくれたが、そのお茶も俺が贈った物だった
「私の出せる最高級のお茶がこれなのです」
と言ったセリフが憎らしいくらい嬉しかった。
俺は気持ちよく仕入れ値等を決めて契約書にサインをする。
これからもよろしくと固い握手を交わしながらも、他にもあるオーク村産の野菜を宣伝しておく事は忘れない。
契約を終え昨日の売り上げ金を受け取り店内を見せてもらう
ガーネットのレイピアがあるので勿論、買う気はないのだが、こうやって武器が並んでいると興味は沸くのだ
説明を受けながら見ていると一枚の貼り紙に目が止まる
《ユグドラシル主催闘技大会!!出場者求む!!》
「へえー。闘技大会ねぇ。これ国民じゃなくても出れるの?」
俺は貼り紙を指差しながらアンバーに聞く
「出られますよ。年に一回のお祭りですから。今年は優勝商品も凄いですし」
優勝商品?
貼り紙をよく見ると絵師が描いたのであろうか?
リアルなローブの絵と名称が書いてあった
《優勝商品マジックローブ》
金じゃないのか…
闘技大会開催日は1週間後
しかしこれミネヴァに似合いそうだな
と思っていたらミントが口を挟む
「これミネヴァに似合いそうだな。僕が優勝してプレゼントしてやる!!」
完全に俺のセリフは奪われました
そういえばミネヴァに服をプレゼントするって前に言ってたっな
そう。ミネヴァに怪我をさせてしまったあの日である
義理堅い小さな友人の姿を見て嬉しく思うがセリフを奪われたのはツラいものだ。
「私の店も闘技大会協賛してまして、出場受付出来ますからどうぞ。どうぞ。」
そして俺とミントが受付をする
それを見ていて結局ミネヴァも参加を決めた
「皆さん受付承りました。このローブ一枚で家が立ちますからねぇ。頑張ってくださいな」
「「「え?家?」」」
驚きの声を上げた俺達をさらに驚かす言葉が聞こえた
「家?あっしも出ます!!」
「「「え!!?」」」
そこには明らかに金に目が眩んだロンベールが立っていた
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