第5話「自由系統」
地下。
クロノギアのさらに下層。
レイは息を切らしていた。
「はぁ……はぁ……!」
さっきの戦闘。
正確には“逃走”。
あの少女は人間じゃない。
「なんなんだよ、あれ……」
「管理者だ」
男があっさり言う。
「この都市の“監視と修正”を担当してる」
レイは顔をしかめる。
「修正って……人間をか?」
「そうだ」
「ふざけてるだろ……」
男は壁にもたれながら言う。
「この都市はな、“ズレないように作られてる”」
「時間も、行動も、選択も」
「全部な」
レイの頭に浮かぶ。
上層区の人々。
揃いすぎた動き。
「……じゃあ俺たちは」
男は即答する。
「歯車だ」
短い沈黙。
レイは拳を握る。
「……じゃあ、あれはなんだ」
「止まってた歯車」
男の目が変わる。
「見たのか」
「……ああ」
「“自由系統”って書いてあった」
男は、はっきりとため息をつく。
「最悪だな」
「なんでだよ」
「それはな——」
男は少しだけ間を置く。
「この世界の“バグ”だからだ」
レイの理解が追いつかない。
「バグ?」
「そうだ」
「この都市は完璧に制御されてる」
「でも、完全じゃない」
「ごく一部だけ、管理から外れた領域がある」
「それが——」
「自由系統」
レイの心臓が強く鳴る。
「……じゃあそこは」
「自由に生きられる場所か?」
男は首を横に振る。
「違う」
そして、静かに言った。
「“世界を壊せる場所”だ」




