第8話「覚醒」
少女が、再び構えた。
「排除対象、再定義」
空気が重くなる。
レイは歯を食いしばる。
「どうすりゃいいんだよ……!」
男が言う。
「考えろ」
「ここはどこだ?」
「……自由系統だろ」
「じゃあルールは?」
「……ない」
「そうだ」
男が一歩下がる。
「なら“決めろ”」
レイの思考が止まる。
「……は?」
少女が動く。
一瞬で距離を詰めてくる。
「くそっ!」
反射的に腕を上げる。
その瞬間。
「——止まれ」
レイは、そう思った。
世界が、止まった。
「……え?」
少女が、動かない。
空間も、風も、音も。
すべてが停止している。
レイだけが動ける。
「……なんだ、これ」
男が少し驚いた顔をする。
「……やるじゃねぇか」
「今のがお前の力だ」
「力?」
「自由系統ではな」
男は指を鳴らす。
「“意思がルールになる”」
レイの背筋に電気が走る。
「……じゃあ」
少女を見る。
「消えろって思えば」
男はニヤリと笑う。
「やってみろ」
レイは拳を握る。
少女に向かって。
「消えろ」
一瞬。
何も起きない。
「……だめか」
その次の瞬間。
少女の体が歪む。
ノイズが走る。
「存在、維持不能」
「エラー……」
そして——
消えた。
完全に。
「……マジかよ」
レイは呆然と立ち尽くす。
男が言う。
「理解したか?」
「ここは“現実じゃない”」
「お前の認識が、そのまま世界になる」
レイは震える手を見る。
「……これが、自由か」
男は首を振る。
「違う」
「これはまだ“入り口”だ」
その時。
空が、再び歪む。
「……まだ来るのかよ」
今度は違う。
少女ではない。
巨大な“何か”。
空の向こうから。
ゆっくりと覗き込んでいる。
「……なんだ、あれ」
男の表情が変わる。
「……最悪だ」
「“上位管理者”だ」
レイの喉が鳴る。
「……つまり?」
男は言う。
「この世界の“運営”みたいなもんだ」
空が裂ける。
巨大な目が、開く。




