第2-5話 青春、再着火!
駒場の思いもよらない逆転勝利にギャラリーは熱狂の渦と化した。
「爆弾使いを自爆させるとか、シャレが効きすぎだろ!」
天塚も信じた駒場の勝利に、飛び跳ねんばかりに喜んでいる。
「やった、やった、駒場くんが勝った!」
覇気の抜けきった表情の段田が駒場に問い掛けてくる。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
「本当はな、魔法やスキルとかどうでも良かったんだ。ただコマバトが好きな奴らに囲まれて、いつまでもコマバト勝負をやっていけたら、俺は他に何も要らねぇ…、そう思ってたんだ…」
「なのに皆は順調に大人になって、俺だけガキのまま取り残されて、勉強出来なくて周りの信用も無くなって、気がついたらこの有様だ…。」
「俺は何処で間違えちまったんだろうな…?」
段田の目からは涙が溢れている。
周りのギャラリーもこの問い掛けには思わず言い淀んでしまう。
駒場は明るい口調で返す。
「なぁーに言ってるんですか先輩、何も間違ってちゃいないですよ」
(!?)
予想外の返答に段田は駒場を見つめる。
「そんな泣きたくなるようなキツい状況でも、コマバトを愛する気持ちは捨てなかったじゃないですか!先輩のさっきのビッグナイトの処理の仕方、心の底からスゲーって思いました!今でも本当にコマバトが大好きなんですね!」
その瞬間、再び段田の脳裏に過去の記憶がフラッシュバックする。
(以下、回想)
書店で段田は本を買おうとしている。
目の前には勉強に必要な参考書、その隣には今月号のコマバト情報誌が置かれている。
勿論所持金は両方を買えるだけの金額など無い。
段田は決心する。
(ここで参考書を買わないと俺に未来は無い…)
それでも散々悩み抜いた揚げ句、震える手でコマバト情報誌を掴んでしまう。
「ゴメンよ母ちゃん!」
段田は自室でPCでコマバトの対戦動画を見ている。
画面上では圧倒的不利な状況からのスーパープレイで一気に逆転勝利を収めた様子が映し出されている。
「今のプレイはカッコよかったな〜。俺もいつかあんなプレイでギャラリーをビックリさせたいなぁ〜」
そう物思いにふけっていたとき、母親が部屋に乱入してきた。
「マイト!!またアンタは口だけで勉強もしないで!!」
母親に頭をグーで殴られて降参する段田。
「ヒィ〜、ゴメンよ母ちゃ〜ん!」
もうコマバト勝負に付き合ってくれるかつての友人は誰もいない。
それでもコマバトのことを考えずにはいられない。
人生が本当に終わってしまう前に、コマバトに関する一切合切を捨てようと何度決心したことだろうか。
それでも…。それでも…。それでも…。
段田は捨てられなかった。
コマバトと、コマバトが育んでくれた数え切れない思い出を。
(コマバトを捨てたら、もう俺は生きる意味を無くしてしまう)
そんな不確かな直感が、段田の人生を狂わせ段田自身を傷付けていた。
(回想終わり)
「ウォォォォ~ン…」
段田は号泣していた。
誰にも理解されないと思っていた。
今まで周りからは"成長性のない可哀想なヤツ"と蔑まれるばかりだった。
だが駒場は心の底に抱えた気持ちを理解し、労ってくれた。
その優しさが段田は嬉しかった。
駒場は段田に『全国コマバト選手権』開催のコピーを手渡す。
「誰からも理解されなくても自分のコマバト愛を守り通した、そんな先輩にこそ一緒に闘って欲しいんです。俺達と一緒に、辛かった人生なんて、ぶっ壊してやりましょう!」
「コマバトラーたるもの、常に逆転を信じ、決して勝負を諦めてはならない。そうですよね、先輩?」
段田は駒場の手からコピーを受けとる。
「あぁ…、一つよろしく頼むわ…。」
学年を超えた友情の芽生えに、自然とギャラリーから拍手が送られていた。
拍手をする天塚の目にも涙が浮かぶ。
「駒場くんすごいよ、今まで死にたがっていた先輩を止めるどころか仲間になってもらうなんて」
(第2-5話 終)




