私とコウモリ最後の邂逅
私とコウモリ最後の邂逅
副題は~となるはずだった~です。
ふう。なんとかコウモリのいる居間からは逃げ出s―――戦略的撤退をすることが出来ました。あとは父が来るまで待機していればいいだけです。そう安心したとき居間が急に騒がしくなりました。
『ジェス! このネギはいったい何なの?! どういう関係なのよっ!』
ヒステリックな女の声が聞こえます。
―――これは! 視聴予約していたゾンビ映画『ハイスクリーンオブザデット~ネギと私どっちが大切なの!~』ではないですか! 居間の扉をすこーしだけ開け、画面をみようと試みますが見えません。
くうううっ!
あれの続きがどうしても気になるのです!
しかし、居間にはコウモリ。
ぽくぽくぽく…………ちーん。
私はしばしの間考えました。勿論、答えなど始めから決まっていたのですが。あ、この台詞格好いー。今度使おう。
さっきはコウモリの素早さを過小評価していたから余計に怖く感じたのです。前もってしっかりと素早さを感じていたら所詮たかがコウモリ。それに、父にも追い出せていたんですから私にだって出来るに決まっています。
箒を手に取りいざ! 若干腰を引きつつ、居間の戸を開けます。
―――ッズビュン!
「…………」
ま、まぁ、だ、大丈夫かな!! そろりそろり、と低い姿勢で居間に入ると窓を開けます。窓を背にし、 箒を握りしめました。
「え、えいやっ!」
―――ッズビュン!
「と、とおっ」
―――ッズビュン!
「ほりゃっ!」
―――ッズビュン!
「あちょうっ!」
―――ッズビュン!
「ていっ!」
―――ッズビュン!
「せいやっ!」
―――ッズビュン!
「っどりゃぁあっ!!」
―――ッズビュン!
はぁはぁはぁ。ちょっ、これ無理じゃね?
いやいやいや。諦めたらそこで試合終了ですよとあの有名な先生も言っているではないですか。しかし、このままでは勝てません。
―――勝つ?
そのとき天啓のようにある台詞が浮かびました。
『大切なのは勝つ事ではなく、負けないことだ』
悪役の台詞だった気がします。
そして正確には『お前と違ってこっちは負けなきゃそれで勝ちなんだよ! けけけけけ』だったと思います。
それをじんわりと噛み締めます。私は何をおごっていたのでしょう。人間には知恵という武器があります。それを使えば目の前のコウモリを殺すことだって出来るでしょう。けれど、コウモリにだって早さという武器があるのです。
所詮は地を這うしかない人間と翼を広げ空を滑空するコウモリ。勝てるはずがないです。
生まれ変わったような感覚でコウモリを見つめるとコウモリが「よく分かったね」といっているような気さえしてきました。ありがとう。コウモリ。
考えましょう。
私はコウモリを殺したいのではなく迷い込んだ狭い家から空へと解き放ってあげたいだけ。そして、コウモリだって好きでここにいるわけではないのです。
「大丈夫」コウモリがそう励ましてくれます。
……今ならコウモリとも友情が築けるのではないでしょうか。私は箒を捨て、コウモリに向かって両手を広げました。よく考えればコウモリは実害はないのです。羽を散らしたこともなければフンを落とすわけでもない。私が勝手に怯えていただけなのです。
微笑みを浮かべ、私はただコウモリを待ちます。
すると、コウモリも私の意図に気が付いたのは突然方向を変え、こちらにやってきます。
どんどんどんどんコウモリが近寄ってきて―――
「あ、無理」
普通に速いです。私は頭を抱えてしゃがみました。私は悪くないんです!
これは私の胸に飛び込んできたのではなくて襲いかかってきたに決まっているんですから! 裏切り者め!
………あれ?
しばらくしゃがんでいると急にコウモリの気配が消えました。私の後ろは窓でした。
え? つまり出て行った?
「ふっ」
ふふふふはははははははははっ!
随分とあっけなかったなぁ? コウモリさんよぉ! ちっぽけなコウモリが人間様に勝てるなんて思ったのが間違いだったんだよ! この勝負私の勝ちだな! 恐れ入ったかコウモリめ!
高笑いしつつ、私はコウモリを追い払う間もばっちりとみていた映画の続きを見ます。感動の最終回に涙を流し、部屋に戻ろうとした時です。部屋に黒い物体が飛んでいるのが目に入りました。
………。
確かに、私は窓も開けていましたが、部屋に繋がる扉も閉めていませんでした。窓より扉の方が広く、出やすいのは明らかです。
つまりはそういうことで。
どうしよう。
私の部屋にコウモリが侵入しました。
駄文にお付き合い下さりありがとうございました!!
完結です!




