第13話「最終選択」
設計者が、ゆっくりと手を上げた。
その動きに合わせるように、空間が固定される。
まるで世界そのものが「停止」したかのように、空気の流れすら止まる。
「ここではお前は勝てない」
静かな声だった。
だが、その言葉には絶対的な確信があった。
「ここは“私の領域”だ」
レイの足元にある歯車が、低く唸るような音を立てる。
この場所は、自由系統とは違う。
すべてが設計され、支配されている。
レイは目を閉じた。
考える。
ここで無理に戦っても勝てない。
それは分かっている。
だが。
「……まだあるだろ」
小さく呟く。
設計者が、わずかに眉を動かす。
「何の話だ」
レイはゆっくりと目を開いた。
「俺の中にだよ」
胸に手を当てる。
「自由系統は、外にあるだけじゃない」
「俺が見て、理解して、選んだ時点で——」
「もう俺の中にもある」
静寂が落ちる。
設計者の目が、わずかに細められる。
「……なるほど」
「そこまで理解したか」
レイは一歩踏み出す。
「決める」
その言葉は、静かだった。
だが、揺るぎはなかった。
「この世界をどうするか」
設計者が問いかける。
「維持するか」
「それとも——壊すか」
レイの脳裏に浮かぶ。
整った街。
安全な日常。
決められた未来。
そして。
止まっていた歯車。
あの“違和感”。
あれが、すべての始まりだった。
「……あれが正しかったんだ」
レイは小さく笑う。
「ズレてる方が、人間だろ」
設計者は何も言わない。
ただ、静かにレイを見ている。
その視線を受け止めながら。
レイは答えを出す。




